TPP交渉参加へ大詰めの調整、根強い抵抗-野田首相、週内決断へ

環太平洋経済連携協定(TPP) 交渉への参加問題をめぐる民主党内の調整が大詰めを迎えている。野 田佳彦政権は12、13両日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首 脳会議を控えた10日ごろに政府としての対応を表明する構えだが、国 内農業などへの影響を懸念する慎重派は「時期尚早」とし、依然抵抗 は根強い。

野田首相は7日の衆院本会議で、TPP交渉参加問題について「世 界の成長エンジンであるアジア太平洋地域の成長力を取り込むという 視点や農業再生との両立を図るという課題などを踏まえて国益を最大 限追求していく」との考えを示した。その上で「広範な視点から協定 への交渉参加について引き続きしっかりと議論し、できるだけ早期に 結論を出していく」と、参加に前向きな姿勢を強調した。

藤村修官房長官は同日午前の記者会見で、民主党の経済連携プロ ジェクトチーム(PT、鉢呂吉雄座長)が9日の提言取りまとめを目 指していることを認めた上で、政府としても「しかるべき手続きを取 る」と明言した。政府方針は包括的経済連携に関する閣僚委員会の開 催後、野田首相が記者会見して発表する方向で調整しているという。

これに対し、民主党の山田正彦前農水相が会長を務める「TPP を慎重に考える会」は、TPPに参加すればコメ、小麦、砂糖など「重 要品目」について「全て関税が撤廃されてしまう」との懸念を表明。 党の経済連携PTには山田氏ら同会所属議員が連日出席し、APEC での参加表明反対の論陣を張っている。

賛否両論

早稲田大学の浦田秀次郎教授はTPP交渉について「問題は国際 的な投資等のルール作りに参加し、市場開放をして構造改革を進める のか、それとも旧態依然とした状況で変わらないでいるのかだ」と指 摘した。

TPP交渉には米国、オーストラリア、ニュージーランド、ベト ナム、チリなどを含む9カ国が参加しており、高いレベルの貿易自由 化を目指して協議を進めている。経済産業省が昨年10月に発表した試 算では、TPPに参加しなければ日本の実質国内総生産(GDP)は

1.53%、国内の雇用は81.2万人減少。一方、内閣府によると、TPP 参加によって関税が撤廃されることで日本の実質GDPは2.7兆円、

0.54%押し上げられるという。

交渉参加反対の旗振り役になっているのが農業協同組合の全国組 織である全国農業協同組合中央会(JA全中)だ。10月24日には「T PPが締結されれば、結果として、農林水産業をはじめ、関連産業を 含む地域経済、社会が崩壊することは必至」と主張する要請文を野田 首相宛てに提出した。この要請文には約1167万人が署名したという。

和郷園

こうした動きに対し、千葉県香取市に本部を置く農事組合法人「和 郷園」の木内博一代表理事(43)は、TPP交渉への参加は「もちろ んだ。入るか入らないかが議論になっているが、そういう問題ではな い」とJAなど反対・慎重派に異論を唱える。

「和郷園」は1991年に野菜の消費者への産地直送を開始。2003 年に輸出を始め、現在では年商約60億円のうち、10%を野菜などの輸 出で稼ぐまでになっている。香港、タイ、上海に現地法人を設立して 販売体制を築いている。

木内氏は「農業のグローバル化は進んでいる。この品目はなかな か競争力がかなわないが、この品目は圧倒的に海外を網羅していける というものを精査して、勝ち越しの戦略を持つべきだ」と訴える。

同氏は東京大学の伊藤元重教授らが結成した「TPP交渉への早 期参加を求める国民会議」に賛同人の1人として日本経団連の米倉弘 昌会長ら財界首脳と共に名前を連ねている。

東京大学の鈴木宣弘教授は木内氏の和郷園について、「一つの型と して大事だが、広い土地を要する米や麦の農家や酪農家がモデルとし てまねすることはできない。TPPに参加すると日本の稲作農家は壊 滅するし、医療や公共事業の入札など、地方経済にも悪影響を与える」 と例外的な存在との見方を示す。

日米FTA

民主党は09年の衆院選で党が掲げた政権公約(マニフェスト)で 「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易・投資 の自由化を進める」と明記。国内農業・農村の振興を損なうことは行 わないことなどを条件に米国との自由貿易に前向きに取り組む方針を 示していたが、最初の鳩山由紀夫元首相の下では進まなかった。

鳩山氏から政権を引き継いだ菅直人前首相は、米オバマ政権が進 めている多国間の自由貿易の枠組みであるTPP交渉への日本の参加 について検討を開始。菅前首相は1月4日の年頭会見で、6月ごろを めどに是非を判断する意向をいったん表明したが、3月11日の東日本 大震災発生を受けて政府・与党内の調整は事実上、ストップしていた。

PT

野田政権で設置された経済連携PTは、APEC前に提言をまと める方向で議論を進めている。事務局長の吉良州司衆院議員によると、 約5時間半に及んだ4日の総会では、のべ67人が発言した。

民主党の金子洋一参院議員はTPPをめぐる党内議論について 「いろいろな団体がTPPに反対という動きをしており、反対派は精 力的に署名集めをしているが、党内での広がりにはやや欠けているの ではないか。党執行部はそれを踏まえて参加の方向で集約すると思う」 と予測する。

これに対し、「慎重に考える会」の原口一博元総務相はAPECで の参加表明に200人以上の与党議員が反対しているとして、「期限を切 る意味は全くない。200人を超える与党議員がやめてくれというのを 押し切ったら、重大な結果をもたらすと思う」と指摘している。

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