米ゴールドマン、今年の日本のM&A助言首位へ-野村HD抜く

米ゴールドマン・サックス・グルー プは2011年の日本でのM&A(企業の合併・買収)助言業務で、野村 ホールディングスを抜き、5年ぶりに首位を獲得する見込みだ。世界を 舞台に活躍しようとする日本企業が外資系投資銀行をアドバイザーに 起用するケースが増えている。

ブルームバーグのデータによれば、ゴールドマンは13日現在で、 541億ドル(約4兆1600億円)の日本企業が関連する買収案件で助言業 務を手掛けている。野村は472億ドル。昨年は通年で野村が476億ドル で首位。米JPモルガン・チェースが270億ドルで2位、ゴールドマン は100億ドルで7位だった。

今年のアドバイザリー・ランキングでは、上位4社中3社を外国銀 行が占める見込みだ。3月の東日本大震災の影響や円高に伴い事業基盤 が弱まる中、日本企業同士が合併を模索する動きが広がり、日本のM& Aは過去最高規模となる見通しだ。ゴールドマンは3大案件のうち2件 でフィナンシャル・アドバイザー(FA)を務めトップに立っている。

日本でM&Aアドバイザリーのブティックを営むカチタスの平井 宏治社長は、「日本企業が今後海外に出ていくための言わばスプリング ボードとして国内事業の統合を模索する動きが顕著だ」と分析。「その ため世界でM&Aをやってきた歴史と実績のあるゴールドマンにお願 いすれば間違いないと思うのだろう。ゴールドマンは名前からくる安心 感があり、いわばブランドだ」と述べた。

外国銀行の活躍目立つ

ゴールドマンは、少なくとも過去5年で最大規模となった新日本製 鉄と住友金属工業の経営統合で住友金属側のFAを務めたほか、武田薬 品工業が買収したスイスのナイコメッドの助言業務を行った。また、日 立製作所が米国のウエスタンデジタルにハードディスクドライブ事業 を譲渡した際には日立のアドバイスを担当した。

ドイツ銀行は武田薬品など470億ドル相当の案件を手掛け3位に上 昇している。4位はJPモルガンで、5位はモルガン・スタンレーと三 菱UFJフィナンシャル・グループの合弁である三菱UFJモルガン・ スタンレー証券。一方で国内勢は三井住友フィナンシャルグループが7 位、みずほフィナンシャルグループが8位、大和証券グループ本社は9 位にとどまっている。

ブルームバーグ・データによれば、10月13日までで今年の日本企 業絡みの案件総数は1663件、金額は1412億ドルで、同期間としては過 去最高。日本企業同士の合併が主に牽引した。

「ALL JAPAN」

カチタスの平井氏は今年の日本のM&Aの特徴をワールドカップ のサッカーに例える。「日本企業はオール・ジャパンを作ろうとしてい る。これまでは国内のチーム同士で戦ってきたが、これからの敵はAL L KOREAであり、ALL USAだ」。

ゴールドマンの矢野佳彦M&A統括責任者は、ブルームバーグ・ニ ュースの取材に対し、「震災の影響により、取引が滞るかとも思われた が、むしろ経営者の国内市場の将来性に対する懸念や閉塞感がクローズ アップされ、それが取引の増加に現れている」と述べた。また「グロー バル競争で勝ち残るためのM&A」は12年も増加するとみている。

ニューヨークに本社を置くゴールドマンは1974年に東京で業務を 開始した。M&Aで首位になるのは06年以来で、その間は野村が首位 を独占してきた。野村は現在日本企業による海外企業の買収におけるF Aランキングで首位についている。

野村の角田慎介企業情報部長は、「日本企業が新たなビジネスチャ ンスを求めてグローバル展開する動きは、大震災以降さらに加速してい る」と指摘。その上で「日本でこれまで培ってきた見識や経験とグロー バルの広いネットワークを活用してこれからそうした顧客ニーズにこ たえていく」と述べた。

ゴールドマン・サックス

ゴールドマン・サックス証券の持田昌典社長によれば、同社の経営 陣を含め9割以上の従業員が日本人であることが、日本企業を相手にビ ジネスをする上で強みになっているという。持田氏は2年前の慶応義塾 大学の学生向けイベントで「皆さんはゴールドマンを外国企業だと思っ ているかもしれないが、完全に日本に溶け込んだ日本企業でもある」と 強調した。

日本では約1000人の従業員のうち約100人がM&Aなどの投資銀 行業務に携わっている。大震災から3カ月経た6月には小泉純一郎元首 相や銀行首脳ら政治・経済界のリーダーを招へいし、「ジャパン・ライ ジング」と称して震災後の日本経済や企業戦略について議論した。

ゴールドマンの矢野氏は、「日本企業は震災の影響からも概ね回復 し、潤沢なキャッシュとレバレッジの低さを考えるとグローバルな競合 相手より相対的に好位置にある」と分析。「経営者はM&Aを常に最重 要課題として位置づけるようになり、よりダイナミックでスピーディー な決断をしている。10年前に比べると隔世の感がある」と語った。

「ターゲット・リスト」

来年10月の経営統合で合意した新日鉄と住友金属は、「総合力世界 ナンバー1の鉄鋼メーカー」を目指すとしている。住友金属はゴールド マンのほか大和証G、ドイツ銀、三井住友をFAに起用。一方、新日鉄 はバンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、みずほ、三菱UFJモルガ ン・スタンレーから助言を受けた。

新日鉄の広報センター鈴木聖人マネジャーは、「合併比率の公正性 をより担保するため複数のアドバイザーを起用した」と述べ、グローバ ルに事業展開している外資系をその中に選んだ理由についてはコメン トを控えた。住友金属の広報担当者も言及を避けた。

ゴールドマンはこのほか、三井住友FGによる消費者金融大手プロ ミスの完全子会社化と第三者割当増資引き受け(約2000億円)や、み ずほFGによるベトコンバンクの株式15%(約435億円)取得案件でも アドバイザーを務めた。

三菱UFJモルガン・Sでアドバイザリー業務を統括する藤田健二 氏は日本企業について「グローバルに出ていかない限り成長できない」 と述べた。その上で経営陣は、「買収意欲が高く、ディスカッションを もつことに積極的で頻繁にターゲット・リストの提供を求めてくる」と いう。