ベルギー・フランス系銀行のデク シアがストレステスト(健全性審査)に余裕で合格したと欧州銀行監 督機構(EBA)が明らかにしたのはわずか3カ月弱前。7月15日の デクシアの発表文には「2011年の欧州連合(EU)ストレステストの 結果:デクシアは増資の必要なし」という見出しが掲げられていた。

健全性のお墨付きを得てから86日後の先週末、デクシアは破綻回 避に向け、政府の救済を受け入れた。誰も驚く人はいなかったし、驚 く必要もなかった。

1年前にアイルランド銀行とアライド・アイリッシュ銀行が合格 直後に崩壊していることからもわかるように、ストレステストは茶番 にすぎない。今回も一握りのどうでもいい銀行が不合格になるようル ールはねじ曲げられた。注意を払っていた人なら誰でもわかっていた ことだ。

それでもEUの銀行監督当局であるEBAは、茶番を続けた。昨 年と同様、どこかの大手銀行が合格直後に崩壊し、関係者全員が恥を かくことになるのは恐らくわかっているはずだ。だからこそ「なぜ」 という重大な疑問が生じてくる。

なぜ、誇りある規制当局者がこのような自らの名声を踏みにじる ような自殺行為に参画するのか。問題は広範囲に及ぶ腐敗なのか、そ れとも愚行なのか。恐らく両方だろう。EBAと比べると米国の規制 当局さえ良く見えてくるぐらいだから、やろう思ってもなかなかでき ることではない。

貸借対照表

EU21カ国の銀行90行を対象とするストレステストで使われた、 デクシアの昨年末時点の貸借対照表を分析してみよう。デクシアの有 形普通株主資本は67億ユーロ(約7100億円)、有形資産は5645億ユ ーロだった(どちらの数字にものれん代など無形資産は含まれていな い)。これに基づくと自己資本比率は1.18%となり、デクシアは将来 の損失を吸収できる有形自己資本がほとんどなかったということにな る。

だが、デクシアが公表した自己資本比率は12.1%だった。これは、 EBAが狭義の中核的自己資本(コアTier1)と定義付ける同行 の170億ユーロの資本などに基づいている。

デクシアは、大部分の資産や、ギリシャ国債などの不良資産の何 十億ユーロにも及ぶ累積損失を除外することによって、この比率を算 出した。比率の分母が小さくなり分子が大きくなった結果、デクシア は見かけ上は欧州で最も安全な銀行の一つになった。

「悪いシナリオ」

デクシアの算定を基準にして、EBAは「悪いシナリオ」の下で は、2012年のデクシアのコアTier1比率は10.4 %に低下すると いう寛大な試算を示した。

ここで得られた教訓は、欧州かそうでない地域か、ストレスの有 る無しなどに関わらず、規制当局の資本関連の指標は全く信用できな いということだ(シティグループは08年に2度目の米政府の救済を受 けた時、「十分な資本がある」と分類されていた)。この教訓を世界は とうの昔に学んだはずだが、今でも学び直している。

ある意味、これだけ大失敗を犯したことで、EBAは人の役に立 てたのかもしれない。一つの明確な評価基準ができたため、次に懸念 すべき欧州の銀行を見極めるには、自己資本比率がデクシアと同じぐ らいかどうかを調べればよくなった。

例えば、ブルームバーグのデータによると、今年のストレステス トに合格した欧州銀行のうち、昨年末時点のコアTier1比率が 10%以上、有形普通株主資本が2%未満だった銀行は4行だった。そ の4行とは、フランスのクレディ・アグリコル、ドイツのコメルツ 銀行、ランデスバンク・ベルリン、ドイツ銀行だった。

コアTier1比率1位

もっと大きなサンプルが欲しければ、ここをクリックし、イタリ アの銀行インテサ・サンパオロが今月6日(デクシアへの政府の介入 が間近だとのニュースが伝わった日の翌日)の投資家会議で示したチ ャートを見てみるとよい。チャートはストレステストの結果を他の20 行と比較したものだ。インテサは4位という成績を声高に宣伝し、「悪 いシナリオの下ではコアTier1比率は上位に入る」と強調した。 どこが1位になったのかというと、ほかでもないデクシアだった。他 の欧州の銀行も危なくなったら、少なくとも警告してくれたことに対 してインテサに感謝しなければならない。

結論を言えば、欧州の指導者が域内銀行への信頼をさらに損ない たいと思っているなら、過去何年もやり続けてきたことをそのまま続 ければいい。過去2回のストレステストと同じような茶番をあと何回 か実施すれば、世界金融危機はあっという間に本格的に息を吹き返す だろう。デクシアの解体は序章にすぎない。 (ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニ ストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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