中国の銀行不良債権懸念、高成長続く農村基盤の中国農業銀行にも影響

ケリー・ストークス氏は、生まれ 故郷のオーストラリアでテレビ局を経営したりダンプカーを販売した りして富を築いた。同氏が現在、その富のかなりの部分の投資先は、 中国の農村部を営業基盤とする中国農業銀行だ。

ストークス氏は中国農業銀行の主要株主の一人になった。同行は 2010年7月の新規株式公開(IPO)で世界最大規模の220億ドル(約 1兆6800億円)を調達。ストークス氏(70)のほか、香港の資産家の 李嘉誠氏、クウェートやカタール、シンガポールの政府系ファンド(S WF)も、中国農業銀行が農村部の急発展の恩恵を受けることに賭け て同行に投資した。農村部の成長率はすでに裕福な沿岸部の都市を上 回る。ブルームバーグ・マーケッツ誌12月号が報じた。投資家は最低 1年間出資を維持することを約束した。

だが、その見返りは全く保証されていない。世界の投資家は中国 の銀行の先行きに疑念を抱いている。中国人民銀行のデータによると、 中国の銀行貸し出しは09年と10年に17兆6000億元(約210兆4000 億円)にも及んだ。フィッチ・レーティングスは4月のリポートで、 貸し出しの30%に当たる2兆4600億ドルが、不良債権化する恐れが あるとの試算を示した。

空売り

米ヘッジファンド会社キニコス・アソシエーツの創業者、ジム・ チャノス氏は9月、ブルームバーグ・ニュースに対し、中国農業銀行 を含め中国の銀行株を空売りしていることを明らかにした。MSCI 中国金融株指数は、投資家の不良債権懸念で、昨年7月1日から今年 の10月24日までに28%下落した。

中国農業銀行は国内西部および中部での投資拡大で恩恵を受けて いるものの、不良債権懸念は同行にも影響を及ぼしている。同行の株 価は10日時点でIPO価格から17%安に下落。中国のSWC、中国 投資(CIC)傘下の中央匯金投資が買いを入れたことで24日の株価 は持ち直したものの、依然IPO価格を4%下回っている。

資産運用会社テンプルトン・アセット・マネジメントのエマージ ング・マーケッツ・グループの執行会長を務めるマーク・モビアス氏 は、「産業は西に移動しており、カネもそれらの地方に移動しているこ とは間違いない」と指摘した上で、「それでも、不良債権で利益が一挙 に吹き飛ぶ可能性がある」と語った。ブルームバーグのデータによる と、モビウス氏は運用資産500億ドルのうち、中国農業銀行株を960 万ドル相当しか保有していない。

中国4大銀行

世界経済が再び金融危機に瀕していることから、中国経済および 同国銀行の健全性は重要さを増している。ブルームバーグのデータに よると、中国は08年以来、世界の成長の4割以上を占め、世界の外貨 準備を31%保有しているからだ。

また、世界の7大銀行(時価総額ベース)のうち、4行が中国の 銀行だ。中国農業銀行(時価総額1230億ドル)は、中国では中国工商 銀行、中国建設銀行に次いで3位、世界ではウェルズ・ファーゴやJ Pモルガン・チェースと4位を争っている。

HSBCのエコノミスト、屈宏斌氏(香港在勤)によると、中国 では平均で年率10%の高い成長が過去30年間続いていたが、今年後 半と2012年は8-9%となる見通しだ。

中国の7-9月期(第3四半期)の国内総生産(GDP)は、前年 同期比9.1%増になったと中国国家統計局が18日発表した。ブルーム バーグが9月に実施した調査では、投資家は中国の成長率が16年まで に現在の半分程度である年率約5%になるとみていた。

農村部の代理人

だが、屈氏は、成長率が10%を超える内陸部は例外だとの見方を 示した。中国農業銀行は内陸部で最大手の銀行だ。ニューヨークの投 資銀行KBWの銀行アナリスト、ウォーレン・ブライト氏によると、 同行は国内3000の県での預金総額の22%、融資総額の14%を握って いる。それでも農業銀の融資額は預金額の55.5%に過ぎないため、十 分な融資力を保持しているとブライト氏は指摘する。

プライド・インベストメンツ・グループ(香港)のルイス・ワン 最高投資責任者(CIO)は、「中国農業銀行は、中国の新しい成長の 原動力である中国農村部の代理人のようなものだ」との見方を示した。

HSBCの屈氏によると、温家宝政権が中国の人口13億人のうち 最も貧しい7億人が住む中部・西部地域への投資を続けているため、 このトレンドは続く見通しだ。