ギリシャの国民投票はドラマチック、だが悲劇ではない-社説

演劇と民主主義を生み出した国 は、そのどちらにおいても世界を失望させない。ギリシャのパパンド レウ首相は10月31日、2つの重大な投票を行うとドラマチックに 明らかにした。

第一は週内に議会で実施する政権への信任投票だ。第二は欧州の 最新の危機対応策を受け入れるかどうかを問う国民投票で、これは年 内に行われる可能性がある。

ギリシャの動きは20カ国・地域(G20)首脳会議を目前にした 欧州首脳らの不意をついた。パパンドレウ政権の与党議員らも動揺し、 何人かは首相の退陣を求めている。翌11月1日の市場では世界的に 株価が下落、ユーロとイタリア債も売り込まれた。

パパンドレウ首相の一手が極めて危険なものであることに疑いは ない。与党は議会で半数をごくわずかに上回る議席しか持たない。国 民投票で反対多数となればギリシャはデフォルト(債務不履行)に陥 り欧州連合(EU)と通貨同盟から離脱することになるだろう。その 後には金融市場の大混乱からソブリン債利回りの急上昇、ドミノ的銀 行破綻を含む終末的シナリオが待ち受けている。欧州と米国のリセッ ション(景気後退)再来もあり得るだろう。

それでも、ギリシャの行動は正しい。ギリシャ国民は生涯におい て下さねばならない最も重大な決定の一つについて発言権を持つべき だ。さらに重要なのは恐らく、この動きによって欧州がやっと、2年 前に始まったソブリン債危機の解決に必要な覚醒に至ることだ。

不十分な救済

欧州の最新の救済案は十分というには程遠い。合意には、ギリシ ャ債を保有する民間銀行が自発的に50%の損失を受け入れること、 救済基金である欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を1兆ユー ロ(約107兆円)規模に実質拡大すること、欧州の銀行が2012年 6月までに1060億ユーロの追加資本を調達することが盛り込まれた。 ギリシャは10年に合意された1100億ユーロに加え、新たに1300 億ユーロの金融支援を得る。

しかし、ギリシャの債務減免幅はこれよりもはるかに大きい必要 がある。欧州中央銀行(ECB)が保有しているギリシャ債は減免の 対象でないため、実際の減免幅は50%に満たない。ギリシャの債務 を返済可能な水準にするには70%に近い減免が必要だろう。さらに、 欧州の銀行の資本増強とイタリアなどの財政難国の資金ニーズに対応 するには、EFSFに少なくとも3兆ユーロが必要だ。

不人気

ギリシャ国民は、この最新救済案にもさらなる財政緊縮を含む多 数の不人気な条件が付いてくることを承知している。ギリシャの週刊 紙トビマの10月27日の世論調査によれば、大半が救済合意を国民 投票にかけるべきだと考えている。救済は「マイナス」または「恐ら くマイナス」との回答は58%だった。大幅な歳出削減と年金減額、 公務員の削減は既にストとデモ、暴動をギリシャにもたらしている。

パパンドレウ首相は国民投票によって、救済条件の改善と国民の 支持取り付けの両方を狙っている。このため首相は恐らく国民投票を、 財政緊縮の継続のみについて問うのではなく、ギリシャがユーロ圏に とどまるべきかどうかを問うものにするだろう。トビマの調査では 10人中7人がユーロ圏にとどまることを望んでいた。国民投票が 「ユーロにとどまるか、欧州の孤児になってドラクマに戻るか」を問 えば、国民は十中八九ユーロを選ぶだろう。

国民投票は欧州の首脳の不興を買ったが、パパンドレウ首相にと ってはドイツを中心とした各国との交渉での立場を強くするのに役立 つ。各国がギリシャの救済条件を改善しなければ、EUの計画全体が 崩壊し、欧州経済を道連れにするからだ。ギリシャ首相は賢くも、国 民投票の日程を設定するのを避け、救済の詳細が明確になってからと 言うにとどめている。欧州に救済条件の改善を迫っているわけだ。

信任は確実か

パパンドレウ首相は先月の緊縮策の採決では苦戦したが、信任投 票は乗り切れると考えている。首相の全ギリシャ社会主義運動(PA SOK)の支持率は低下しつつある。首相に不信任を突きつければ総 選挙となり、PASOKは恐らく敗れるだろう。従って、与党議員は 議会での優位を失いたくなければ首相を支えるしかない。

国民投票で支持されれば、首相は財政緊縮を続けるために必要な 国民からの負託を得たことになり野党の攻撃もかわせる。国民の抗議 の嵐も静まりギリシャにわずかながら政治的安定ももたらすかもしれ ない。これは市場の沈静化と欧州への信頼回復に役立つだろう。

パパンドレウ首相は国民投票の計画を示した際、「民主主義は健 在だ。通常の選挙以上に国民としての義務の履行をギリシャ国民に求 める」と語った。彼らが義務を果たすことを望みたい。

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