【コラム】監査法人はどこにいて、何を知っていたのか-J・ワイル

会計スキャンダルに興味津々な人 なら、この1カ月余りはオリンパス問題をピークに、最高に面白い日々 だったはずだ。反対に、大手会計事務所に勤務していたなら、社会が 自分の仕事を尊重するよう主張するのはさらに難しくなったかもしれ ない。

カメラ・内視鏡メーカーのオリンパスの不正経理問題では、一部 で特殊な手口は使われていたものの、そのやり方は単純だった。同社 は損失を資産として処理することで損失隠しを行っており、1990年代 以来それを続けていたことを明らかにした。オリンパスの最高経営責 任者(CEO)だった英国人のマイケル・ウッドフォード氏が、同社 の過去の不透明な買収を取り上げた雑誌の記事を社内で問題視しなけ れば、この事件は表ざたにはなっていなかったかもしれない。オリン パスの取締役会はCEO就任から6カ月しかたっていないウッドフォ ード氏を解任した。だが、同社の財務状況に対する同氏の警告は正し かったことが判明した。

監査法人はどこにいたのか。監査法人が何を知っており、いつ知 ったのかについてはまだ完全には分かっていないが、どこが監査法人 を務めていたのかを調べてみるだけでも十分興味深い。

1990年代にオリンパスの監査法人だったのは、当時世界5大会計 事務所の一つだったアーサー・アンダーセンの日本の関連法人だった。 2002年にアンダーセンが事実上消滅すると、KPMGが同社の日本部 門を買収し、オリンパスの監査を引き継いだ。KPMGは09年までオ リンパスの監査を担当したが、オリンパスは同年、アーンスト・アン ド・ヤング(E&Y)に変更した。

こうして見ると、今でもわれわれはアンダーセンの亡霊に取りつ かれているのかもしれない。アンダーセンは02年、破綻した米エネル ギー取引会社エンロンの監査法人として不正会計に関与したとして訴 追された。アンダーセンはこれで死刑宣告を受けたようなものだった。 その後、ワールドコム、ダイナジー、クエスト、フレディマック(連 邦住宅貸付抵当公社)、レフコなど、アンダーセンの元顧客企業で次々 と巨額の不正会計が発覚した。オリンパスも今後このリストに加わる とみられる。

意見の相違

英紙フィナンシャル・タイムズは先月、KPMGがオリンパスの 会計について疑問を提示していたと報じた。英紙デーリー・テレグラ フの4日の記事によると、KPMGとオリンパスの間では意見の相違 があったことが判明しているものの、意見の相違は開示されていなか ったという。

E&Yの監査意見書で問題は何も指摘されていなかった。6月29 日に署名された監査報告書では、10年度と11年度分のみオリンパスの 財務諸表を監査したと指摘。09年度の財務諸表については「他の監査 法人」が担当し、監査報告書で「無限定適正意見」を表明したとして いた。E&YとKMPGの両方が恥をかいてしまったことになる。

MFグローバル・ホールディングスの破綻では、過去のスキャン ダルの面影が見て取れる。エンロンのスキャンダルに詳しい人なら思 い出すかもしれないが、同社がある時点でどれだけ現金を保有してい たかについて、幹部は全く把握できていなかった。

MFグローバルの監査法人プライスウォーターハウスクーパース (PwC)は5月、MFグローバルの内部管理に問題はないとしてお り、当時のCEO、ジョン・コーザイン氏も同様の見方を示していた。 それが正しかったどうかが今問題になっている。同社が破綻してから 1週間以上たった今でも、約6億ドルの顧客資金の行方が分かってい ない。

それから、先月に政府の救済を受けた仏・ベルギー系金融機関の デクシアもそうだ。同社は3月、デロイト・アンド・トウシュのベル ギー関連法人から適正との監査意見を受けていた。

ジョーク

あまりにも多数の大企業が4大会計事務所からお墨付きを得た後 に問題を起こしているため、多くの人が監査意見書はジョークだと考 えている。結局、監査法人に料金を支払っているのは顧客企業だ。監 督当局は何十年もの間、たとえ「独立」という概念が時にばからしく 思えても、監査法人が独立することを義務付けるあらゆるルールを成 立させるなどして、業界のビジネスモデルの根本的な欠陥を回避する 方法を考えようとしてきた。それでも会計スキャンダルは次々と起こ る。

われわれは、一連のスキャンダルから少なくとも娯楽的価値を見 いだすことができる。これほど多くの富と人生が犠牲になっている以 上、もちろん明るい話とは言えないが、ほとんど機能しないシステム でしばらくやり過ごすしかない、という避けられない結論から気を紛 らわせることくらいはできる。

4大会計事務所にとって最大の恐怖は、投資家が何も失うものは ないと、現状のシステムを完全に廃止するよう求めるのではないか、 ということだろう。まだそのような事態には至っていないが、時がた てば分からない。監査のプロが最も基本的な製品にもう一度価値を吹 き込む方法を見いだせなければ、ひどい解決策さえ思い切った改善策 のように見えてくるかもしれない。 (ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラム ニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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