キリン:スキンカリオールを完全子会社化、1050億円で株式追加取得

キリンホールディングス(HD)は 4日、ブラジル2位のビール事業会社スキンカリオール・グループの 株式をジャダンジル社から取得し、100%子会社化すると発表した。国 内市場の縮小が懸念される中、アジア・オセアニア地域に続き、南米 に進出することで海外展開を拡大させる。

取得額は総額23億5000万レアル(約1050億円)。キリンは10月、 スキンカリオールの発行済み株式の50.45%を保有するアレアドリ社 の発行済み全株式を取得し、スキンカリオールを子会社化した。今回、 同株式を保有し、創業者一族の経営するジャダンジル社から残りの

49.54%の株式を追加取得し、完全子会社化する。同社へのガバナンス を強化し、相乗効果を高める。

同日午前に記者会見した小林弘武常務は、「アジア・オセアニアは 最重点地域、ただもうひとつの成長地域を得たかった」と述べた。ブ ラジルのビール市場は、3兆円規模で将来の成長も有望視される。最 新設備を持つスキンカリオールは、「今後キリンの成長にも寄与する」 と期待を示した。

SMBC日興証券の沖平吉康アナリストは「キリンはかつて買収 によって進出したオーストラリアでも苦戦しており、残り株が取得で きたことがポジティブかどうかは買収後の経営の結果をみないとまだ 判断できない」と述べた。

経営の自由度高める

スキンカリオールの株式は従来、創業者一族が保有していた。同 株の過半を保有するアレアドリ社の株式をキリンが取得すると発表し た際には、スキンカリオールの一部の創業者一族の株主が取得の差し 止めを求める訴訟を起こした経緯がある。

小林常務は、創業者一族は「経営から退く」とし、「100%取得に より経営の自由度が高まった」と述べた。アドリアーノ・スキンカリ オール最高経営責任者(CEO)が来年1月まで継続するものの、そ れ以後は「一切経営にタッチしない」という。

キリンHDの株価は4営業日ぶりに反発して一時、前営業日比16 円(1.7%)高の973円まで上昇した。4日の終値は同1.5%高の971 円だった。

スキンカリオールの2010年12月期の売上高は56億6500万レア ル(約2800億円)。今後、キリングループのマーケティング力などを 生かすことで年率10%成長を見込む。

キリンHDの三宅占二社長は同買収についての8月の会見で、「激 烈なグローバル競争で各社が再編を模索する中、これだけの有望案件 が出るのはまれだ」と話していた。

財務への影響

株式の追加取得のため、約1000億円のブリッジローン(つなぎ融 資)を4日までに三菱東京UFJ銀行から調達した、と小林常務が会 見で明らかにした。同社のDEレシオは12年の期末で1.10程度にな る見込みで、同常務は「資金調達力が若干落ちることは意識している が財務の流動性を失わないように今後やっていきたい」と語った。エ クイティファイナンスは実施しない、としている。

ブラジルのビール市場規模は販売量で世界3位、06年から10年に かけて売上規模は年率平均12.1%で成長を続けている。ビール・清涼 飲料市場はそれぞれ3兆円近くあり、スキンカリオールは、ビールの シェア2位、清涼飲料事業は同3位。

キリンHDは、10年7月にはシンガポールのフレイザー・アンド・ ニーブに出資、11年1月には中国の華潤創業と合弁会社設立、3月に はベトナムのインターフード買収を発表した。同社は中期計画で12年 末までに海外売上高比率を29%に高めるとしている。

同社が同日発表した11年1-9月期の連結決算によると、純利益 が前年同期比11%増の269億円となった。国内飲料が天候不順で不振 だったことから売上高は同3.3%減の1兆5492億円で減収となったが、 コストを抑えたことで営業利益は同5.5%増の1200億円と増益を確保 した。

今期の業績予想については、純利益見通しを従来予想の520億円 から270億円に下方修正した。投資有価証券評価損や固定資産減損損 失を追加計上することで特別損失が膨らむことが要因。ただ、スキン カリオール・グループの損益は来期から決算に取り込む予定で、今期 は業績予想に反映してない、としている。

取材協力:松山かの子、松田潔社、占部絵美

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