【コラム】中国がユーロ救済し、モナリザが北京に飾られる-ペセック

中国の当局者がユーロ救済の見返り として何を要求しているのか、こっそり聞いてみたいものだ。

「はい、サルコジ大統領。凱旋門とルーブル美術館を担保として いただきます。モナリザを北京に展示したら素晴らしいでしょうね。 シャンゼリゼとルイ・ヴィトンの旗艦店も中国に持ってきてくれたら、 3兆2000億ドル(約250兆円)余りの外貨準備を使って、あなた方の 債券を買うことを考えます」

「こんにちは、ベルルスコーニ首相。首相主催の乱交パーティー に招待していただくほか、ローマ広場やベネチア、わが国の成金たち がお気入りのトスカーナのぶどう畑もいただければうれしいです。ピ サの斜塔は結構です。われわれの気持ちはエッフェル塔の方に傾いて います。少なくともあれはまっすぐですから」

ギリシャのアクロポリス、アイルランドのケリー周遊路、ビルバ オなどスペインの都市、ポルトガルの城の一つや二つ、フィンランド のノキア、ドイツのメルセデスベンツなどのブランドも、中国の買い 物かごの中に入れられてしまうかもしれない。あるいは、中国政府は 欧州から即座に満足できる物を手に入れるより、真の獲物に狙いを定 めるかもしれない。それは、中国が市場経済国家として受け入れられ るということだ。本来ならば、それが実現するのはずっと先のことだ。

代償は見かけより大きい。中国はユーロ圏救済により、人民元や 貿易慣行、人権、気候変動、領土問題、知的財産権、スーダンやミャ ンマーなど問題のある政権の支援といった事柄について、一部の批判 を黙らせることができる。国際情勢の不透明さが増す中、中国は2012 年の指導部の交代に備えている。そんな時、実にうまい金の使い方を 考えたものだ。

切り札

欧州の票を買うコストは中国にとってはそれほど高くないが、世 界の金融システムの将来にとって代償はもっと高くつくかもしれない。 サルコジ大統領がこれだけ公然と中国の支援を求めていることで、野 党指導者から批判を浴びているのは不思議ではない。

中国の温家宝首相の9月の発言について考えてみよう。温首相は 「われわれは何度も救いの手を差し伸べる用意があることや、欧州で 投資を拡大する用意があると表明してきた」と語った。それと同時に、 世界貿易機関(WTO)が定めた2016年の期限の前に「中国に完全な 市場経済国としてのステータスを認めなければならない」と強調し、 「この問題で期限より数年前に誠意を示すということが、友人が友人 を扱う方法だ」と主張した。

友人という切り札を切ることで、米政府当局者の多くが認識する 以上に中国は影響力を拡大している。米国が2000年代にイラク侵攻や 同盟国との関係悪化などで忙殺された間、中国は世界の至る所で大盤 振る舞いをしていた。巧みな金銭外交だと言えよう。

南アフリカ共和国は先月、チベット仏教最高指導者のダライ・ラ マ14世がツツ元大主教の80歳の誕生日の記念式典に出席するのを阻 んだ。これは、南アフリカが資金援助をする中国政府の意志に屈した ためだとは言えないだろうか。

ロシアも

これは、世界経済が直面する増え続ける難題に比べれば、取るに 足らないように見えるかもしれない。だが、世界の3大通貨のうちの 一つが中国の恩恵を受けるのなら、中国はますます独自路線を貫くこ とが可能になる。ロシアも支援を申し出ているのを忘れてはいけない。 メドベージェフ大統領の経済顧問は、同国がユーロ支援のため「数十 億ドル」を拠出する用意があると述べた。

中国は、善良な国際社会の一市民として振る舞っているだけだと 確実に反論してくるだろう。だが、世界が必要としているのは、中国 が銀行や株主の役割ではなく、ステークホルダー(利害関係者)とし ての役割を果たすことだ。中国は世界のリーダーであり、その地位に 伴う責任を受け入れなければならない。

より有益な方法は人民元の価値を引き上げることだろう。米国に 強制されているからではない。人民元安は景気過熱リスクを増すため、 中国にとって引き上げはもちろん最善の方法だが、他のアジアの途上 国にとっても国益にかなうからだ。

中国は外国に批判されると、国内問題に干渉すべきではないとし て反射的にすべての政策を擁護する。こういった姿勢は中国のインタ ーネット検閲方針ならば問題ないかもしれない。だが、貿易や知的財 産権侵害、金融、公害、北朝鮮など、中国にとっての優先課題が国際 協調をこれまで以上に困難にしている場合には不適当だ。

長い目で見れば、欧米諸国にとって、一方だけが恩恵を得る関係 構築に余念がない中国への借りを増やすぐらいなら、モナリザを譲り 渡す方がより理にかなっている。 (ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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