タイの信頼性、「風前のともしび」-日本企業から信認得る必要

ハナ・マイクロエレクトロニクス は、記録的な洪水で工場が被害を受けた数千に上るタイ企業の1社だ。 バンコク北部から徐々に水が引いていく中、同社は再びこうした事態 に陥らないよう政府に確実な対策を求めている。

ハナのリチャード・ハン最高経営責任者(CEO)は、「タイの信 頼性は風前のともしびだ。工業地帯を守る方策を抜本的に見直すこと が必要で、政府の支援が求められる」と述べた。バンコクに本社を置 く同社は、デジタル音楽プレーヤーや携帯電話の部品を生産している。

容量いっぱいのダムから今月放出された90億立方メートル以上 の水が、米フロリダ州の面積に匹敵する河川流域に流れ出、7つの工 業団地を浸水させた。タイ初の工業団地が40年前に建設されて以降、 タイ経済は農業依存から生産ハブ(中心拠点)への転換が進んだ。

政府の発表によれば、1942年以来最悪の洪水で、1万の工場が閉 鎖を余儀なくされ、66万人の雇用がリスクにさらされている。被害額 は1400億バーツ(約3600億円)に達しているという。

工場のオーナーらは、バンコクとその近郊の道路や住宅用不動産、 産業用地の開発ペースに治水が追いつかず、こうした災害が繰り返さ れる恐れがあると懸念している。タイのインラック首相は、ホンダや キヤノンなどの進出企業に対し洪水被害を受けた平野部が信頼性の高 い生産拠点であり続けることを納得させる必要がある。

円高

タイは1971年、バンコク北部に隣接するパトゥムタニ県に最初の 工業団地を建設。90年代初めにタイ工業用地当局の理事を務めたプラ イポル・クームスプ氏によれば、物資輸送で河川や鉄道へのアクセス を考慮すれば理想的な立地に見えたという。今はタマサート大学教授 の同氏は、「洪水が大きなリスクになるようなことは当時、全く想定し なかった。準備ができていなかった」と話す。

その後20年にわたり、同県やアユタヤ県などにさらに工業団地が 建設された。アユタヤなどのバンコク近郊の県への投資を促すため、 タイは優遇税制を拡大。85年のいわゆる「プラザ合意」をきっかけに 円高が進んだことで、特にニコンやソニー、日立製作所といった日本 のメーカー各社が進出した。

タイは世界のハードディスク駆動装置(HDD)の約4分の1を 生産しているほか、日本の自動車メーカーにとって東南アジアの生産 ハブとなっている。