それでも中国に賭ける-急成長の豪資源会社、次の奇跡信じ強気の攻め

ネビル・パワー氏はチャーター機 の窓から、オーストラリア内陸部アウトバックの赤茶けた地面を眺め る。この大地の下には豊富な鉱物資源が横たわっている。

パワー氏(53)こそ、豪鉱山会社フォーテスキュー・メタルズ・ グループの新しい最高経営責任者(CEO)だ。同社の株式は一時低 位株とみなされていたが、豪州の鉄鉱石に対する中国のとどまるとこ ろを知らない需要が追い風となり、株価はこの9年間でおよそ1200 倍に値上がりした。世界が深刻な金融危機の瀬戸際にある中で、パワ ー氏はフォーテスキューの次の奇跡について話している。ブルームバ ーグ・マーケッツ誌11月号が報じた。

ブルームバーグのデータによれば、株価の大幅上昇に伴い、フォ ーテスキューはこれまで何度も世界の上位500社にランクインしてお り、今世紀最も急成長している企業の一つだ。

株価は今年に入って約30%下落したが、2002年11月の最安値で フォーテスキュー株に1万豪ドル(約79万円)投資していれば、今や その価値は約1200万豪ドルに達する。

パワー氏は、過去の成功体験に安住してはいない。84億米ドル (約6450億円)を投じて、13年までに生産量を現在の3倍の1億5500 万トンに引き上げる計画だ。同氏は世界最大の鉱山会社BHPビリト ンに言及し、「BHPの現在の生産規模と肩を並べることになる」と話 す。

もろ刃の剣

しかし、このような大きな野心は、豪州にとってもろ刃の剣とな りつつある。豪州の資源への需要急増によって、鉱山会社は過去最高 益を記録したが、豪ドル相場も30年ぶりの高値に達した。オーストラ リア準備銀行(中央銀行)は政策金利を先進国で最も高い4.75%に据 え置くことを余儀なくされている。通貨高と高金利が重なり、メーカ ーや小売業者など鉱業以外の業界に打撃を与えている。

鉱山会社にとっても現在のブームはリスクを伴う。たった一つの 消費国、中国だけに過度に依存する危険があるためだ。

政府の推計によると、BHPやリオ・ティント、フォーテスキュ ーなどは合計で1740億米ドルもの資金を新規プロジェクトに投じて いる。そのような鉱物資源の約40%は中国に輸出されており、フォー テスキューが生産する鉄鉱石の95%余りを中国の鉄鋼メーカーが購 入している。

ドイツ銀行は、欧米諸国のリセッション(景気後退)入りで中国 の成長率が来年1-3月(第1四半期)に7.3%に低下する可能性が あると指摘する。10年は10.4%だった。米ルービニ・グローバル・エ コノミクスのヌリエル・ルービニ会長は7月の上海での会議で、2013 年の後には5%に落ち込む可能性さえあると警告した。

北京大学のマイケル・ペティス教授(金融学)は「中国の成長率 が半分に低下したら、食糧以外の商品相場に深刻な影響が出るだろう」 との見方を示す。

一国に依存する危険

ギラード豪首相はそのような見通しの受け入れを拒んでいる。首 相は9月15日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「わ が国の資源業界の伸びの加速はアジア太平洋地域の成長が原動力とな っている。中国の需要が急激に落ち込むことを懸念させるような助言 は、私の元に届いていない」と語った。

中国経済はここにきて減速しつつある。その影響もあって、商品 24銘柄で構成するS&PのGSCI指数は4月8日から10月11日ま での間に18%下落した。同指数はそれ以前の2年間で倍以上に上昇し ていた。

豪失業率はなお5.2%にとどまっているが、熟練労働者が不足し ているため、鉱山業界の平均賃金は過去5年間で33%上昇した。政府 統計によると、豪鉱山労働者の賃金は米国のほぼ倍の水準だ。

割高なコスト

他のコストも急激に上昇している。BHPなどの鉱山会社の請負 業者である豪レイトン・ホールディングスによると、鉄鉱石や石炭を 運搬する大型トラックに使われる直径3.5メートルの巨大タイヤのス ポット価格は、1個当たり10万ドルと3倍に値上がりした。これは、 ポルシェの「911カレラS」並みの値段だ。

鉱山業界には増税も待ち受けている。豪州経済の他の部門が勢い を失っているため、ギラード首相は来年、鉄鉱石・石炭採掘業者の利 益に30%の資源税を導入する計画。温室効果ガスの排出を減らすため、 排出量1トン当たり23豪ドルを課すことも検討している。

豪株価指数のASX200指数の年初から今月12日までの下落率 11%に対して、フォーテスキューは28%下げている。パワー氏はそれ でも、同社の先行きに対する自信は衰えていないと強気だ。

不安と自信

「不安を和らげるには中国を再度訪れればよい」とパワー氏。「中 国は成長・発展の素晴らしい実績を持つ巨大な国だ」と信じている。

中国政府が主要な製鉄所を内陸部から沿岸部に移すと決めたこと もパワー氏に強い印象を与えた。北京を拠点とする首鋼集団が事業を 既に移転させ、宝鋼集団や武漢鋼鉄もこれに続く予定。「自前の鉱山よ りも輸入鉄鉱石への依存を強める中国当局の意向を示唆するものだ」 と同氏は歓迎する。

豪州の資金運用会社で最大手、コロニアル・ファースト・ステー ト・グローバル・アセット・マネジメントも、中国について楽観的だ。 同社で1500億豪ドルの運用に携わるスティーブン・ハルマリック氏は 「全ての卵を中国という籠に入れるのは、リスクがやや高いと人々は 口にする」としながらも、それでも「中国の成長は続くだろう」と予 測。「われわれが中国に物を売らなければ、ほかの誰かが売るだけだ」 と話している。

-- With assistance from Elisabeth Behrmann and Angus Whitley in Sydney, Jason Scott in Perth, Matthew Winkler in Canberra and Helen Yuan in Shanghai. Editors: Stryker McGuire , Michael Serrill

参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 松井 玲 Akira Matsui +81-3-3201-7540 Akmatsui@bloomberg.net  Editor: Ryoji Uchida,Masami Kakuta 記事に関する記者への問い合わせ先: William Mellor in Sydney at +612-9777-8692 or wmellor@bloomberg.net. 記事に関するエディターへの問い合わせ先: Laura Colby at +1-212-617-1167 or lcolby@bloomberg.net

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