三菱重:交通・鉄道事業分野で積極的なM&A検討へ-円高が追い風

交通システム事業で世界展開を 進める三菱重工業は、歴史的な円高水準を追い風にして、一段の技術 力確保と競争力強化のためM&A(企業の合併・買収)や提携なども 有力な選択肢として積極的に検討する方針だ。

三菱重工の機械・鉄構事業本部長の鯨井洋一取締役は、ブルーム バーグ・ニュースとのインタビューで、「例えば欧州の鉄道規格に対 応するためには、自前で行うよりは海外メーカーと組む可能性がある」 とし、さらに、「アジアや中東の案件などでも最適なポジショニング ができれば、M&Aを行う可能性がある」と述べた。

同社はこれまで、自社内で必要な技術や製品を開発、調達し、ノ ウハウを習得する傾向が強かった。しかし、今年は2010年度の売上 計上平均レート比で10円強の円高となる1ドル=70円台半ばの水準 が続いている。厳しい環境から、鯨井取締役は「これだけの円高の時 代、海外で金を使い、M&Aやアライアンスを組むとかジョイントベ ンチャーなどは積極的にやっていきたい」と海外の事業展開に力を入 れている。

また、M&Aなどへの取り組みは交通・鉄道関連事業にとどまら ず、「機械・鉄構事業全体でも同様」の方針。ただ現在、具体的に決 まっているものはないという。

差別化

JPモルガン証券の速水雅史アナリストは、「三菱重工だけの力 で海外の鉄道・交通システム分野でやっていくことは難しい面もある。 その意味で従来の自前主義から脱却し、M&Aや提携を模索する方向 性は評価できる」と語った。そのうえで「海外での運行オペレーショ ンやメンテナンスなど各国のローカルな企業と組むことは事業面で 有利となるだろう」との見方を示した。

鯨井取締役は、三菱重工の鉄道、交通システム分野の技術水準に ついて、「世界のトップクラスにいる」としながらも、独シーメーン ス、仏アルストーム、カナダのボンバルディアの「鉄道の世界ビッグ 3との比較でナンバー・ワンとまでは言えない」という。

今後の課題は、鉄道エンジニアリングで「コア技術の範囲を広げ ることだ」と述べた。それは鉄道システム全般に加え、車両や信号、 通信などの総合的なシステムの「制御能力の強化」だとして、ここを 「いかに差別化するかが勝負となる」と強調した。

日立との協業も応札へ

鯨井取締役は、日立製作所と共同で取り組んでいる都市交通の協 業案件について、入札の具体的な国名やプロジェクトの言及は避けた ものの、東南アジアで応札する状況だとし、「落札できれば協業の第 1号案件となる」と述べた。事業規模は数百億円を見込むとしている。

三菱重工と日立は10年6月に、海外向けの都市内鉄道システム 事業分野での協業で基本合意したと発表。両社は同分野で、マーケテ ィングから建設・工事、メンテナンスまでの取り組みを共同推進する 方針だ。両社の合併がことし一部で報じられ、両社が否定したことに ついて鯨井取締役は、「両社の鉄道分野では全く影響を受けていない」 と強調した。

日本政府は、成長戦略として鉄道システムの輸出を掲げており、 官民一体で拡大が見込める新興国市場への売り込みに取り組んでい る。同社としても、高い技術力や実績を背景に受注を目指す方針で、 鯨井取締役は今後、「ベトナム、タイ、インドネシア、それに中東地 域」が有力市場だが、「インドも大きな可能性を秘めている」と語っ た。