白川日銀総裁:8月からさらに厳しさ増してきた-欧州債務問題

日本銀行の白川方明総裁は27日 午後、定例記者会見で同日開いた金融政策決定会合で追加緩和に踏み 切ったことについて、欧州の債務問題が8月から厳しさを増してきた との見方を示した上で、「下振れリスクをより意識した方がいい」との 情勢判断が背景にあったと述べた。

円ドル相場が最高値を更新するなど円高が続いていることについ ては「現時点での円高については、企業のマインドや収益、輸出等へ のマイナスの影響が大きい」と述べた。

日銀は同日開いた金融政策決定会合で、資産買い入れ等基金を「50 兆円」から「55兆円」に拡大することを8対1の賛成多数で決定した。 5兆円の増額対象は全て長期国債を当てる。世界経済の先行き不透明 感や円高により日本経済の下振れリスクが高まっていることに対応し 金融緩和を強化した。反対したのは宮尾龍蔵審議委員で、同委員は60 兆円への増額を提案したが、反対多数で否決された。

白川総裁は追加緩和を決定した背景について「もちろん為替の円 高は経済・物価の見通しに影響を与える1つの要因だが、これだけで はない。欧州の経済情勢、ソブリン問題が日本経済に与える影響もカ ウントした」と指摘。「8月の緩和では先々のリスクを相当程度前広に 織り込んで決定したが、そうしたリスクの一部が既に顕在化してきて いるし、先々の経済を考えた場合に下振れリスクをより意識した方が いいということで今回の緩和を決定した」と述べた。

なぜ長期国債のみ5兆円増額なのか

日銀は8月4日の会合では資産買い入れ等基金を40兆円から10 兆円増額。買い入れ対象資産は長期国債のほか、コマーシャル・ペー パー(CP)や社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資 信託(J-REIT)などリスク資産も含んでいた。

今回の追加緩和で増額を長期国債のみの5兆円としたことについ て、白川総裁は「現在の金融環境を見ると、CP、社債市場は非常に 円滑に回っている。したがってリスク性の資産を強く意識して緩和を 行わなければいけないという情勢ではない。したがってリスクフリー の金利である長期国債金利に働き掛けてそれを通じてまんべんなく緩 和の効果を及ぼしていくことが適切と判断した」と述べた。

日銀は長期国債の買い入れを5兆円増額したが、買い入れ対象と なるのは残存期間1年から2年に限られている。白川総裁はその効果 について「このゾーンの長期金利をその分引き下げる、働き掛けると いう効果がある」と指摘。さらに、「そのゾーンに隣接したゾーンの金 利にも影響を与え、さらに民間企業の資金調達コストはリスクフリー 金利に信用スプレッドが加わるわけだが、そのベースとなる金利が下 がることによって企業にも影響していく」と述べた。

どれくらい影響あるか分析ない

白川総裁はまた、「もう1つ、現在のように不確実性の高い局面で 日銀が経済の下振れリスクに配慮して金融緩和策を採ったということ それ自体が安心感につながっていく」と語った。

その上で「金利の低下が実体経済にどれくらい影響を与えるかに ついては、今のところ私の知る限りしっかりとした分析がないように 思う」と指摘。「そういう意味で、私どもとしては定量的にはなかなか 示しにくいところがあるが、先ほど申し上げたルートを通じて経済を 下支えする効果はあると考えている」と述べた。

欧州連合(EU)首脳会議が債務問題に対する包括策に基本合意 したことについては「これらの一連の決定は財政、金融と実体経済の 負の相乗作用の強まり防止の上で意義が大きい」としながらも、「今回 の合意だけで欧州債務問題が解決するわけではない」と述べた。

円高を是正するためには

円高の背景については「欧州のソブリン問題を含め、世界経済全 体に対する不確実性が非常に高まっているもとで、グローバル投資家 が一段と安全志向を強めている」と指摘。「その中で相対的に安全と見 られる通貨に買いが集まりやすい状況が、特に欧州情勢が厳しさを増 してから強まっている」と述べた。

白川総裁はその上で、円高を是正するためには「欧州を中心とす る世界経済の不確実性が減っていくための取り組みが、円相場に一番 大きな影響がある」と語った。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE