「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

10月25日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは27日 の日本銀行の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」13 人に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アンケート回 答期限は21日午後零時。エコノミスト予想のまとめ記事として「日銀 は円高など市場混乱なら追加緩和も-展望リポートは実質下方修正」 を同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、カッコは前回回答)、12)経済・ 物価の見通し、経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通し、13) 金融政策運営の見通し。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)当方の内外経済・物価見通しは前回回答から基本不変。ただし米景 気の後退局面入りの可能性はやや低下。製造業と雇用が底堅さを維持 しているため。日銀は展望リポートで来年にかけて第3次補正予算に 伴う復興需要を主な理由として『緩やかな回復経路に復していく』と の景気シナリオを維持。ただし、海外要因を中心に下振れリスクが高 まっているとの警戒感も示す。

審議委員による実質国内総生産(GDP)の予想は、2011 年度が+0.4%から+0.2%程度に、12年度は+2.9%から2%台半ばにそ れぞれ小幅下方修正される。初めて示す13年度は1%台後半か。物価 見通しは『景気回復に伴って経済の需給ギャップは徐々に改善してい く』を維持。審議委員の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI) 前年比の見通しは、指数の基準改定の影響を主因に11年度、12年度 とも+0.7%からゼロ%程度に下方修正。13年度はゼロ%台半ばか。

13)今会合は現状維持を予想。円高/株安が一服していること、景気の 緩やかな回復基調が維持されているため。もし大幅な円高(過去最高 値更新)、株安(ザラバの年初来安値更新)が進行した場合は追加緩和 を検討へ。手段は包括緩和の強化。資産買い入れ等基金の増額が基本 線。コアCPI見通しがゼロ%程度まで下方修正されると、実質ゼロ 金利政策の時間軸は自動的に延伸する。少なくとも市場はそう考える。 ゼロ金利解除の必要条件が“物価の安定≒CPIの1%展望”だから。

●SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)日本経済は震災後の供給制約が解消し、6月には生産がほぼ震災 前水準まで持ち直したが、7月以降はそのペースが鈍化した。また当 初想定よりも復興予算の審議は遅れている。年度下期は世界経済の減 速と円高定着を背景に国内景気は減速が見込まれる。

直近発表の指標ではOECD8月の景気先行指数の下落、中国9 月の輸出の前年比+17.1%(8月同+24.5%)と中国7‐9月期GDPの 前年同期比+9.1%(4‐6月期同+9.5%)の伸び率鈍化など、欧州不安 の悪影響が新興国経済に出始めている。欧米経済の弱さは想定しつつ も、新興国頼みの日銀シナリオにとっては、下振れを強く意識せざる を得ないだろう。

日銀は緩やかな回復経路に復するとの大枠の見方を維持しつつも、 その時期の後ずれを認めることになろう。先行きの下振れリスクへの 警戒を示し、実質的な景気見通しの下方修正となる。今回の展望リポ ートの重要な意義は、実質的な景気見通しを下方修正し、何かあった 場合に適切に対応できる条件を整えること、追加緩和するための地な らしの始まりだと筆者はみている。

展望リポートの見通し数字では、11年度の成長率を7月時の +0.4%から+0.2%程度に若干の下方修正、12年度は+2.9%から+2.4% 程度へ大幅な下方修正を予想する。まだ9月分の指標は出揃っていな いが、供給制約の解消により7-9月GDPは大幅なプラスが期待で きる。しかし8月以降に生産、輸出、消費の勢いが弱まり始めており、 11年度は若干のプラス成長にとどまろう。

12年度は11年度からのゲタが小さくなり、復興需要はあっても+ 2%台前半までの低下が見込まれる。筆者自身は+2%程度もありとみ ている。今回新たに提示される13年度は下振れリスクがある状況下、 復興増税が実施予定であり、12年度よりも成長率は低下させよう。+ 1%台後半がイメージされる。

コアCPIは基準改定を踏まえた下方修正が見込まれる。11年1 ―6月平均の下方改定幅は▲0.7%pt。7月時の予想を機械的に読み替 えればゼロとなるが、日銀はプラス表示を選ぼう。12年度は潜在成長 率を上回る成長となっても、需給ギャップはタイムラグを伴って徐々 に縮小することから、13年度のコアCPIはゼロ%台前半にとどまり、 1%には届かない。時間軸は正式に13年度まで伸び、強化される。

13)現在の市場は23日の欧州連合(EU)首脳会談を控えて少し落ち 着きを取り戻しつつある。一方で米国指標は弱いソフトデータに対し て、ハードデータはしっかりである。いずれも悪い方向に動いてはお らず、現時点では追加緩和の緊急性はないと判断されるだろう。今回 の会合は無風でも、日銀の追加緩和の可能性は今後も残ると筆者はみ ている。そのタイミングは金融市場に混乱が生じた場合には早まり、 景気の下振れリスクが顕在化すれば、決定せざるを得ないだろう。

追加緩和のオプションでは、資産買い入れ等基金の買入対象国債 の長期化が3年程度なら可能性は高いと考える。展望リポートでは13 年度まで消費者物価は前年比+1%未満で低迷する見通しが示され、時 間軸が正式に伸びて強化される。それを踏まえた買い入れ対象国債の 長期化なら次なる一手として筋が通ろう。また資産買い入れ等基金の 買入増額をせずに対応できるメリットもある。

一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)の時間軸である13年半 ばとの比較で、金利差による円高要因の軽減とあらためて認識されれ ば(認識させるような表現となれば)、意外にも効果がじわりと出てく る可能性もあるかもしれない。

バーナンキFRB議長が市場とのコミュニケーション戦略に精力 を注ぎ始めている。フロントランナーの日銀には、欧米に日本の教訓 を伝授するにとどまらず、知恵比べても負けない新たな施策や枠組み を展開することが期待される。18日発表の「マクロプルーデンス面で の取組み」も、何かの前触れなのか気になるところではある。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和か 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)展望リポートは中心的な見通しの基本線は維持するものの、景気 の回復ペースについてこれまでよりも先送り(事実上下方修正)した 上で、海外要因による下振れリスクへの警戒感を前面に強く出すこと になろう。前回10月7日の金融政策決定会合終了後の対外公表文では、 生産・輸出と海外経済について記述内容が下方修正されていた。

政策委員大勢見通し中央値のうち、実質GDPについては見通し 下方修正と整合する形で、11年度と12年度が7月中間評価時点の数 字から下方修正されるほか(それぞれ前年度比+0.2%、同+2.3%に なると予想)、今回から数字が出される13年度は前年度比+1%台半 ばといった慎重な数字にとどまろう(プラスのゲタを勘案しつつ、前 年度比+1.5%前後になると予想)。

コアCPIについては、8月に行われた基準年改定の影響が反映 されるため、11年度と12年度の数字は7月中間評価時点の数字から 下方修正される可能性が高い。さらに、13年度も日銀が目指している +1%には届かないだろう。11-13年度の中央値は前年度比0.0%、 同+0.1%、同+0.5%といった数字の並びになるとみている。

13)今会合で追加緩和(資産買入等の基金を5兆円増額)か。8月会 合で基金を10兆円というまとまった規模で増額したこともあり、市場 が十分安定していれば今回も見送られる可能性は少なからずある。だ が、中心的な見通しを展望リポートで事実上下方修正することと整合 させるならば、追加緩和が行われやすい。

焦点は引き続き、欧州債務危機を中心とする海外の経済金融情勢。 日銀が追加緩和に動くかどうかが市場全般に及ぼす影響は、限定的な ものにとどまる。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持(欧州危機が深刻化すれば追加緩和) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年4-6月(2014年1-3月以降) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)展望リポートで示される予想の中央値は実質GDP成長率が11 年度+0.2%、12年度+2.4%、13年度+1.9%。コアCPI前年比が11 年度+0.1%、12年度+0.3%、13年度+0.6%と予想する。日銀はリスク 要因では欧州のソブリン問題が世界的な金融危機に波及するケースを 前回レポートよりも強めに表現し、それに対する警戒を表すと思われ る。しかし、中心シナリオでは、日本経済は緩やかながらも回復して いくという見方を維持しよう。

欧米経済の成長鈍化により輸出の見通しは引き下げられるものの、 被災地での復興需要や、補正予算による押し上げ要因が先行き見込ま れ、新興国経済は減速しつつもハードランディングはない、という前 提で議論が行われると推測される。

13)日銀は欧州ソブリン問題が金融市場での連鎖的な危機に波及する ことを強く警戒している。当面は今月26日のEU会議までに欧州の当 局者が対策を打ち出せるかが焦点。ひとたび問題が深刻化したら、シ ョックを和らげるために、流動性供給や資産買い入れ基金の拡大を決 定するだろう(タイミングによっては緊急会合もあり得る)。しかし、 そのリスクシナリオが顕在化しない間は、しばらくは現状維持で様子 を見ると思われる。

インフレ率の上昇ペースは遅く、米国ではFRBが短くとも13 年半ばまで現在の政策を続ける可能性が高いため、日銀の利上げは14 年第2四半期ころだろう。

なお、日本は欧州の財政問題の当事者ではなく、米国のようなバ ランスシート問題の深刻さも今はない。それなのに沈滞ムードが強ま っている理由のひとつは、単に円高の問題だけでなく、新興国で稼げ る付加価値の高い商品を提供できる企業が減ってきているせいだろう。 例えば、中国では日本車の人気が落ちてきているし、パナソニックの テレビ事業大幅縮小に見られるように、家電でも中国などのメーカー との差別化が難しくなっている。

新興国メーカーと同じ「リング」で勝負すると、高インフレの国 であっても値下げ競争に巻き込まれてしまう。仮に1ドルが100円に 戻っても、テレビなどで収益を出すことは難しいだろう。新興国メー カーと競合しない分野に注力している欧米の優良な企業は、世界経済 がこの環境でも高収益を上げている。日本経済の安定的なデフレ脱却 のためには、日本企業に新戦略が求められる。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)実質GDP成長率とコアCPIの見通しは以下の通り。 実質GDP2010年度 0.3% 2011年度 2.1% 2012年度 2.0% コアCPI2010年度 0.0% 2011年度 0.1% 2012年度 0.2%

13)仮に追加緩和が行われるとすれば、円高が急進したとき。政府の 介入と歩調を合わせて資産買入基金を増額すると予想。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)日銀は展望リポートで、基本シナリオとしては見通し期間中、日 本経済は緩やかな景気回復を続けるとの見方を維持すると見られる。 海外経済の減速傾向が鮮明となっているが、今のところ世界経済の後 退局面入りを示す十分なエビデンスが揃っているわけではない。

一方、国内では自動車セクターで震災後の生産の落ち込みを取り 戻す動きが予定されているほか、遅れていた復興需要も今後は本格化 してくることが期待される。こうした状況下で、日銀が後退局面入り はもちろん、景気回復の中断(踊り場)を基本シナリオとして予想す ることは、まず考え難い。

ただし、成長率見通しは海外経済の減速を受けて、ある程度下方 修正されると見られる。審議委員の成長率見通し(大勢の見通し)の 中央値は、7月の中間見直しと比較すると、11年度が0.2%(7月

0.4%)、12年度に関しては2.3%程度(7月2.9%)へと下方修正さ れると予想する。今回、初めて発表される13年度の成長率見通しに関 しては1.3%程度だろうか。

リスク要因に関しては、当然、海外経済の一段の下振れリスクが 強調されることになろう。最大の懸念事項である南欧のソブリン問題 に関しては、23日、26日のEU首脳会議の結果およびそれに対する市 場の反応を見極めた上での評価となるが、短期的に全ての懸念が払し ょくされる望みは薄く、今後も断続的に市場の緊張が高まる局面が生 じることを前提とせざるを得ないだろう。

欧州危機の深刻化は、欧州経済のみならず、世界経済全体にとっ て極めて大きなリスク要因である。もとより、欧州危機が再燃し始め た背景には、頼みの綱である新興国経済が減速してきたことがあるが、 今度はドル・ファンディングに支障をきたすようになった欧州系金融 機関が新興国から資金を引き上げ始めるなど、世界経済において負の フィードバック・ループが作動し始めている兆候がある。

4月の展望リポートにおいては、新興国経済に関して短期的な見 通しとしては上振れリスクが強調されていたが、今回は下振れリスク を強く意識した記述になると見られる。新興国に関しては、先進国経 済の悪化を受けた政策転換(景気引き締め策→景気刺激策)が、やや 長い目で見るとインフレ抑制の失敗につながり、将来的に景気により 強い振幅をもたらす可能性などが言及されるかもしれない。

物価に関しては、緩やかながら潜在成長率以上の成長が続く(需 給ギャップの改善が続く)という基本シナリオを前提に、基本的には 引き続き改善傾向を予想することになろう。ただし、日銀は7月の中 間見直しまで消費者物価の見通しを05年基準指数に基づいて作成し ていた。今回10年基準指数に基づく予測に変わるため、見通しは大幅 に下方修正されることになる。

審議委員の見通しの中央値は11年度、12年度ともに0%近傍へ 修正されると見られる。なお11年度と12年度の予測が同程度となる のは、主に11年度がエネルギー価格の上昇により大きく押し上げられ ているためであり、エネルギーを除いたベースでは緩やかな改善を意 味する。

13年度に関しては、「物価安定(=1%程度)」に近づくとの見通 しを示すと見られるが、早期のゼロ金利解除をじゃっ起させないよう な数字を提示すると予想する(日銀は「物価安定」が展望できるまで ゼロ金利政策を続けるとしている)。中央値は恐らく0.5%程度になる のではないか。

13)筆者自身は、消費者物価の見通しを12年度がマイナス0.2%、13 年度がマイナス0.1%と慎重に見ている。これは経済成長率を日銀よ り控えめに見ているということも反映しているが、そもそも需給ギャ ップがインフレ率に対して非感応的になっているという認識を強く持 っている。日本で緩やかなデフレが継続しているのは、日本経済が「デ フレ均衡」に陥っているから、というのが筆者の仮説である。

過去15年間、日本経済においては需給ギャップが改善を続ける局 面においてもインフレ率の上昇は限られ、一方で、需給ギャップが大 きく悪化する局面においてもデフレが大きく加速することはなかった。 インフレ率が需給ギャップに対して非感応的になっているのであれば、 循環的な景気回復によって日本経済がデフレから完全に脱却すること は極めて困難である(好況期に何とかプラスのインフレ率を実現して も、景気後退局面で再びデフレとなり、そのことは日銀の定義する「物 価安定」が達成できたことにはならない)。

したがって金融緩和によって総需要を刺激して需給ギャップを改 善させ、デフレからの脱却を図るという従来の政府・日銀の戦略は再 検討が必要である。「デフレ均衡」を脱出するための正攻法は構造改革 による均衡実質金利の引き上げだ。マイクロ・レベルで構造改革を進 めることで新たな成長分野の出現を促し、それにより資本収益率が高 まってくれば、金融政策の有効性が復活することが期待される。金融 政策などのマクロ安定化政策は、景気押し上げ効果があるとしてもそ れは一時的なものであり、均衡実質金利の引き上げにはつながらない。

日銀内においても、デフレ脱却には構造改革が必要との考え方が 強いと見られる。しかし、構造改革が一向に進まない中、結局、円高 進展により政治的プレッシャーが高まる度に、効果は薄いと認識しつ つも、なし崩し的に追加緩和策を打ち出すという状況がこれまで続い てきた。

近い将来において、こうした構図が大きく変わることはないであ ろう。先進国、新興国ともに、当面、景気は減速する方向にあり、多 くの中央銀行の政策は緩和方向の動きが予想される。ECBは年内に 利下げに向かう可能性が高く、FRBも今後の経済指標や市場動向次 第ではQE3導入に踏み切る可能性がある。円高圧力が続くと予想さ れ、日銀がさらなる緩和を迫られる可能性は高い。

●モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持(賛成多数) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年10-12月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)国内生産がサプライチェーンの早期復旧により震災前の水準をほ ぼ回復し、電力不足の影響もさほど受けなかった点は好材料。しかし 4月展望リポートにおける11年度の審議委員の予想中心値+0.6%達 成には7-9月以降、年率+5%超の高成長が3四半期持続する必要が あるが、海外経済の先行き不透明感がかつてなく強まっているなか、 震災復興需要も出遅れていることから上記想定は非現実的だ。

11年度の成長率見通しの弊社見通し(0%)近辺までの引き下げ は不可避だろう。日銀の改定予想中心値は+0.2%と予想する。これは 7-9月が弊社見通し通り前期比年率+5.7%として、10-12月以降年 率+2.4%成長を前提とする。ただし第3次補正予算成立のめどころは いまだたたず、世界経済も10-12月から1-3月にかけ成長率が大き く低下すると予想されることから上記予想でさえ楽観的に見えよう。

一方、前回4月時点の12年度見通しは+2.9%で政府と横並びだが、 米国の財政刺激策の効果はく落、欧州ソブリン問題の長期化、東アジ アの減速継続といったリスク要因を勘案すると、これも引き下げ方向 で見直されよう。日銀の改定予想中心値は+2.1%と予想する(弊社自 身の予想は+1.2%)。13年度も12年度並みの2.1%程度としよう。

物価予想については、前回4月の日銀予想は消費者物価統計の基 準改定前で実質的な意味は乏しかった。8月の基準改定による影響が 平均-0.5pt程度あったこと、ここもとの資源価格が調整局面にあり円 高も続いていることを勘案すると、日銀の11年度の改定予想は+0.1% とゼロ近傍に引き下げられよう。弊社自身の予想は-0.3%と日銀より 一貫して慎重である。

先行き12年度にかけてはこの4-6月までの需給ギャップ拡大 影響がタイムラグを伴って先行きの物価に影響すると見込まれること、 世界経済の減速に伴い資源価格は調整色を強める可能性があることか ら、弊社はコンセンサスに反し、物価は低迷の度合いを強めると見込 んでいる(弊社自身の予想は-0.9%)。これに対し、日銀の予想は常に 上方バイアスがあることから、改定予想でも12、13年度にかけ+0.6% 程度への消費者物価の持ち直しを予想するであろう。

13)経済・物価見通しの下方修正により追加緩和の大義名分が整うで あろう。海外経済の先行き不確実性が高まり、11月1、2日の米連邦 公開市場委員会(FOMC)で追加緩和発動の可能性もくすぶること から、日銀も対抗上早期緩和を模索しよう。タイミングは最速で展望 レポートと同時の10/27(ただし10/27の可能性は現状では50%以下、 ただし年内の可能性は70-80%)。

予想される緩和メニューは①資産買入れ基金の一段の増額、②資 産買い入れ基金における国債の年限延長(2年→5年程度)、③(米連 銀が実施の場合には)超過準備に対する付利水準の引き下げ。なお、 実質ゼロ金利解除の時間軸は展望不能なほど長い。日銀予想では 12-13年度にかけ消費者物価は「中長期的な物価安定の理解」の中心 値である1%に接近する見通しとなろうが、日銀の物価予想には常に 上方バイアスがあることから、市場はこれをまっとうには受け止めず、 したがって時間軸にも変化はなかろう。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :可能性あるが時期の特定困難 3)利上げ時期 :2013年10-12月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)海外経済の低迷や復興需要の遅れなどから、10-12月以降の景気 パスは下方屈折したと考えている。しかし回復というパスそのものに は変化はない。欧米ともに広義のバランスシート調整が継続し、経済 成長は2-4年のタームで低迷しよう。特に欧州の債務問題に関し、 目先、注目されている銀行の資本増強などは、「始まり」であって、「終 わり」ではない。

「先行きのわが国経済は、緩やかな回復経路に復していく」など 経済・物価の中心的な見通しは変わらないだろう。もっとも海外経済 は上記のように多少弱めの見方を余儀なくされ、それを主因に実質 GDPの見通しも2012年度を中心に下方修正されると予想している。

実質GDPの見通しは11年度+0.1~+0.5%、12年度+2.1~

2.6%、13年度+1.4~+2.0%、コアCPIは11年度-0.2~+0.1%、 12年度0.0~+0.5%、13年度+0.5~+1.0%。

13)基本的には「資産買い入れの対象になる長期国債の残存年限を現 状の1-2年から1-5年に長期化する」を年内に決定すると考えて いる。1ドル=70円に迫る円高が実現すれば、超過準備に対する付利 引き下げや政策金利の上限引き下げなどの可能性もありと見ている。 ただ、現状、そのがい然性は低い。市場の時間軸はもちろん、今後の 海外情勢などにも左右されるが、徐々に伸びると想定している。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし(同) 3)利上げ時期 :2014年以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国個人消費、世界生産先行指標はともに回復傾向。欧州ソブリ ン危機対応が前進しており、市場はリスク・オン・モード。これを反 映した株価上昇も企業・家計マインドを下支え。日本の鉱工業生産は 9-11月に調整の後、12-2月に再度回復。10-12月からの2四半期 連続マイナス成長は回避。12年の世界景気は欧州銀行システム不安が 深刻化した場合には大きく下振れへ。

日銀は11、12年度の実質GDP成長率見通しをそれぞれ0.3-0.5 ポイント下方修正へ。コアCPI前年比の見通しはそれぞれ0.2-0.3 ポイント下方修正へ。13年度見通しは実質GDP成長率で1.5%程度、 コアCPI前年比で0.2-0.3%か。

13)補完当座預金制度適用利率(0.1%)の引き下げ、資産買い入れ等 基金の対象資産に外債の指数連動型上場投資信託(ETF)を追加、 時間軸の強化-が残されたオプション。FRBの追加対応次第。早け れば、11月会合でなんらかのアクション。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年7-9月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.25%(同)

12)米国経済は調整局面が続く可能性が高い。経済指標は足元でポジ ティブなものもあるが、企業業績は先行き期待を高めるほどではない。 失業率が短期のうちに改善することも期待しづらい。ツイストオペに も足元の金利動向を見ると、FRBが想定するほどの景気下支え効果 は期待しづらい。ユーロ圏の問題が拡大して世界経済の足を引っ張る ようだと、米国はQE3の発動を検討する可能性も残っている。

欧州ではドイツ経済の減速が徐々に鮮明になることが想定される。 欧州ソブリン問題は、まだ本格的な解決の糸口が見えていない状況だ。 金融市場がそうした状況を容認してくれればよいのだが、それができ ないと金融市場は暴力的にそれを求めることも考えられる。その場合 には、金融市場が一時的に混乱する可能性は高い。

新興国では引き続きインフレ上昇懸念が強い。中国の9月のCP Iでも明らかになったとおり、食品価格の上昇はアジアを中心に家計 支出の重石になっていくはずだ。それは実体経済にもマイナスの影響 を与えよう。インドネシアやブラジルのように新興国の中央銀行はイ ンフレ圧力と景気の減速という2つの命題の相手をしなければならな い可能性が高い。

わが国の経済は足元で緩やかな回復傾向が続いている。国内の最 終消費需要は大幅な伸びは期待できないものの、相応の底堅さで推移 している。一方、企業の生産活動の回復は着実に進んでおり、今後も 復興需要を取り込んだ生産回復が続いていく可能性が高い。展望リポ ートは基調としては前回の内容を踏襲しつつ、景気の下方リスクに留 意した見通しを示すことになろう。

実質GDP成長率、コアCPIの見通しは実質GDP成長率が11年度

0.4%、12年度1.8%、13年度2.0%、コアCPI上昇率は11年度-0.3%、 12年度-0.1%、13年度0.1%。

13)金融政策は米欧の金融政策・景気動向を注視しつつ、下方リスク が高まった時点で追加緩和を行うというスタンスが基本になろう。当 面は8月に決定した資産購入基金の規模拡大の効果見極めに焦点が当 てられることになる。次第に金融政策の余地が限定されている。今後、 日銀が打ち出せる政策対応は時間軸の明確化、もしくは資産購入基金 の追加拡充に絞られていこう。

時間軸は今後、より明確化される可能性がある。景気下支え、債 券流通利回りの引き下げの観点で、政府から日銀に対する要請もより 強いものとなっていこう。そうした政策対応が実体経済にどれだけの 効果を持つかは不透明だ。しかし、政府からの要請を考えると、時間 軸の明確化という選択肢は次の一手として検討されていくだろう。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :メインシナリオとして想定せず 3)利上げ時期 :13年10-12月にレンジ停止、14年1-3月利上げ 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(0.00%-0.05%)

12)短観や日銀支店長会議の報告では、夏場から比べれば景気の加速 感はやや落ちたが、回復の流れが途切れてしまうリスクを強く感じる こともない。一部地域では円高によって先行きの不透明感が強まって いるが、大阪支店長が会見で円高に関して「名目レートを見て超円高 というのは極端だ。(メディアなどが)騒ぐほどではない」と述べた。

大阪(近畿)は今回の景況報告で相対的に慎重な部類に属してい ることや、早川支店長が元の調査統計局長であり、景気分析への影響 力も大きいと考えられることから、日銀内で円高に対して危機感を強 めている印象はない。

日銀は展望リポートでGDPは12年度見通しを2%台半ばに下 方修正、13年度は1%半ば-2%を見通すのではないか。CPIは12 年度が0%台前半、13年度は0%台半ばだろう。当社はGDPが12 年度、13年度それぞれ+2.7%、+2.1%。CPIが-0.2%、+0.1%。

13)10月後半に欧州政策対応への失望から市場のリスク回避度合いが 強まり、これを引き金に日銀が追加緩和に踏み切るシナリオをこれま で描いてきたが、短期的には①欧州が政策決定を先送りしており、市 場に方向感が出ないことに加え、②市場のパニックを回避する最低条 件であるギリシャ2次支援の実施については、近いうちにまとめてく る可能性の方が高い、③米国指標が景気底入れ、ないし再加速を示唆 していることから、追加緩和をメインシナリオから外すことにする。

一方、市場のリスク回避が弱まり、ひいては日銀緩和に打ち止め 感が出てくるには、欧州銀行の迅速かつ十分な資本増強か、循環的に グローバル景気がかなり強くなるかが必要と思われるが、年度末ごろ まではこの条件が満たされる可能性は低いだろう。よってサブシナリ オとしての日銀追加緩和は残り、実現の場合、市場のリスク回避度合 いに応じて、基金増額、買い取り対象の国債の年限長期化、利下げ、 の順に組み合わせてくるだろう。

時間軸は現在2.5-2.6年と推計されるが、14年入り後の利上げ が市場コンセンサスとなっている現状に照らして、大きなずれはなく、 また追加緩和期待が市場で続いている間は、時間軸の短縮化は始まら ないだろう。

なお市場で誤解されがちだが、今回13年度までの物価見通しが出 て、これが1%を下回ることは、13年度中の利上げがない確証とは必 ずしもならない。実際には日銀は先見的に政策を運営しており、13年 度に利上げをするかは、13年度時点で彼らが見通す将来(少なくとも 14年度、ないしは15年度)の物価見通しに基づくと思われる。筆者 は13年10月に出される14、15年度の展望リポートが緩和解除に動き 出す伏線になると見ている。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年10-12月(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)復興需要を除いた実力ベースでみれば、国内景気は12年前半、足 踏み局面を迎える可能性が高い。ユーロ圏が今年10-12月から景気後 退局面に入るほか、中国景気も来年1-3月にかけて一段と減速する と予想され、日本の輸出は緩やかな減少に転じるとみられる。ただ、 それとほぼ同じタイミングで第3次補正の効果が顕在化することが手 伝い、GDP全体でみればマイナス成長を逃れると予想される。

日銀は前回会合で景気見通しの下方修正に向けた地ならしを行っ た。海外景気の見通しが「当面減速する」に下方修正されたほか、景 気回復のタイミングを特定する表現(従来は「11年度後半以降」)も 取り除かれた。展望リポートは「輸出の増加や資本ストックの復元を 背景に、緩やかな回復経路に復していく」という基本シナリオは維持 するとみられるが、そのタイミングは海外景気の下振れにより、従来 の想定に比べてやや後ずれするとの判断を示す可能性が高いだろう。

日銀のGDP成長率の予想は11年度がプラス0.4%、12年度がプ ラス2.2%、13年度がプラス1.5%想定。13年度は震災復興需要のは く落、家計向け臨時増税の開始といったマイナス要因があり(米国で も財政緊縮が強まる可能性が高い)、本来的には成長のハードルが高い 年だが、新興国を中心に海外景気の回復が続くことを前提に、1.5%程 度のGDP成長率を予想することになろう。

コアCPIの見通しについては、CPI基準改定に加えて、成長 率見通しの下方修正、この間の国際商品市況の下落、円相場の上昇と いった諸要因が下方修正要因となる。こうした諸要因を素直に反映し た場合、12年度のコアCPIの見通しは前年比マイナスとなり、「中長 期的な物価安定の理解」(2%以下のプラスの領域)からは逸脱する公 算が大きい。

金融政策運営との整合性を問われかねないことから、日銀は辛う じてプラスの予想を示すことになるとみられる。日銀のコアCPIの 予想は、11年度が前年比プラス0.1%、12年度もプラス0.1%、13年 度がプラス0.5%を想定する。

13)今会合では追加緩和措置は見送られる可能性が高い。その背景と しては、①円相場が比較的安定している、②米国景気の底堅さが目立 ち始めている、③欧州情勢については当面、政策対応を見極める段階 である-といった諸点が指摘できる。

もっとも23日に予定されるEU(欧州連合)首脳会議が市場参加 者の期待を裏切り、リスク回避と円高が再燃するようであれば、追加 緩和が決定される可能性も否定できない。その場合、資産買い入れ等 基金の増額と、その下で購入する国債の年限長期化が有力な選択肢と なろう。

当面の金融政策は欧州ソブリン債務・銀行危機に対する政策対応 とそれを受けた国際金融市場の動向に強い影響を受けよう。欧州当局 の政策対応が市場の期待を裏切り、リスク回避と円高圧力が再燃する 場合、追加緩和が行われる可能性が高まろう。

FRBが8月に13年6月まで例外的に低い水準のFFレートが 続く可能性が高いとの方針を示した時点で、日銀の「時間軸」も連動 して(恐らく14年まで)延びた可能性が高い。日銀は今会合で13年 度までゼロ%台の低インフレが続くとの見通しを示すことで、現行金 融緩和に対するコミットメントを打ち出すとみられるが、金融市場に とってこれは周知の事実に過ぎないだろう。

●バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)海外の減速は続いているが、米国の先行系指標には下げ止まりの 動きも見られる。中国の指標が反転してくるかどうかが当面の焦点だ が、現状での判断としては今後2、3カ月は世界的に「なべ底的」な 弱い状況が続いた後、年明け頃には緩やかに景気サイクルが上向き始 めるイメージではないか。日本は3次補正の復興需要が1-3月中に 出てくる分にはほとんど期待できないものの、外需サイクルが減速局 面を脱してくれば、景気にはポジティブ。

展望リポートでは12年度の成長が2%台半ば、13年度が1%台 半ばになると見られるが、引き続き海外経済のリスクを中心に議論が なされる結果と見られる。欧州、米国とも財政緊縮政策が継続する中 では、少なくとも12年度中に明確な成長のリバウンドは期待し難いが、 低水準横ばい程度の前提は置けそう。新興国の減速リスクにどの程度 力点を移してくるかという点に注目している。

CPIは12年度は小幅マイナスで、13年度からプラス予想にな ると予想するが、物価安定の理解の1%水準にはまだかなり遠い数値 が示されることになるだろう。13年度の成長率が1%台半ば程度であ れば、需給ギャップ縮小のペースはかなり緩やかになってくるので当 然だろうが、利上げは早くて14年以降という現在市場の織り込んでい る水準を事後追認する形になるだろう。

13)08年以降、急激な円高発生時に日銀は2回ずつの政策発動を行な ってきたが、今回は円高がオーバーシュート後とりあえず小康状態に なっていることから、このまま追加策を講じずにゆく可能性も高くな ってきている。外需の鈍化がサプライチェーン復旧後の景気回復ペー スを鈍化させているものの、これから復興需要が本格化してくること を考えれば、さらなる急激な円高進行がなければ、ファンダメンタル ズの面で追加緩和の必然性は低下する。

12年前半は世界景気は多少ましな状況になっていることが予想 されるものの、大きなアップサイドもない状況であり、利上げ時期の 織り込みについてはまだすぐに前倒すような動きにはなってきそうに ない。