国内自動車:タイ洪水の終息めど立たず、長期化なら今期収益圧迫も

トヨタ自動車のタイ工場では管理 職らが浸水から工場を守ろうと土のうを2メートルの高さに積み上げ た。現地の洪水は、いまだに終息の兆しがみえない。急激な円高に見 舞われている国内自動車メーカーにとって、洪水被害が長期化すれば 今期(2012年3月期)業績予想に下押し圧力が強まる可能性がある。

タイは日系自動車会社にとって東南アジア最大の生産拠点。現地 には部品メーカーも多く、ここから日本などへ部品を供給している。 それだけに生産停止の影響は大きく、タイの四輪車工場が浸水したホ ンダは10月31日の決算発表で、合理的な算定が困難として今期業績 の従来予想を白紙撤回した。

ホンダの池史彦専務は会見で、タイ工場の浸水は水位が2メート ルほどあり、被害状況を把握できないと述べ、タイでの生産は下期も ほとんど困難な状態が続くかもしれないと語った。タイだけでなく、 日本やアジアの各地で生産の制約が及び、影響は米国にも間違いなく 出るという。

三菱自動車は10月28日、タイ洪水の影響が下期の営業利益に140 億-150億円程度との想定を明らかにした。今期予想の営業利益の約 3割に当たる。タイ工場に関しては、1カ月半程度のライン休止も視 野に入れ状況を見極めていくと発表し、その場合の生産影響は約3.5 万台になるとした。益子修社長は会見で、タイからICチップを調達 しており、日本での生産が何日か止まる可能性があると指摘した。

最悪のタイミング

「今回の洪水は最悪のタイミングで起きた」と話すのはシンガポ ールの調査会社フロスト・アンド・サリバンの自動車・輸送機器担当 ディレクターのビベク・バイディア氏。洪水は大震災や戦後最高値を 一時更新した円高などの試練を経て、下期の増産に業績回復をかける 「自動車各社の青写真もろともに押し流してしまった」とみている。

バイディア氏はトヨタについても、タイを欧州や豪州などへの輸 出の拠点とし、大きな生産能力を持つため、ホンダと同様に深刻な影 響を受けるとみている。トヨタはタイ工場に直接の被害はなかったが、 大震災と同様、一部の部品メーカーから供給が止まり、10月10日か ら11月5日までタイ生産停止を続けると発表。タイ周辺の3カ国と日 米加での生産調整も同日まで続け、今週から南アフリカ共和国でも生 産調整に入った。

クレディ・スイス証券の高橋一生、秋田昌洋、塩原邦彦の3氏は、 10月26日付のリポートで、洪水の影響範囲が発表済みのタイ、イン ドネシア、マレーシア、ベトナム、日本と仮定し、部品在庫は1カ月 分保有、代替製品の生産準備に最短で1カ月かかるなどとの前提で、 潜在的な機会損失台数は25万に達し、1台当たりの限界利益を50万 円として推定機会営業損失は会社側の営業利益予想の28%の1250億 円に上るとの予測を示した。

3月11日の大震災による今期の営業利益への影響について、トヨ タは想定より回復が早まったことなどから当初予想を下回る15万台 程度、約1600億円にとどまるとの見通しを示している。今期だけでみ れば、クレディ・スイス試算のタイ洪水の影響は震災の8割近くに達 する計算だ。トヨタの震災影響額は前期1100億円だった。

状況は依然として流動的

クレディ・スイスのリポートは、トヨタが販管費の抑制などコス ト対策で対応できる余地がある一方で、タイ洪水について「影響額は 当社想定よりも大きくなる可能性がある」とも指摘している。

JPモルガン証券の高橋耕平アナリストは、10月27日付のリポ ートでタイ洪水による被害がいまだに拡大しているとした上で、同社 の現在の予測と比べて自動車各社の損失が「大きくなる可能性が徐々 に高まっているようにみえる」と指摘している。

トヨタは8月2日、今期の純利益見通しを前期比4.5%減の3900 億円と発表。売上高は前期と横ばいの19兆円、営業利益は同3.9%減 の4500億円と発表していた。ブルームバーグ・データによる同期のア ナリスト予想平均値は、純利益4365億円、営業利益4640億円、売上 高18兆8450億円。

現地会社の移転も検討

「まだ水が引いていないので、ちょっと見通しが立てられない状 況だ」-。タイ中部の鋳物工場が浸水したトヨタ系部品メーカー、ア イシン精機の藤森文雄社長は10月28日の名古屋市内での決算会見で、 再開のめどが立っていないことを明らかにした。水位はいまだに2メ ートルぐらいあり、設備への被害状況は確認できていないという。

トヨタ紡織の豊田周平社長も同日、浸水の拡大でバンコクの現地 統括会社の移転を検討していると述べた上で、「日々状況が変わってお り、私でもわからない。ただ、刻々と悪化する方向にいっている状況 にあると思っている」と述べた。デンソーの加藤宣明社長は、今期の 業績予想の下方修正に関して「被害の規模により、その可能性はある」 と話した。

富国生命投資顧問の桜井祐記社長は、タイ洪水によりトヨタが業 績予想を下方修正する可能性を指摘した上で、問題は終息時期がいつ ごろになるかが分からないことだと述べ、「そのために被害がどれぐら いになるかが現時点ではまったく分からない」と話した。

トヨタの株価は10月26日に年初来安値の2500円を付けた。11 月1日の午前終値は前日比1.1%安の2614円。

--取材協力:萩原ゆき、Supunnabul Suwannakij Editor:Hideki Asai、 Takeshi Awaji

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