【コラム】ウォール街を占拠せよデモ、怒りの矛先誤る-ホイットマン

「自分でまいた種は自分で刈り取 る」。これは、広く知られている原則だ。ウォール街や全米各地の都市 の一部が占拠されているのを目にすると、この原則が忘れ去られている ように思える。

ここ3年間、われわれは、大企業は悪者で富裕層が相応の課税負担 を回避していると聞かされ続けてきた。それを先導していたのはオバマ 米大統領だったのだから、階級闘争の拡大を目の当たりにしても驚きは しない。この闘争は、大統領がたきつけたとも言えるのだから。

最初に言っておくが、私は人々が声を上げるために平和的に集まる 権利を支持している。その権利は米国を素晴らしい国にしているし、ウ ォール街の占拠が1カ月以上に及び、幅広い議論が続いている。多くの 人々が感じている不満や怒り、デモに参加する理由も理解できる。ただ 富裕層は米国の悪の元凶であるとか、ウォール街だけが金融危機を引き 起こしたという考え方は、長期的な視点から見れば、あまりにも単純で 非生産的だ。

10月初旬のもう1つの出来事は確かに皮肉だった。数百万人が米 アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズ氏の死を悼む一方で、 数千人が同氏のような富裕層に対して抗議するためにデモに繰り出し た。

米経済誌フォーブスの米国人長者番付の上位25人にざっと目を通 してみれば、デモの参加者たちが忘れてしまっていると思われる現実が 明らかになる。これら25人のうち投資家は、ウォーレン・バフェット 氏、ジョージ・ソロス氏、ジョン・ポールソン氏、カール・アイカーン 氏の4人だけだ。

ジョブズ氏を含む超富裕層の大半は、世界が渇望する製品やサービ スを生み出し、われわれは皆それを購入している。例えば、パソコン (マイクロソフトやデルが製造)、インターネット検索エンジンやソー シャルメディア、オンラインショッピング(グーグル、フェースブッ ク、アマゾンが提供)、そしてキャンディー(マーズが製造)などだ。

共有する罪

利益を保護する方法があり、それが収入の最も多い人々に利用され ているだろうか。もちろんだ。しかし、全米納税者連盟によると、米国 では最も富裕な1%の国民が依然として連邦所得税の37%を支払って いる。デモ参加者たちはその事実を認識する必要がある。

税金という形での大量の富の再分配は、人々の勤労意欲をそぐ傾向 がある。それは、われわれが達成しようとしているのとは正反対の事態 を引き起こす。自分のために資金を使うことをやめさせ、慈善活動への 意欲をかき立てたいのなら、そのような動機付けを生み出す税制構築に 向けて取り組もう。勤労に罰を科すことは答えにはならない。

金融危機において、ウォール街の金融業界が過度に資金を借り入れ それが直近のリセッション(景気後退)の大きな要因になったことは疑 いの余地がない。ただ、その前には個人や世帯が返済できないほどの 資金を借り入れ、住宅や物品を購入していた(ファニーメイやフレディ マックを通じて政府が借り入れを促した面もある)。国民の1%が過度 に借り入れを行ったというのなら、残りの99%は持ってもいない資金 を使った。経済全般を通じて、われわれは罪を共有している。

デモの参加者たちが支持する考えは単純だが、その行動は持続的な 変化を引き起こす可能性がある。これらの人々が持っている1つの手段 は、今年暴動が相次いだアラブ諸国の多くの人々は手にしていなかった ものだ。つまり投票によって自由に自分たちの代表を選出する能力だ。 ウォール街を占拠している人々の何人が前回の選挙でこの素晴らしい能 力を発揮しただろうか。

デモ参加者の怒りや恐れ、不満は理解できるが焦点がずれている。 富裕層の自宅周辺でデモ行進をする代わりに、できる限り毎回選挙に足 を運べば真の変革に影響を及ぼすことができるだろう。(クリスティ ン・ホイットマン)

(ホイットマン氏はニュージャージー州の元知事で、米環境保護局 の元長官でもあります。現在はホイットマン・ストラテジー・グループ の社長です。この記事の内容は同氏自身の見解です)

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