日銀は円高など市場混乱なら追加緩和も-展望リポートは実質下方修正

日本銀行が27日開く金融政策決 定会合は、現状維持との見方が大勢だ。もっとも、日銀の景気見通し は実質的に下方修正されるとみられており、急速な円高など市場で大 きな混乱が起こった場合は、追加緩和が行われるとの見方が根強い。

ブルームバーグが有力日銀ウオッチャー13人を対象にした調査 では、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストが「追加 緩和か」と回答。モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チー フエコノミストが追加緩和のタイミングは「最速で」今回会合、可能 性は「50%以下」としたほかは、現状維持を予想した。欧州危機が深 刻化すれば、日銀は追加緩和をためらわないとみられている。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「日銀は欧州ソブリ ン問題が金融市場での連鎖的な危機に波及することを強く警戒してい る。当面は26日の欧州連合(EU)会議までに欧州の当局者が対策を 打ち出せるかが焦点だ」と指摘。「ひとたび問題が深刻化したら、ショ ックを和らげるために日銀は流動性供給や資産買い入れ等基金の拡大 を決定しよう。タイミングによっては緊急会合もあり得る」という。

日銀は今回会合で半年に一度の経済・物価情勢の展望(展望リポ ート)を公表し、2013年度までの見通しを示す。シティグループ証券 の村嶋帰一チーフエコノミストは「日銀は前回会合で景気見通しの下 方修正に向けた地ならしを行った。海外景気の見通しが『当面減速す る』に下方修正されたほか、従来は『11年度後半以降』としていた景 気回復のタイミングを特定する表現も取り除かれた」と指摘する。

実質的な下方修正

SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは 「日銀は緩やかな回復経路に復するとの大枠の見方を維持しつつも、 その時期の後ずれを認めることになるだろう。先行きの下振れリスク への警戒を示し、実質的な景気見通しの下方修正となる」という。

岩下氏は日銀の実質国内総生産(GDP)成長率見通しについて 「11年度を7月時のプラス0.4%からプラス0.2%程度に若干の下方 修正、12年度はプラス2.9%からプラス2.4%程度へ大幅な下方修正」 を予想。13年度については「下振れリスクがある状況下、復興増税が 実施予定であり、12年度よりも成長率は低下させよう。プラス1%台 後半がイメージされる」という。

消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通しに ついては、8月に行われた5年に一度の基準年改定で11年上期の上昇 率が平均0.6ポイント下方修正されたため、大幅に下方修正されると みられている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ 債券ストラテジストは「11年度、12年度とも7月時点のプラス0.7% から0%程度に下方修正。13年度は0%台半ばか」と予想する。

追加緩和の大義名分は整った

上野氏は「8月会合で基金を10兆円というまとまった規模で増額 したこともあり、市場が十分安定していれば今回も見送られる可能性 は少なからずある」ものの、「中心的な見通しを事実上下方修正するこ とと整合させるならば、追加緩和が行われやすい」という。

モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミス トは「経済・物価見通しの下方修正により追加緩和の大義名分が整う であろう。海外経済の先行き不確実性が高まり、11月1、2日の米連 邦公開市場委員会(FOMC)で追加緩和発動の可能性もくすぶるこ とから、日銀も対抗上、早期緩和を模索するだろう」と指摘。年内に 追加緩和が行われる可能性は「70-80%」とみる。

円ドル相場は前週末、1ドル=75円82銭まで急伸し、8月19日 に付けた戦後最高値(75円95銭)を更新した。BNPパリバ証券の 河野龍太郎チーフエコノミストは欧州ソブリン問題について「EU首 脳会議の結果、およびそれに対する市場の反応を見極めた上での評価 となるが、短期的に全ての懸念が払しょくされる望みは薄く、今後も 断続的に市場の緊張が高まる局面が生じる」とみる。

介入と再び歩調合わせて追加緩和も

日銀は8月4日、財務省がドル買い円売り介入に踏み切ったこと を受けて、2日間の予定だった決定会合を1日に短縮し、資産買い入 れ等基金を10兆円増額し、計50兆円とする追加緩和に踏み切った。 第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「仮に追加緩和が 行われるとすれば、円高が急進したとき。政府の介入と歩調を合わせ て資産買い入れ等基金を増額する」と予想する。

野村証券の松沢中チーフストラテジストは「市場のリスク回避が 弱まり、ひいては日銀緩和に打ち止め感が出てくるには、欧州銀行の 迅速かつ十分な資本増強か、循環的にグローバル景気がかなり強くな るかが必要と思われるが、年度末ごろまではこの条件が満たされる可 能性は低いだろう」とみている。

============================================================= ◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2013年7-9月】信州大学真壁昭夫教授

【2013年10-12月】モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕 チーフエコノミスト、東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト、 野村証券松沢中チーフストラテジスト(0.0-0.1%から0.1%へ)

【2014年1-3月以降】みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコ ノミスト、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト、クレ ディスイス証券の白川浩道チーフエコノミスト、バークレイズ・キャ ピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト

【2014年度以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チー フ債券ストラテジスト、SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケッ トエコノミスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト、第一生 命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト、シティグループ証券の村 嶋帰一チーフエコノミスト ============================================================= 無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                       11   12   12   12   12   13   13   13
                      12末 3末 6末 9末 12末 3末 6末 9末
-------------------------------------------------------------
調査機関                13   13   13   13   13   13   13   13
 中央値                0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
 最高                  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
 最低                  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
-------------------------------------------------------------
三菱UFJ・MS 石井      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
SMBC日興証 岩下       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
みずほ証 上野          0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東短リサーチ 加藤      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
第一生命経研 熊野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
BNPパリバ証 河野     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
モルガン・スタンレーMUFG 佐藤  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東海東京証券 佐野   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
クレディS証 白川      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
信州大 真壁            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
野村証 松沢            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
シティG証 村嶋        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズC証 森田      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

(注)無担保コール翌日物金利の予想の0.10%は政策金利「0.0 -0.1%」の現状維持を意味します。アンケート回答期限は21日午後 零時。「日銀サーベイ:金利予想、経済・物価情勢、金融政策の展望コ メント」を25日朝に送信しました。