過去最大の介入、「効果持続」と市場関係者-輸出企業のドル売り吸収

政府・日本銀行が先月31日に実 施した円売り・ドル買い介入は1日としては過去最大の8兆円規模と推 計されている。欧州債務問題の不透明感などを背景に、リスク回避の円 高圧力はくすぶるものの、円の戦後最高値更新を阻止できなかった過去 2回の介入に比べ、需給環境の改善などで円高抑制効果が持続すると、 外国為替市場の関係者3人はみている。

みずほコーポレート銀行国際為替部のマーケット・エコノミスト、 唐鎌大輔氏は「8兆円は規模としてかなり大きい」とし、輸出企業など の「実需のドル売りをだいぶ吸収した可能性がある」と指摘。「ドルの 上値を軽くしたということが一番の評価ポイントで、ドル・円が上がり やすい地合いを作った可能性がある」と話す。

日本銀行が2日夕方に公表した2日の当座預金増減要因と金融調節 によると、31日の為替介入の決済を含めた財政等要因は7兆6800億 円程度の資金余剰だった。東京短資による介入実施前の予想は3000億 円程度の資金不足だったため、東短リサーチの高橋雄一上席研究員は、 「8兆円程度の介入だったことが予想される」と話し、介入額は過去最 大だったと推計されている。

4日の東京外国為替市場の円相場は午前10時18分現在、1ドル =78円02銭前後と、介入から4日たっても介入以前の水準(75円60 銭程度)よりも2円以上の円安水準を維持している。8月4日の介入の 際には、効果は4日しか持続しなかった。ブルームバーグの調査(予想 中央値)によると、市場関係者は年末77円、来年3月末77円、9月 末80円と緩やかな円安・ドル高を予測している。

経常黒字額にほぼ匹敵

経常黒字国の日本では、企業が輸出で稼いだドルなど外貨代金を円 に換えるため、恒常的に大きな円買い需要があるが、今年3回の円売り 介入は、ほぼそうした需要の1年分を吸収できる規模との見方もある。

三菱東京UFJ銀行米州金融市場部マーケティンググループのマネ ジングディレクター、村尾典昭氏(ニューヨーク在勤)は、今年の円売 り介入の累計額は13兆円程度で、「政府・日銀は1年分くらいの経常 黒字を吸収するくらいの金額で介入したことになる」と指摘。「最近は 貿易収支が赤字に転じているので、一時よりは経常黒字が減ってきてい る。そう考えると需給的に相当インパクトがある」とし、「当面75円 を割れるような円高の可能性はだいぶ遠のいたと思う」と語る。

財務省が発表した8月の国際収支状況(速報)によると、海外との モノやサービスの取引状況を示す経常黒字額は前年同月比64.3%減の 4075億円。6カ月連続の縮小で、リーマン・ショック後の2009年1 月以来の低水準。昨年の年間の経常黒字は17兆1706億円だった。

政府の発表ベースでは、今回の介入は今年3回目。東日本大震災直 後の3月18日には欧米と10年ぶりの協調介入に踏み切り、6925億円 の円売りを行った。また、8月には4兆5129億円と、それまでの過去 最大規模の介入を実施。今回の推計介入額はこれをさらに大きく上回り 、3回の合計で介入規模は13兆2000億円程度に達した模様だ。

指し値介入

10月31日の日本時間未明に円が対ドルで75円35銭に急伸し、 戦後最高値を更新したのを受け、政府・日銀は同日午前10時25分か ら円売り・ドル買い介入を実施した。円は急落し、午前11時半ごろに は79円半ばまで下落。その後、午後3時近くまで79円20銭付近に張 り付いた状態が続いたが、市場関係者によると、政府・日銀は同水準に 大量のドル買い注文を置く「指し値介入」を行ったもようだ。

SMBC日興証券の野地慎シニア債券為替ストラテジストは、75 円台前半までドル安・円高が進んだ背景には、過去1カ月程度で円高の 長期化リスクが強まって、輸出企業のドル売りオーダーが切り下がって いたことが一因になっていたと説明。今回の巨額介入では、長時間に 79円20銭で推移したことで、ある程度輸出企業や個人投資家のドル 売りがこなされ、「結果的に今のドル・円の安定を生んでいる」とし、 「大成功」だったのではないかとしている。

安住淳財務相は1日午前の閣議後会見で、円相場について「今後も 注意深く市場を監視する」と述べ、今後の対応についても「適時、適切 に判断する」と市場介入も辞さない姿勢を示した。

金利差とのかい離が解消

一方、みずほコーポ銀の唐鎌氏は、日米金利差からみたドル円の推 計値とのかい離が埋められたことも今回の介入による収穫だったと指摘 する。「もちろん金利差からの推計が絶対ではないが、金利差は経済成 長率格差、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)の格差であるは ずだ」とし、「76円割れというのは日米の金利差水準から見てもなか なか説明が付きにくい部分があった」と話す。

唐鎌氏が過去1年間のドル・円相場と日米の2年債利回り格差を単 回帰分析して求めた推計値によると、現状の2年金利差を前提とした場 合、ドル・円相場の「無理のない水準」はおおむね「78円プラスマイ ナス1円程度」のイメージになるという。

日米2年債利回り差は9月に1.317ベーシスポイント(bp、1 bp=0.01ポイント)まで縮小したが、その後拡大に転じ、介入実施 前の10月下旬には一時、16.582bpまで拡大した。

もっともギリシャの国民投票問題で欧州債務危機の行方が不透明に なるなど、リスク回避の円高圧力はいつ再燃してもおかしくない。キャ ピタル・エコノミクスのチーフグローバルエコノミスト、ジュリアン・ ジェソップ氏(ロンドン在勤)は、介入規模が「流れを変えるのに十分 だった可能性は低い」と指摘。介入の継続的な効果を得るためには少な くともあと1回の円売りが必要だとし、「円高を招く根本的なファンダ メンタルズ(基礎的諸条件)は変わっていない」と話している。

--取材協力:三浦和美、大塚美佳 Editor:Masaru Aoki, Joji Mochida, Hidenori Yamanaka

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