【クレジット市場】サムスンに劣勢のソニー、体力差映すCDS

クレジット・デフォルト・スワ ップ(CDS)市場で、アジアを代表する家電メーカーのソニーと 韓国サムスン電子の格差が広がっている。為替の円高・ウォン安を 背景にした製品競争力、成長著しいスマートフォン(多機能携帯電 話)市場への展開力などで、ソニーの劣勢が投資家に警戒されてい るためだ。

企業の信用リスクを売買するCDS市場で、ソニーのCDS保 証料率(5年物)のサムスンに対するプラス乖離(かいり)幅が1 日に25.3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と6月21日 以来、約4カ月ぶりの大きさに広がった。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の下松慈明シニア・クレ ジットアナリストは、格差拡大について「ムーディーズが先月18 日、ソニーのアウトルックを『安定的』から『ネガティブ』にした 影響が大きい」と指摘。さらに、韓国や台湾の同業他社に比べ日本 の家電業界全体の競争力が低下しているとし、ソニーもその例外で はないと言う。

米系格付け会社のムーディーズ・ジャパンは10月18日、ソニ ーの長期シニア無担保社債格付けと長期発行体格付け「A3」の格 付見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更。同28日には、格 付け「A3」を引き下げ方向で見直すと発表した。ムーディーズで は、成熟化したデジタルAV製品市場への依存度が高い収益体質、 ソニー・エリクソン株式の取得による財務負担の増加などに懸念を 示す。

株価パフォーマンスも明暗

ソニーのCDS保証料率(5年物)は10月5日に160と2009 年4月以来、およそ2年半ぶりの高水準を記録。その後欧州債務・ 金融システム不安の後退から17日には126まで下げたが、ムーディ ーズの発表を受け再び上昇し、前日時点では130。一方、サムスン のCDS (同)は9月27日に173と09年5月来の高水準となった が、 その後は低下し、前日時点で105とソニーを大きく下回る。

ブルームバーグ・データによると、ソニーの既発の社債発行本 数は11本で、社債発行残高は3975億円。

CDS市場のほか、事業・収益の将来性に対する投資家の見方 が反映される株式市場でも両社は対照的だ。年初来騰落率(現地通 貨ベース)は、10月末時点でソニー株のマイナス43%に対し、サム スン株 はプラス2%と、ソニーの劣勢が顕著となっている。

サムスンが10月28日に発表した7-9月(第3四半期)決算 は、スマートフォン販売の好調で携帯端末事業の利益と売上高は過 去最高となり、半導体と液晶パネル事業の減益を補った。携帯端末 部門の営業利益は前年同期比2.2倍の2兆5200億ウォン(約1730 億円)で、全体の6割を占める稼ぎ頭に成長している。

一方、ソニーは2日午後3時に上期決算を発表。同時に今期(12 年3月期)業績予想を下方修正し、欧米での液晶テレビなどの売り 上げ減少や円高、タイ洪水被害の影響を踏まえ、連結営業利益は従 来予想(2000億円)を9割下回る前期比90%減の200億円に見直し た。ブルームバーグがまとめたアナリスト19人の事前予想平均値 (1612億円)も大きく下回った。

円高・ウォン安一因

為替市場での円高・韓国ウォン安の動きも、ソニーとサムスン の明暗を分けている要因の1つだ。現在1ウォン=0.0698円近辺と 年初から3%余り円高方向に振れ、輸出競争力の面でサムスンを後 押しする。10月31日に政府・日本銀行による円売り介入はあった が、円は対ドルで一時75円35銭と戦後最高値を記録、対ユーロで は足元107 円台前半で推移している。ソニーはきょう発表した業績 修正に伴い、下期の前提為替レートも1ドル=75円前後(従来80 円前後)、1ユーロ=105円前後(同115円前後)に変更した。

ソニー広報部の実方恵太氏によると、海外での生産委託などを 進め、対ドルでは今期から為替感応度をゼロに抑える体制を整えた 半面、部品調達面などでユーロでの円高対応は難しく、「対ユーロで は1円の変動で連結営業利益に60億円の影響が出る」という。

ゴールドマン・サックス証券の渡辺崇アナリストは、10月17 日時点のソニーの第2四半期決算プレビューで、テレビの想定以上 の価格下落や円高・ユーロ安の影響が反映された場合、業績予想の 大幅な下方修正が発表される可能性がある、と警戒感を示していた。

タイ洪水も響く

一方、三菱Uモルガン証の下松氏は、ソニーとサムスンのCD Sスプレッド差拡大について「タイの洪水も1つの要因」と見てい る。

ソニーは10月20日、タイ洪水被害の影響で生産活動の一部が 停止しており、11月に予定していたデジタルカメラやヘッドホンの 一部の発売日を未定とする、と発表した。これに対しサムスンでは、 タイの洪水被害で世界的にパソコン向けハードディスク駆動装置 (HDD)が不足していることから、自社が手掛けるフラッシュメ モリードライブの需要増加につながる可能性に言及している。

米調査・コンサルティング会社のディスプレイサーチのまとめ によると、11年4-6月(第2四半期)の薄型テレビ市場の世界シ ェアはサムスンが22.6%でトップ。ソニーは11.7%で、韓国LG電 子に次ぐ3位となっている。一方、英調査会社のストラテジー・ア ナリティクスがまとめた同7-9月(第3四半期)のスマートフォ ン出荷台数シェアでは、サムスンが23.8%で米アップルを抜き1位 となった。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE