円が75円台へ上昇、欧米不安で買い圧力―介入警戒で最高値は届かず

東京外国為替市場では円が対ド ルで1ドル=75円台へ上昇した。欧州債務問題への懸念や米国の景気 不安を背景にリスク回避に伴う円高圧力が継続。ただ、介入警戒感や日 本銀行の追加金融緩和の思惑もあり、海外時間に付けた円の戦後最高値 を試すには至らなかった。

ドル・円相場は午前10時ごろに東京市場では初めて76円を割り 込み、その後も76円ちょうど前後で推移。午後には一時75円91銭を 付けた。円は前日の海外市場で一時、75円74銭まで上昇。2営業日 ぶりに戦後最高値を更新した。

三菱東京UFJ銀行金融市場部の井野鉄兵アナリストは、ドル・円 相場について、「すきあれば」下値を試すといった感じがある一方、政 府から口先介入が相次ぐ中、「ずるっと下がる動きには、けん制を入れ てくる可能性があるとみんな考えている」と指摘。目先も「レベルとし てはあまり変わらず、下向きリスクがあるといった状態が続く」可能性 があると語った。

一方、海外時間に注目の欧州連合(EU)首脳会議を控えて、ユー ロ・ドル相場は1ユーロ=1.39ドル前半を中心に推移。ユーロ・円相 場は1ユーロ=105円後半でもみ合った。

財務相、「必要な時には断固たる措置」

安住淳財務相は26日午前、衆院財務金融委員会で、足元の円高進 行について、政府として「あらゆる措置を排除せず、必要な場合には断 固たる措置を取らせていただく」とあらためて強調。「現在の市場の状 況に鑑み、事務方には必要があれば断固たる行動ができるよう絶えず準 備を整えておくことを指示している」と語った。

また、午後の同委での答弁では、為替介入の実施について「タイミ ングについてはコメントを差し控える」と述べる一方で、「後から振り 返って最適のタイミングで実施したと評価が得られるようなタイミング が、介入については必要だ」と強調した。

外為どっとコム総合研究所の植野大作主席研究員は、日本の当局は 口先介入で市場に警戒感を与えて、円高にブレーキをかけているが、 「市場は言葉ではなく行動を待っている」と指摘。その上で、介入は 「いつあってもおかしくない。きょうの可能性もあるし、あすの日銀会 合に合わせてやってくる可能性もある。介入があれば、ドル・円は2、 3円上がるだろう」と話した。

日本経済新聞は、日銀が27日に開く金融政策決定会合で、追加的 な金融緩和策を検討すると報じた。安住財務相は、最高値更新の続く円 相場について、日本銀行と危機感を共有しているとした上で、日銀が適 時適切な対応を取ってくれると期待していると述べた。

EU首脳会議

欧州首脳らは26日の会合で救済基金の実質拡大と銀行の資本増強、 ギリシャ救済の3つについて合意を目指す。EU首脳会議は26日午後 6時(日本時間27日午前1時)、ユーロ圏首脳会議は同7時15分 (同午前2時15分)の開始が予定されている。

EU当局者によれば、包括策には救済基金である欧州金融安定ファ シリティー(EFSF)や債券保有者の損失負担などに関して、さらに 技術的作業で必要な部分が残っている。首脳会議で大筋合意した後で、 技術的詳細を財務相らが取りまとめる格好になるという。

みずほ証券の鈴木健吾FXストラテジストは、欧州首脳が一致団結 して包括措置が発表さえできれば、いったんは評価されて、欧州の材料 が一段落、米国の金融政策に市場の焦点が移行すると予想。ただ、欧州 内の意見対立が明らかとなれば、再び「欧州のリスク」に目が向く可能 性もあり、ユーロは期待先行で買い戻された分、今度は「戻ってこない 急落」もあり得ると指摘した。

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長(ルクセン ブルク首相兼国庫相)は、スイス紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥ ング(NZZ)とのインタビューで、ギリシャ国債を保有する銀行など 民間投資家は、救済策の一環として50%の損失負担を受け入れる必要 があるとの見解を示した。

一方、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、オンライン 版)によると、世界の銀行業界を代表する国際金融協会(IIF)は、 ギリシャ債の評価額の引き下げ幅拡大に反対の姿勢を表明。銀行が自己 資本拡充を求められていることについても、積極的に対応すれば信用収 縮の波が経済活動に深刻な打撃を与えると警告していると伝えた。

三菱東京UFJ銀の井野氏は、「ヘアカット(債務減免)にしろ、 全体的に決まったとなった場合でも、実行に移す段階がその後にくるわ けだし、究極的にはギリシャの更生を待たねばならないということだ」 とし、「ユーロそのものについては対ドル、対円で重いという感じが続 かざるを得ない」と語った。

米国の景気減速懸念

ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト調査によれば、 この日米国で発表される9月の新築一戸建て住宅販売は、年率換算30 万戸の見通し。6カ月ぶりの低水準となった8月の29万5000戸から は増えるものの、住宅業界が復調への足掛かりを得るのに依然として苦 戦している状況が示されると見込み。一方、9月の米耐久財受注は変動 の大きい輸送用機器を除くベースで前月比0.4%増が予想されている。

前日発表された米国の10月の消費者信頼感指数は経済がリセッシ ョン(景気後退)に陥っていた2009年3月以来の低水準に落ち込み、 8月の住宅価格指数は低下。経済指標の不振や欧州首脳会談の行方をめ ぐる不透明感を背景に前日の米株式相場は反落し、米国債相場は上昇 (利回りは低下)した。

みずほ証の鈴木氏は、欧州不安に加え、米国では経済指標の悪さと 株価の下落を背景に追加緩和の思惑が生じている状況で「ある程度の円 高圧力は仕方がない」と指摘。その上で、米欧ともに自身の問題で手い っぱいな状況の中、海外市場での円売り介入の実施は見込みにくい」と 話した。