【コラム】MFグローバルとオリンパスが示す日本への教訓:ペセック

米MFグローバル・ホールディン グスの会長兼最高経営責任者(CEO)を辞任したジョン・コーザイ ン氏と、オリンパスの会長兼社長から取締役に降格となった菊川剛氏。 二人の転落はこれ以上ないほど対照的だ。

コーザイン氏がMFグローバルを辞任した時、6億3300万ドル(約 490億円)という金額ばかりが話題になった。米当局が当初、同社の 顧客口座で不足しているとしていた金額だ。MFグローバルは破綻し、 市場に動揺をもたらした。

オリンパスの菊川前会長の場合、6億8700万ドルという似たよう な金額が浮上した。買収でアドバイザーに支払って消えたとされる謎 の金額だ。オリンパスは8日、過去の買収の関連資金を1990年代の投 資の含み損解消に充てていたことを認め、さらに大きな問題を引き起 こした。巨額不正会計で2001年に破たんした米エネルギー取引会社エ ンロンを連想する人もいるのではないだろうか。

コーザイン氏の辞任では、反省を求める数々の声が殺到した。リ ーマン・ブラザーズの破綻以来ウォール街で最大規模となる破綻はど うして起きたのか。金融機関関係者は2008年から何も教訓を得なかっ たのか。顧客の資金はどこに行ってしまったのか。監督当局は何をし ていたのか。次に破綻するのはどこなのか。

3つの兆候

これに比べると、日本での菊川氏の降格に対する反応は「まあ、仕 方ないか」というようなずっと穏やかなものだった。オリンパス問題 に対するあいまいな態度は、日本が危険な岐路に立っていることを示 す3つの兆候のうちの1つだ。あとの2つは、円高阻止に向け無駄な 努力を行っていることと、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への 参加に慎重な姿勢をみせていることだ。

日本が変革を進める大きなチャンスはめったにないので、今回の この時期は日本にとって極めて重要だ。中国の勢力が拡大し、インド の影響力は開花している。さらに韓国の競争力が向上し、インドネシ アが繁栄している時に、日本の立場は政府が自覚するよりも速いスピ ードで弱体化している。

日本の政治的停滞について考察する時、最近8カ月間の動向に注 目するケースが多い。震災後に盛り上がった景気回復や制度改革への 大きな期待は、結局実現されなかった。だが、ここで視野を広げ、日 本で20年以上も続いている低迷から得られる教訓について考えてみ よう。

エコノミストは、終わりの見えない停滞やデフレ、国際的影響力 の低下といった「日本型システム」に懸念を示している。米独仏政府 にとって、これより恐ろしいリスクはほとんどない。一方、日本が自 国の経験からどれぐらい教訓を得たのかについては、ほとんど検証さ れることはなかった。

現実逃避

オリンパス事件は、日本が何も学んでこなかったことを示してい る。「日本型システム」の問題点は、バブル時代には有効なやり方だっ たということだ。日本が輸出市場を思い通りに操り、銀行が際限なく 融資を行っていた時代。株主の権利はまだ新しい概念にとどまり、日 本がアジア市場を支配し、グローバリゼーションが理論にすぎなかっ たあの時期には、成功したやり方だった。だが、今ではそれは通用し なくなった。

菊川氏にそのことを教えてくれる人物はいなかった。オリンパス の元社長マイケル・ウッドフォード氏が何億ドルにも上る資金がどこ に支出されたのかと尋ねると、同氏は解職された。その結果、オリン パスの株価は急落し、時価総額は半減した。現実を直視しないこのよ うな動きは、日本では既に過去のものと多くの投資家は考えていた。

野田佳彦首相は、オリンパス騒動について、規律の整った市場経 済国としての日本の評価をおとしめる可能性があるとの懸念を示した。 だが、そうした意見表明は遅きに失した。本当に問わなければならな いのは以下のことだ。なぜ、遠く離れた米国で、日本の監督当局より も先に米連邦捜査局(FBI)がオリンパスの捜査に着手したと報道 されたのか。なぜ、日本の物言う株主はテレビカメラの前で変革を要 求しないのか。

円売り介入

いつか、日本でも国際市場で何が起きているかを理解する人が財 務相に就任する日が来るかもしれない。だが、単独介入を指示した安 住淳財務相は明らかにそうではない。おかしなことに、世界の為替ア ナリストは、円売り介入は欧米の協調が得られない限り効果がないこ とを誰でも知っている。安住氏がやっているのは、日本は万策が尽き たことをあらゆる人に再認識させているにすぎない。

同じようなメッセージがTPPへの抵抗にも示されている。日本 が参加するかどうかは、コメ農家をはじめとする農家の意向に左右さ れる。農家は日本の関税撤廃に断固として反対の態度を示している。

TPPへの抵抗

中国は先週、TPPに対しオープンな態度であることを示唆した。 中国が参加で日本が不参加ということになれば、ソニーやトヨタ自動 車、ファーストリテイリングなどの企業がそのつけを払うことになる。 高成長するアジアで競争力を失いつつある日本の1億2600万人の国 民も同じことだ。

日本は何年も前に問題の先送りを終わらせるべきだったが、現在 もそれは続いている。MFグローバルの破綻は米国が多くの問題を抱 えていることを示しているが、米国は問題を抱えながらも、日本の停 滞について研究し、それから学ぼうとしている。日本の当局者も是非 同じように行動してほしいものだ。 (ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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