【コラム】「オリンパス・ショック」は世界の反面教師-ペセック

世界各地のMBA(経営学修士号) カリキュラムには、新設講座として「オリンパス101」を追加すべき だ。実業界の大物を志す者にとって、危機打開、大手企業の経営、世 界3位の日本経済のかじ取りにおいて、反面教師の例を学ぶことは時 宜にかなった実践演習になるだろう。

エンロンやワールドコムやウォール街の不正行為で厭世(えんせ い)的になった投資家が、いまだ一企業のスキャンダルに驚くという 事態は、多くのことを物語っている。カメラ・医療機器メーカーのオ リンパスはこの一週間でそうした偉業、またはそれ以上のことを達成 してしまったのだ。

現在進行中の今回の出来事には、あらゆる要素が盛り込まれてい る。1919年創業という誇り高き企業、日本人トップならやらないであ ろう手法で企業改革を成し遂げようとして解任された外国人社長、日 本ではめったに表ざたにならないのに表面化した内紛、やくざ関与の 可能性の気配、浪費されたかもしれない多額の現金、何をすべきか分 からない企業幹部、メディアの熱狂、問題がすべて消えてなくなって ほしいと願う規制当局者などだ。

物語の本筋はまだ始まっていない。日本はいざとなったら、どう 収拾を図るのだろうか。理想的な世界なら答えは簡単だ。オリンパス の取締役は解任され、規制当局は日本株式会社への信頼を取り戻すた め、熱意や公明正大さや誠実さを発揮して、この恥ずべき出来事を調 査するだろう。

内部調査

この物語は、オリンパス初の外国人社長、マイケル・ウッドフォ ード氏が就任後わずか約7カ月で解任されたことから幕を開ける。社 外アドバイザーに大金が説明もなく支払われたことを調査したことで 解任されたとするウッドフォード氏の主張をオリンパスは否定。その 後、オリンパスは急に思い出したかのように、08年の総額20億ドル の英ジャイラス買収で、6億8700万ドル(現在のレートで約530億円) という桁外れの金額をアドバイザーに支払ったことを認めた。

プロスペクト・アセット・マネジメントの創業者、カーティス・ フリーズ氏によれば、そんなことがまかり通るのは、会社に「頭脳よ りもカネの方が多い」場合だという。私も、オリンパスの取締役会よ りも、バーナード・マドフ受刑者(米史上最大のねずみ講事件の首謀 者)やマルクス兄弟(米国のコメディアン)に投資資金を預けた方が ましだと思う。

制度的欠陥

この出来事は、日本が患っている症状を示していると同時に、今 年に入ってからの震災や度重なる放射能危機、国債格下げ、デフレの 深刻化、円高、08年のリーマン・ショック以来5人目の首相の就任と いった憂鬱に続く出来事だ。ゴールドマン・サックス・グループのス トラテジスト、キャシー松井氏が言う「オリンパス・ショック」は、 日本の制度的な欠陥を市場に再認識させている。

この物語は今後さらに関心を集めそうだ。オリンパス筆頭株主の 日本生命保険と、米投資会社のハリス・アソシエーツは、ウッドフォ ード氏解任後に株価が45%以上下落したことを受け、同社に説明を求 めている。FACTA誌は、オリンパスの支払いの一部は「反社会的」 分子に渡った可能性があると伝えた。

私が海外に出張してスピーチすると、日本への興味は困惑するほ ど少ない。話題が中国やインド、タイに移ると聴衆は全神経を集中さ せるが、日本の話をした途端、スマートフォン(携帯多機能端末)の ブラックベリーを取り出す。

多くの人が日本を軽視する傾向がある中、政府はより熱心に賢く 努力する必要がある。企業にも同じことが言えるが、実際に努力して いるところは少ない。

事なかれ主義

日本の企業文化である、問題を見た見ぬふりをして放置する事な かれ主義は、スピードや革新性、透明性を重視するグローバル化社会 に逆行する。

日本のコーポレートガバナンス(企業統治)は不十分であり、厳 しい監視が必要だ。日本企業の取締役会では議論が白熱することはま れだ。その理由の一端は、あ然とするほどの高額を得ている米国人ほ どの報酬を日本企業の役員が得ていないからだ。株主は役員は頭が良 く、日本株式会社のために全力を挙げていると思っている。だから株 主が厳しい質問を浴びせかけることもほとんどない。

とはいえ、一連の買収で多額の金額が無駄になったというコンサ ルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の報 告書を、オリンパス取締役会が取り合わなかったことについてはどう 説明すればいいのだろうか。取締役会はPwCの報告書の内容よりも、 ウッドフォード氏が同社の財務諸表を調べたことを問題視しているよ うだ。社外取締役がいれば、オリンパスにとってもウッドフォード氏 にとっても良い結果になっていたかもしれない。

正義があるなら

最後に落ちをつけようと思うが、今回の出来事は冗談を言って終 わらせることができるような問題ではない。オリンパスはウッドフォ ード氏をメディアへの内部情報漏えいで訴える可能性がある。この国 に正義があるならば、証券規制当局は菊川剛会長とその他の取締役に とって不愉快な質問をするはずだ。その回答を聞けば、オリンパスで 「頭脳」が使われているのかどうかが明らかになるだろう。

(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニ ストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)