JPモルガン・チェース銀行の 佐々木融債券為替調査部長は、日本政府が長年の円売り介入と円高で背 負った含み損は足元で40兆円近くに達すると試算した。来年9月には 1ドル=72円程度まで円高・ドル安が進むと予想。政府のバランスシ ート上の為替差損がさらに拡大する可能性があるとの見方を示した。

円売り介入は、政府が円建て債券を発行して調達した資金を使って 、外為市場でドルなど外貨に換える仕組みだ。財務省の資料によると、 外国為替資金特別会計の外貨資産(外貨準備)から円建て負債を差し引 いた評価損は07年3月末の4兆6000億円(1ドル=117円換算)か ら10年末には35兆3000億円(同82円)に拡大。今年に入り一段と 円高が進んでいることから、含み損はさらに膨らんでいるとみられる。

一方、外貨準備を利用した米国債などの運用益から調達コストを除 いた利益の積立金は一般会計への繰り入れにより、同期間に5兆円増に とどまった。この結果、積立金と評価損の差額はプラス11兆円から 14兆7000億円の負債超過に転じた。日本銀行に2003年まで在籍し、 為替介入に従事した経験を持つ佐々木氏は1日午後、都内で講演。イン フレ率が日本より高い米国では金利も日本を上回るが、「円高・ドル安 で相殺される」と強調。金利収入は為替差損に備えて積み立てるべきな のに、一般会計で「使ってしまっている」と語った。

円・ドル相場は10月31日に一時1ドル=75円35銭の戦後最高 値を記録。政府・日本銀行は同日、昨秋以降で4度目とみられる円売 り・ドル買い介入を実施した。安住淳財務相は記者会見で、国内経済の ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)を反映しない過度な円高に 対し「納得のいくまで介入する」などと発言。市場関係者は同日の介入 額が過去最大の8兆円規模に達したと推計している。

「前代未聞」のドル安環境

佐々木氏は、ドル安局面で介入しても「為替相場の流れを変えるの は難しい。いったんは抑えられても、結局は円高にならざるを得ない」 と述べた。米国は世界最大の経常赤字と対外純債務を抱えているため、 本来なら海外から資金を引き寄せるため、政策金利を高めに設定すべき なのに、実質ゼロ金利政策という「前代未聞」の状況だと指摘。投資家 のリスク回避が一服してドル安の流れに戻れば、ドルは「実効ベースで さらに10%程度下げても不思議ではない」と分析した。

今週に入り、10月初めからの米欧株高・ドル安は一服している。 米政府証券公認ディーラー22社の1つMFグローバル・ホールディン グスが破たんし、欧州債務危機の不安が再燃。イタリア、フランスの 10年物国債とドイツ債の利回り格差やギリシャ2年債利回りは1日、 過去最高に達した。インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指 数は27日の安値から約4%上昇する場面があった。

JPモルガン・チェースは円・ドル相場が年末に75円、来年3月 末に74円、9月末は72円に上昇すると予想。ブルームバーグの調査 (予想中央値)によると、市場関係者はそれぞれ77円、77円、80円 と緩やかな円安・ドル高を予測している。

佐々木氏は金融専門誌J-MONEY(旧ユーロマネー誌日本語版 )今秋号の東京外国為替市場調査で、ファンダメンタルズ分析ディーラ ー部門の首位に選ばれた。

--取材協力:上野英治郎 --Editor:Joji Mochida, Masaru Aoki

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