日銀はリスク資産10倍増や外債購入を、円高阻止急務-中原元審議委員

中原伸之元日本銀行審議委員は、 米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)に踏み 切れば、為替市場で円高・ドル安が一段と進行すると指摘。円高によ る国内製造業の空洞化を阻止するため、日銀はリスク資産の購入を10 倍に増やし、外債も購入するなど大規模な追加緩和を行うべきだとの 考えを示した。

中原氏は「米国が量的緩和第3弾を行えば、1ドル=70円を割り 込む可能性がある。1ドル=100円ぐらいにならないと日本経済は駄 目だ」と述べた。具体的には「日銀は追加緩和を行い、マネタリーベ ースを拡大するべきだ。新たに50兆円の基金を設定して、外債を購入 するのは、優れたアイデアだと思う」と指摘。また、「ETF(指数連 動型上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)の購入も少な 過ぎる。現行の10倍ぐらい買えば効果的な政策になる。早ければ早い ほど良い」と語った。インタビューは4日に行った。

日銀は10月27日の金融政策決定会合で、資産買い入れ等基金を 50兆円から55兆円程度に増額することを決定。増額するのは長期国 債のみで、社債やコマーシャルペーパー(CP)、ETF、J-REI Tは増額せず、固定金利方式の共通担保オペは35兆円に据え置いた。 中原氏は、「この程度増額しても効果があるか分からない。日銀はバラ ンスシートを拡大して、大規模に金融資産を購入すれば効果があるだ ろう」と述べた。

量的緩和第3弾

バーナンキFRB議長は2日の連邦公開市場委員会(FOMC) 終了後の会見で、債券購入の第3弾に加え、フェデラルファンド(F F)金利の誘導目標を記録的低水準に維持する期間の延長または引き 上げが予想される時期をより明確にするなどの措置の可能性が「検討 されている」ことを明らかにした。FRBは昨年11月から今年6月に かけて、景気回復を確実にするため、6000億ドルの米国債を追加購入 する量的緩和第2弾(QE2)を実施した。

中原氏は、「FRBの金融政策は、ドル安を実現し、輸出を拡大さ せ、景気の底割れを回避するという目標を達成している。量的緩和第 3弾を実施したら効果があると思う」と分析した。

ブルームバーグ相関・加重通貨指数によると、円は過去6カ月間 に6%上昇し、主要10通貨の中で、最も上昇幅が大きかった。為替市 場で円・ドル相場は10月31日、一時1ドル=75円35銭の戦後最高 値を記録。政府・日銀は同日、昨秋以降で4度目とみられる円売り・ ドル買い介入を実施。中原氏は「過去10年間で自国通貨高になってい るのは日本だけ。すう勢的に他の国は通貨安で日本だけが円高になっ ている」と語り、円高が景気悪化要因になっているとの見方を示した。

日銀法改正で雇用を目標に

国内家電最大手パナソニックは10月31日、円高と価格低下の悪 影響を受けたテレビ事業の抜本的なリストラ断行で、今期(12年3月 期)の連結純損失は4200億円に上る過去最悪規模を計上すると発表。 ブルームバーグのアナリスト調査によると、トヨタ自動車の今期の営 業利益は前期に比べて2500億円減少する見通し。同社の豊田章男社長 は7日、自動車税制改革フォーラムの会見で、円高に関し、海外に生 産が移転すると再生は不可能とし、日本のものづくりは崩壊しかねな いと懸念を表明した。

中原氏は、「日銀法を改正して、FRBと同様に、物価の安定に加 えて、雇用の最大化を目標にすべきだ。物価目標だけでは、時代遅れ になりつつある」と説明。その上で、追加的な政策対応により、円高 を早急に是正しなければ、産業の空洞化を招き、失業率が上昇すると の見方を示した。9月の完全失業率は4.1%。

中原氏は1934年12月11日生まれ。57年東京大学経済学部卒業。 59年ハーバード大学大学院政治経済学修士。1986年に東亜燃料工業代 表取締役社長、98-2002年に速水優日銀総裁(当時)の下で審議委員 を務め、00年8月には日銀のゼロ金利政策解除に反対票を投じた。02 年に金融庁顧問に就任。現在、アメリカ研究振興会理事長を務める。

--取材協力:野沢茂樹 Editors:Hidenori Yamanaka,Joji Mochida,Masaru Aoki

Rocky Swift +81-3-3201-2078 or rswift5@bloomberg.net

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