白川日銀総裁:為替相場の安定的な形成に寄与すること期待-介入

日本銀行の白川方明総裁は31日 午後、大阪市内で開かれた地元経済4団体共催の懇談会で講演し、同 日午前に行われた円売り・ドル買い介入について「こうした行動が為 替相場の安定的な形成に寄与することを強く期待している」と述べた。

総裁は「欧州ソブリン問題は当面の世界経済にとって大きな下振 れリスクとなっている」と言明。これまでのところ国内では「銀行や 企業が資金を調達する市場は米欧のような緊張には見舞われず、平静 に推移している」としながらも、「グローバル化が進んだ金融市場の相 互連関の強まりを考えると、日本の金融市場も展開いかんによっては 海外の影響から決して無縁であり続けるわけではない」と語った。

政府・日銀は同日、外国為替市場で円売り・ドル買い介入を実施 した。同日早朝の海外市場で一時75円35銭まで円高が進み、戦後最 高値を更新した。介入を受けて円は対ドルで75円50銭付近から一時 79円50銭まで4円ほど急落した。

日銀は27日の金融政策決定会合で、資産買い入れ等基金を「50 兆円」から「55兆円」に拡大することを8対1の賛成多数で決定した。 増額対象は全て長期国債。日銀の追加緩和は8月4日の会合で円売り 介入に合わせて実施して以来。反対したのは宮尾龍蔵審議委員で、同 委員は60兆円への増額を提案したが、反対多数で否決された。

短期的には空洞化が急速に進行

白川総裁は国内の空洞化について「海外市場の拡大という基本的 要因に加え、為替相場のスウィングという要因も加わって、現在は、 国内回帰から海外シフトへと、企業の戦略が再び戻りつつあるとみら れる」と説明。「従って、短期的には、海外生産シフトが過去の平均的 なペースに比べて速く進む可能性がある」と述べた。

また、「いったん移転した生産拠点の国内復帰が難しいことを考え ると、国内の中核的な企業や工場が海外シフトした場合、将来円高が 是正されたとしても、再び国内で企業集積のメリットを取り戻すこと は困難だ」と指摘。「急速な円高により、海外生産シフトのスピードが 一気に加速した場合には、国内で新たな事業や産業が育つペースが追 いつかなくなるリスクが高まる」と語った。

欧州ソブリン問題は他山の石

白川総裁は追加緩和を行った背景について「これは、物価の安定 が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要すると予想 される上、国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価見 通しがさらに下振れるリスクにも、注意が必要であるとの認識に基づ くものだ」と述べた。

白川総裁は欧州ソブリン問題について「緊張が続いており、今後 の展開には細心の注意を払っていかなければならない」と述べた。ま た、同問題には「日本が他山の石として意識すべき点が多く含まれて いる」と指摘。「国債は絶対安全という前提に立って金融取引で大きな 地位を占めているだけに、ひとたびその安全性に疑念が生じると金融 システムさらには実体経済へと影響が広く及ぶ」と述べた。

その上で「国債の問題を需給バランスだけで語るのは適当ではな い」と言明。中期的な財政健全化への取り組みを市場参加者が根拠を 持って確信しているなら問題ないが、「そうでないとすれば、欧州のよ うに何らかのきっかけで市場参加者が国債保有のリスクを意識し始め、 非連続的な金利上昇につながる可能性は否定できない」と語った。

異例の批判

白川総裁の講演に先立ち、開会のあいさつを行った関西経済同友 会の大竹伸一代表幹事は、日銀がデフレからの脱却について「やや消 極的な面がある」と異例の批判を行った。大竹氏はさらに、日銀が物 価安定を「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスで、中心は1% 程度」としていることについて、海外ではおおむね2%であり、「1% が中心というのはやや低いのではないか」と述べた。

白川総裁は講演後の質疑応答で「日本の消費者物価の推移をみる と、高度成長期の残滓(ざんし)があった1980年代ですら1%台と、 欧米と比べ1%以上低かった。バブル時でも1%ないし0%台だった。 過去30年間なかったような状態が直ちに実現すると考えるのは現実 的ではない」と指摘。「物価の安定が展望できるまで実質ゼロ金利を続 け、まずはそういう状態を実現することが大事だ」と語った。

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