オリンパス株の信用残、2000年以降最高-どじょう狙い個人積極

オリンパス株の売り、買い双方の 信用取引残高が2000年以降では最高水準に膨らんだ。英国人前社長の 突如の解任以来、同社の経営体質に警戒感が広がる半面、内視鏡を中 心とした事業成長期待も残り、短期間で株価が半分になり、個人投資 家らが値幅取りの買いを入れてきた、との見方が市場で出ている。

信用取引の決済に必要な資金、株券の貸借業務で最大手の日本証 券金融によると、オリンパス株の信用取引残高は18日に買い残が868 万株、売り残が779万株となり、少なくとも2000年以降では双方数値 が最高に達した。会社側が前社長解任を発表する前日13日時点では、 買い残が9万株、売り残が77万株だったため、3営業日で買いが94 倍、売りが10倍に増えた。20日時点の買い残は711万株、売り残は 783万株と依然高水準だ。

立花証券の平野憲一執行役員は、「経営混乱の広がり、アナリスト による格下げ続出や投資評価停止などを受け、ファンドのロスカット、 投げ売りが続いている」との見方を示した。

ブルームバーグ・データの保有機関グループ検索で見ると、ファ ンドなど機関投資家らのオリンパス株の保有比率は19日時点で

56.8%。彼らがリスクヘッジなどで信用取引を含む空売りを行った状 況は、東京証券取引所の集計データからも分かる。オリンパスを含む 東証1部33業種の精密機器に対する空売り売買代金は、機関投資家を 対象にした「価格規制あり」の分類で18日に254億円と、13日の58 億円から4.4倍となった。この間、オリンパスより指数に占めるウエ ートが高いHOYAやテルモ、ニコンに売り残の大きな変動はない。

東電株と同じ垂ぜんの的

ただ、19日時点では同代金が140億円にまで減少。一方、空売り 価格規制の適用が除外される個人投資家などの動向を示す「価格規制 なし」の分類では、13日の32億円から19日には86億円まで増えた。

いちよし投資顧問の秋野充成運用部長によると、オリンパス株の信 用残急増は「ヘッジファンドや個人投資家が活発に売買しているため」 で、日経平均株価の日中値幅が前日まで10営業日連続で100円未満と、 相場全般が足元でこう着感を強める中、「マネーゲームと割り切った投 資家には垂ぜんの的。少し前の東京電力株と一緒だ」と言う。

東日本大震災、福島第1原子力発電所事故後に株価が暴落した東 電の場合、震災当日の3月11日の信用買い残は57万株、売り残は35 万株。これが同17日には買い936万株、売り413万株までそれぞれ 16倍、12倍に急増した。

流動性があり、値動きも良いオリンパスが個人にとって2匹目の どじょうになりつつあるのは、インターネット専業大手の松井証券の データでも顕著だ。19日の同証経由の取引では、オリンパスは売買代 金43億円と1位で、プロ野球球団の買収観測が流れた2位のディー・ エヌ・エーの9億円を大きく引き離した。オリンパス株が社長交代で 急落基調を強める前の13日は、東電が同証での売買代金1位だった。

対立激化、活発な信用売買続く

オリンパス株は、マイケル・ウッドフォード前社長の解任を発表 した14日以降に急落、21日午前には一時1252円と13日終値の2482 円からの下落率は5割に達した。水準はリーマン・ショックをきっか けに大きく下げた09年3月以来、約2年7カ月ぶりの安値だ。

前社長と現経営陣の間で、同社が08年に行った英社買収でのファ イナンシャル・アドバイザーへの報酬支払いをめぐり、見解の対立が 激化。ファンダメンタルズ以外の要因での株価変動リスクがあるとし、 ゴールドマン・サックスやJPモルガン、ドイツ、三菱UFJモルガ ン・スタンレーなど各証券アナリストからは投資判断を一時停止する 動きが相次いでいる。

いちよし投資顧問の秋野氏は、「どちらが正しいこと言っているの か分からない」ため、当面は思惑含みで株価が変動し、「信用取引での 活発な売買はしばらく続く」と予想。株価の方向性については、「リタ ーンリバーサル狙いもあり、短期的なリバウンドを繰り返す」ものの、 経営混乱やガバナンス(統治力)の欠如、業績への悪影響などを考え ると、「マーケットから見た信用度は大幅に低下し、ファンダメンタル ズも劣化していく。下値を見ておいた方が良い」と話している。