欧州首脳:危機打開の包括策で合意-民間負担50%、基金最大5倍に

欧州各国は26日から開いた首脳 会議で債務危機封じ込めに向けた包括策で合意した。対策を強化する ように求める世界からの圧力に対応し、ギリシャ債務の民間投資家の 損失負担を50%とし、救済基金の実質的な融資能力を1兆ユーロ(約 106兆円)に拡充するほか、銀行の資本増強を決めた。

過去4日間で2回目となった首脳会議で欧州各国は、約10時間に わたった議論の末、細部は未定ながら、2年前から続く債務危機を収 束する道筋を示す措置を取りまとめた。銀行側との交渉は難航したが、 土壇場になって「自発的」な債務減免での合意に至った。欧州首脳は、 イタリアとフランスへの懸念がユーロ圏全体を動揺させ、世界経済に 打撃を与える事態を回避するため、ギリシャ危機の封じ込めに取り組 んだ。

ドイツのメルケル首相は27日午前4時15分からの会見で記者団 に、「世界は今回の一連の会議を注目していた。欧州諸国は今夜、正し い結論に到達したことを示した」と述べた。

合意した包括策では、国際通貨基金(IMF)の役割拡大も盛り 込まれているほか、イタリアが一段の債務削減に取り組むと公約。欧 州首脳からは、欧州中央銀行(ECB)による流通市場での国債購入 継続も示唆された。

ユーロ・株高

包括策の合意を受けて、ユーロ相場とアジア市場での株式相場は 共に上昇している。ユーロは日本時間午前11時31分現在、0.5%上昇 の1ユーロ=1.3975ドルで推移。MSCIアジア太平洋指数は1%、 S&P500種株価指数先物は1.1%のそれぞれ上昇となっている。

欧州各国は11月3、4の両日仏カンヌで開催する20カ国・地域 (G20)首脳会議までに信頼できる危機打開策を取りまとめるよう国 際的な圧力を受けていた。

このため欧州首脳らは、ギリシャ債務の削減をめぐって行き詰っ ていた事態の打開に向け、国際金融協会(IIF)のダラーラ専務理 事を首脳会議に招き入れる非常手段に訴えた。

メルケル首相とフランスのサルコジ大統領率いるグループは26 日深夜、「いかなる要素に関しても合意はない」との声明を発表したダ ラーラ専務理事と直談判に及んだ。

恫喝

サルコジ大統領によると、銀行の代表を会議に呼んだのは「交渉 するためではなく、ユーロ圏諸国17カ国による決定を伝えるためであ り、その後、銀行側が自らこの問題を検討・決定した」という。ユー ロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長(ルクセンブルク 首相兼国庫相)は、「各国の巨額の損失と銀行破たんをもたらすことに なる、ギリシャが完全な支払い不能に陥るシナリオに向かう」との脅 しに銀行側が屈して抵抗をやめ、提案を受け入れたと語った。

こうした合意に至った債券保有者の「自発的な」債務減免は、第 2次ギリシャ支援の柱。新たな支援プログラムには、7月に計画され た1090億ユーロから1300億ユーロに引き上げられた公的支援が含ま れる。

一方、IMFは第1次ギリシャ支援の次回分22億ユーロを供与す る用意があると表明した。ユーロ圏が負担する58億ユーロは先週承認 されている。

債務削減の金融システムへの影響に警鐘を鳴らしていたトリシェ ECB総裁は、減免をめぐる直談判には参加しなかった。同総裁は首 脳会議の後、指導者らの決定を称賛。この日の措置を「可能な限り迅 速かつ効率的に完全実施する必要がある」と語った。

ECB

欧州首脳らは、ユーロの信認維持の取り組みにおけるECBの役 割強化については、政治的な中立性を考慮して回避。全15ページの声 明でもECBの国債購入プログラムには言及していない。

トリシェ総裁は問題となっている国債購入について言及を控えた ものの、ドラギ次期総裁は26日ローマで、ECBは引き続き「金融市 場の機能低下を回避する決意だ」と語り、同政策の維持を示唆した。

救済基金である4400億ユーロの欧州金融安定ファシリティー(E FSF)の実質的な融資能力拡充では、2つの手法を実施することで 一致。具体的な運用方法などを今後詰めることにしているものの、E Uのファンロンパイ大統領は、レバレッジ(てこ)を効かせて基金の 規模は4-5倍となると述べた。

11月に詳細を詰めることになっている基金拡充の合意では、同基 金が債券発行の際に損失の一部を保証するほか、官民金融機関や投資 家からの外部資金を呼び込むための特別目的投資事業体(SPIV) を設立することになっている。

欧州各国は救済支援で海外からの資金呼び込みを狙っており、サ ルコジ大統領は27日に中国の胡錦濤国家主席に電話して世界最大の 外貨準備高を持つ同国の資金獲得を目指す。

IMFのラガルド専務理事は「拡充後のEFSFをどのように運 用し、当初想定した規模の支援をどのように実行するかなどの手順を さらに具体化することが重要になろう」と語った。

9%以上

欧州域内銀行の資本増強では、2012年6月30日までに銀行が、 保有するソブリン債の評価額を引き下げた後での狭義の中核的自己資 本(コアTier1)比率を9%以上とすることで合意した。EU首 脳会議の声明によると、新たな資本基準を満たさない銀行は、配当金 の支払いと賞与支給が制限される。

EUの銀行監督当局である欧州銀行監督機構(EBA)は、この 基準を満たすためには欧州の70行は向こう8カ月間で合わせて総額 1060億ユーロの資本増強が必要になると推計している。国別ではスペ インが262億ユーロ、イタリアが148億ユーロと算定した。EBAは 12月25日までに資本増強計画を各国監督当局に提示するよう銀行各 行に求めている。

市場で十分な資本を調達できなかった銀行にはまず、各国政府が 公的資金を投入、最後の貸し手としてEFSFが資金注入する段取り となっている。

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