欧州債務危機との最後の戦い、圧倒的火力の武装が不可欠-社説

欧州は2年に及ぶ債務危機との最 後とみられる戦いに臨もうとしている。欧州連合(EU)は、11月3 -4日の20カ国・地域(G20)首脳会議までに、債務国の財政問題に よる銀行システム崩壊阻止に向けた救済計画の策定を目指している。

欧州が2008年や09年の危機よりもひどい経済・金融の大惨事を 回避するつもりなら、圧倒的な資金力を用意すべきだ。

欧州の指導者が信認を得るためには、これまで成し遂げられなか った3つのことをする必要がある。一部のユーロ圏諸国、特にギリシ ャには債務返済できる余裕があるという幻想をまず捨て去ることから 始めなければならない。また、これらの国がデフォルト(債務不履行) した場合、欧州の銀行にどれだけ損失が出るのか、現実的に計算をす る必要がある。さらに、デフォルトと損失が出るのはこれで最後にな ると市場を納得させるほど大規模な金銭的保証をしなければならない。

完全かつ正直に算定できなければ、状況はさらに悪くなる。ギリ シャのデフォルト回避を何度も試みたことで、同国の債務負担は増加 し、経済的な痛みは強まり、スペイン、イタリア、フランスなど支払 い能力のある国にも不安は広がった。銀行システムの健全性に関する 不確実性はユーロ圏全体をまひさせつつあり、一部のエコノミストの 間では、ユーロ圏はすでにリセッション(景気後退)入りしていると の見方さえ出ているほどだ。

腐敗の阻止

この腐敗を止めるにはどれだけのコストが必要なのだろうか。大 まかな答えを出すため、ブルームバーグの論説委員室は計算を試みた。

最初の重要な質問は、欧州のどの国がデフォルトを必要としてい るかということだ。

ギリシャは群を抜いて最悪の状態にある。現在の金利水準や国際 通貨基金(IMF)の成長見通しを考えると、ギリシャ政府は債務負 担を安定的に維持するためだけでも厳しい緊縮財政を実施する必要が ある。具体的には、ギリシャは無期限に、基礎的財政収支(プライマ リーバランス)の黒字を対国内総生産(GDP)比で5%以上に維持 しなければならない。ポルトガルも市場金利を払うことができず、投 資家の信頼を取り戻すまでに債務を低い水準にするには長い年月が必 要となる。アイルランド、イタリア、スペイン、ベルギー、フランス など他のユーロ圏諸国は、不安によって市場金利が上昇しない限り、 プライマリーバランスの黒字が対GDP比2%未満でも、債務負担を 安定的に維持できる。この黒字は十分に過去の水準の範囲内にあり、 血を流すのはギリシャとポルトガルだけにとどまるということを示唆 している。

債務返済額

次の質問は、支払い不能に陥った国がどれぐらい実際に債務返済 する余裕があるかということだ。プライマリーバランスの黒字を対G DP比1%で持続することができ、欧州の保証が付くためデフォルト 後も妥当な金利で借金できると想定すれば、ギリシャ債は70%の評価 額引き下げが必要となる。債券保有者には額面の30%しか返ってこな いことになる。一方、ポルトガル債に必要な評価額の引き下げは40% となる。

この2カ国のデフォルトで、約3000億ユーロ(約32兆円)相当 のギリシャ債とポルトガル債の価値が失われる。これらの債券の大部 分は、額面全額の価値があるように装っている銀行が保有している。 このため、銀行システムを支えるのに必要な資本について現在出てい る試算は、IMFの試算3000億ユーロを含め、理にかなっているよう に思える。

最後の質問

最後の恐らく最も重要な質問は、銀行の資金増強を行ったり、投 機的な攻撃から支払い可能な国を守ったりするのに、どれぐらい多額 の資金が必要なのかということだ。欧州金融安定ファシリティー(E FSF)と欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏諸国や恐らくIMF の支持を得て、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、スペイン、イ タリア、フランス、ベルギーが発行した全債券を少なくともあと数年、 もしくはユーロ共通債などより恒久的な対策が出るまで保証する必要 がある。ブルームバーグのデータやIMFの別のデータも、これらの 国が15年までに合計で最大約2兆5000億ユーロの資金が必要なこと を示唆している。

誤差を加味すると、全体では3兆ユーロが危機を阻止するために 欧州各国に最低限必要な金額となるだろう。失敗した場合に世界に与 える潜在的な影響を考えると、欧州以外の国がより大きな基金に拠出 するのは国益にかなっている。公的な保証というのは核抑止力のよう なもので、十分に大きければ、使う必要はなくなる。

ただ、金だけがユーロ圏の問題を解決してくれるわけではない。 欧州の指導者は、ユーロを生き残らせるつもりなら、通貨同盟に匹敵 する統一した財政機関の欠如や、銀行の資本規制の不備などの根本的 な問題に対処する政治的意志を持たなければならない。それでも、圧 倒的な資金力を示すことが、欧州が前進する唯一の方法だ。