【日本株週間展望】レンジ相場逆戻り、ギリシャ暗雲-介入効果短命

11月2週(7-11日)の日本株は、 日経平均株価が8000円台後半のレンジ相場に逆戻りし、やや弱含みの 推移となりそうだ。収束方向にあった欧州の債務・金融システム問題 は、ギリシャ政局の混迷で再び流動化。政府・日本銀行の為替介入後 も円高懸念は拭えず、国内企業業績の下振れリスクもある。

SBIアセットマネジメントの木暮康明社長は、欧州動向につい て「入ってくる情報が限定的で、政治的な駆け引きをどこまで素直に 受け取って良いか判断は難しく、評価は海外のマーケットに聞く以外 ない」と指摘。発表の続く国内企業の決算は、「もともと慎重に見てい て、市場が想定した『下期ばら色』の修正が現在起きている」と言う。

第1週の日経平均は前週末比2.8%安の8801円と反落し、8月最 終週から週間での上昇、下落を交互に繰り返す「鯨幕相場」が続いた。 10月26日から27日未明にかけての欧州連合(EU)首脳会合で、ギ リシャ債務の民間投資家の損失負担を50%とするほか、欧州金融安定 化基金(EFSF)の実質融資能力の拡充、銀行の資本増強など危機 対応の包括案で合意し、市場で好感されたが、その実効性をめぐり早々 に楽観ムードは揺らいでいる。

ギリシャのパパンドレウ内閣は2日、EUがまとめた同国救済策 の受け入れの是非を問う国民投票の実施を閣議決定。同国内では、緊 縮財政策への抗議デモが続発していた経緯から欧州首脳らはこれに反 発し、ドイツとフランスは近く実行予定だったギリシャへのつなぎ融 資80億ユーロの先送りを決め、ギリシャをけん制した。

パパンドレウ首相は3日に態度を一変、暫定政権樹立の方向で野 党に打診し、合意できた場合の国民投票の実施撤回を示唆したが、首 相辞任や総選挙実施の可能性を含めギリシャ政局は混沌(こんとん)。 市場では、無秩序なギリシャの債務不履行(デフォルト)リスクが再 度警戒され始めている。

円高足かせでパフォーマンス低調

欧州情勢の視界不良は、投資家のリスク回避姿勢を通じて為替市 場での円高圧力につながっており、日本の企業業績、株式相場に悪影 響を及ぼしている。10月の世界の主要株式市場の推移を見ると、独D AX指数が12%高、仏CAC40指数が8.8%高、米S&P500種株価 指数が11%高となり、アルゼンチンや香港、ブラジルなど新興国も上 昇率上位に並んだ。これに対し、日経平均は3.3%高にとどまった。

政府・日本銀行は10月31日、ことし3回目の円売り介入を行い、 対ドルで同日早朝に75円35銭と戦後最高値を付けた円は79円50銭 台まで急落、対ユーロでは107円付近から111円60銭台まで下げた。 SMBC日興証券が日銀の当座預金増減要因予想から試算した今回の 介入規模は7兆円台後半と、1日の介入額では過去最高だったもよう だが、ドルやユーロの戻りは鈍い。

ドイツ証券のチーフ・ストラテジスト、神山直樹氏は介入効果が 日本株市場で限られた理由について、米国が追加金融緩和に動いた場 合に円安が短期的動きになる恐れがあったほか、日銀が中途半端な緩 和策を行った翌週で、政策協調が見られない点に言及。大きくファン ダメンタルズを変える要因ではない、ともした。SBIアセットの木 暮氏も、「1ドル=75円に近づけば再度介入する可能性はあろうが、 欧州の状況を考えれば円安シナリオは現状描けない」と話している。

みずほ証券リサーチ&コンサルティングのまとめでは、10月31 日時点で東証1部企業(金融除く1178社)の24%に当たる280社が 決算を発表。2012年3月期の経常利益予想は前期比12.6%減益と、9 月末時点の予想値8.5%減益から下方修正された。木暮氏は、「タイ洪 水の問題は余計で、HDD(ハードディスク駆動装置)などは確かに 厳しい状況」と指摘。ただ、この局面で業績数字を弱めに見ておけば、 「3月の着地時には改善している可能性がある。相場に最悪期がもう 1回来れば、そこは買い場になろう」と話している。

脆弱な景況感、金融緩和期待支え

経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数を見ると、直近公 表分の8月まで5カ月連続のマイナス。特にユーロ圏のマイナスは7 カ月連続で、スペインやイタリアなど南欧の高債務国に加え、独仏も 低下し、09年9月以来の100割れとなっている。ユーロ圏の実質国内 総生産(GDP)が世界的信用不安の影響で08年から09年にかけ5 四半期連続でマイナスとなった際、ユーロ圏の先行指数は08年5月か ら景況感の分かれ目である100を下回った。欧州不安が当時以上に深 刻とすれば、欧州の景気停滞局面はなお1年以上続く可能性がある。

緊迫した情勢を映し、欧州中央銀行(ECB)は3日の金融政策 委員会で、市場関係者の予想に反し政策金利の0.25ポイント引き下げ を決定。米連邦準備制度理事会(FRB)は2日の会合で、現状政策 を据え置いたが、バーナンキ議長は住宅ローン担保証券(MBS)の 追加購入の可能性を示唆するなど、もう一段の金融緩和に含みを残し た。オーストラリア準備銀行(中央銀行)も1日、09年4月以来の利 下げに踏み切り、インフレへの警戒を抱えつつも、各国の金融政策当 局は足元の景気軟化に配慮を見せる。

11月2週は、中国で9日に10月の消費者物価(CPI)が公表 される。7月には3年ぶり高水準となる前年同月比6.5%の上昇を記 録したが、中国人民銀行の引き締め政策の効果で9月は同6.1%上昇 とやや鈍化。中信証券の諸建芳エコノミストは、CPI伸び率が年内 にも5%を下回る可能性があるとし、「成長持続に向け融資の縛りを緩 めるなど、政策緩和の余地が広がる」と見る。景気実勢が悪い中での 世界的な政策対応期待は、日本を含む株価の下支え役を果たしそうだ。

同週の日本株に影響を与えそうな材料は、国内では企業決算の発 表が続き、7日にスズキや住生活グループ、8日にブリヂストンやダ イキン工業、トヨタ自動車、9日に電通やヤマダ電機、10日に大成建 設や鹿島、日揮、11日に三越伊勢丹ホールディングスなどが公表予定。 海外では、8日にEU財務相会合、12-13日にはアジア太平洋経済協 力会議(APEC)首脳会合がある。

【市場関係者の当面の日本株見解】 ●野村証券投資情報部の品田民治課長

明確な方向感なく上下する展開がメインシナリオ。決算発表は、 製造業で4-9月の実績が悪くないのに、グローバル景気の減速や円 高などを理由に通期業績を下方修正する企業が目立つため、業績関連 の材料で相場が押し上げられる展開は見込みにくい。海外要因に目が 向くが、7日予定のユーロ圏財務相会合、8日のEU財務相会合で、 欧州債務危機克服に向けた包括戦略が具体化に向かうかどうかが注目 される。中国では、CPI上昇率の鈍化が続くなら、中国当局が景気 刺激に動くとの期待から日本でも株買いの流れに入る可能性がある。

●岡三証券投資戦略部の石黒英之日本株情報グループ長

日経平均は8650-9100円で、再度9000円台にトライする動きを 予想。ユーロ圏財務相会合など欧州でのイベントを多数控えるが、欧 州各国の足並みがそろってきており、ネガティブ材料よりポジティブ 材料が出やすい。外部環境が落ち着き、投資家はリスクを取りやすく なる。4日からは、ようやく業績相場入りしたような個別銘柄の動き を示しており、景気敏感業種の業績堅調銘柄中心に買われそうだ。

--取材協力:長谷川敏郎、河野敏 Editors:Tetsuzo Ushiroyama、Shintaro Inkyo

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