【クレジット市場】キヤノンCDS1年半ぶり改善幅、欧州懸念後退

キヤノンのクレジット・デフォル ト・スワップ(CDS)の下落幅が先週、約1年半ぶりの大きさを記 録した。欧州債務危機の収束に向けた政策進展期待が広がり、為替相 場もユーロ高・円安方向に振れ、日経平均株価構成銘柄で欧州依存度 が2番目に高いキヤノンに対するリスクヘッジの動きが和らいだ。

企業の信用リスクを売買するCDS市場で、キヤノンのCDS保 証料率(5年物)は10月第2週(10-14日)に5.8ベーシスポイン ト(bp、1bp=0.01%)下落し、60.3となった。ブルームバーグ・ データによると、週間下落幅としては2010年の3月4週以来の大きさ だ。一方、アジア・テクノロジーセクターのCDS指数は、10月2週 に5.5bp下げ172で終了、4月4週以来の下落幅となった。

大和証券キャピタル・マーケッツの堀江晃吾アナリストは、「ユー ロ安が進む中で、ユーロ圏のエクスポージャーが高いところはとこと ん嫌われた」と指摘。しかし、欧州でも危機への対症療法がようやく 出てきており、「見直しが入って安心した」と言う。

欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のバローゾ委員長 は12日、域内銀行の資本強化とギリシャ融資第6弾の実行などを求め る工程表を発表。13日には、欧州救済基金である欧州金融安定化基金 (EFSF)の拡充案について、ユーロ圏全17カ国で批准されるめど が立ち、15日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総 裁会議では、欧州が見直したソブリン債危機への取り組みに米国など 各国の支持が寄せられた。

100円76銭からユーロ出直る

外国為替市場では、4日にユーロ・円相場が一時2001年6月以来 の円高・ユーロ安水準となる100円76銭を付けたが、その後は欧州の 危機回避に向けた包括的な対策への期待感からユーロは反発。17日に は一時1ユーロ=107円68銭と、9月9日以来のユーロ高水準までお よそ7%戻した。

いちよし投資顧問の秋野充成運用部長は、キヤノンについて「ユ ーロのポジションが高い企業なので、ユーロリスクの低下がCDSの 急低下に反映された」と指摘。欧州売上比率が高いイメージも強く、 「ヘッジファンド絡みの取引などで、CDSは実態以上に上昇してい た」と言い、欧州債務問題が金融システム不安に波及するとの懸念が 和らぐ中、「目先はヘッジファンドの手じまいが続き、CDS低下、つ まり信用リスクは和らいでいく」とみている。

ブルームバーグ・データによれば、キヤノンは全売上高の約3分 の1を欧州で上げ、日経平均株価を構成する225銘柄では、欧州売上 比率は英ピルキントンを買収した日本板硝子に次ぎ2番目に高い。

為替修正進めば株価一段高も

一方、キヤノンの株価は、CDS下落幅が約1年半ぶりの大きさ となった10月2週は1%安と軟調だったが、ギリシャのデフォルト (債務不履行)懸念が高まっていた9月15日に付けた年初来安値3270 円からは反発傾向にある。

いちよしの秋野氏は、「CDSに比べ株価の変動が小さいのは、両 市場で流動性が違うため。流動性の高い株の方が、値動きは緩やかに なりがち」と指摘。ただ、欧州情勢や新興国経済が今後少しずつ改善 に向かえば、「為替のユーロ安修正が続き、ユーロ感応度の高いキヤノ ン株は今後ショートカバー(売り方の買い戻し)中心に大きく反発す るだろう」と予測している。

キヤノンが7月25日に発表した1-6月期の決算短信によると、 下期の想定為替レートは対ユーロが115円、対ドルは80円。日本時間 18日午前8時時点では、1ユーロ=105円60銭、1ドル=76円85銭 で取引されている。

タイ洪水で競合ニコンが被害

SMBC日興証券の三浦和晴シニアアナリストは14日付で、キヤ ノン株の投資判断を新規に「1(アウトパフォーム)」とした。複写機 やデジタルカメラの安定成長に加え、同業他社との比較で株主資本利 益率(ROE)が高水準を維持するなど、経営の質の高さを評価。一 方で、「最大のリスクファクターは円高」と指摘している。同証による と、1円の円高による業績影響額は対ドルで101億円、対ユーロで58 億円の営業減益要因という。

また、タイでの洪水被害が拡大する中、クレディ・スイス証券の 吉田優アナリストは、デジタルカメラでキヤノンと競合するニコンが デジタル一眼レフ初中級機の工場で浸水被害を受け、操業を停止して いる点に言及。「状況は依然流動的だが、年末商戦においてキヤノン製 一眼レフのシェア上昇、収益性改善が起こり得る」との見方を示した。

吉田氏によれば、キヤノンが東日本大震災の影響を受けた4-6 月期に、販促費や単価下落の抑制で、ニコンの営業利益は150億円ほ ど押し上げられたという。「今回も同程度のインパクトがあると仮定す れば、10-12月が需要期であることも踏まえると、キヤノンの営業利 益を200億-300億円ほど押し上げる可能性がある」と分析した。

キヤノンは、タイ・アユタヤ県にあるインクジェットプリンター 工場が洪水の影響で6日から生産停止しているのを受け、同国内の別 工場やベトナムの拠点に生産を移管する準備を進めている。一方、同 様に6日から、デジタル一眼レフカメラと交換レンズの製造最大拠点 の現地工場が停止中のニコンは、生産再開のめどが立たない状況だ。

キヤノンでは、今期(2011年12月期)の連結純利益を前期比5.4% 増の2600億円と計画。ブルームバーグ・データにある担当アナリスト 23人の予想中央値は2585億円。キヤノンは今月25 日、1-9月期の 決算発表を予定している。