行天元財務官:中国は米の対中制裁法案でも人民元政策を変えない

国際通貨研究所の行天豊雄理事 長(元財務官)は13日午後、都内で講演し、米上院が可決した人民元 をめぐる対中制裁法案に関連し、中国は人民元政策を変えないとの見解 を示した。また、ドルは今後も基軸通貨であり続け、国際通貨体制の改 革論議は20カ国・地域(G20)の優先課題にはならないとも語った。

行天氏(80)は、中国は米国やドルの支配的な役割に「強い不満」 を持っており「国際金融の分野でも一極支配は認めない」というのが基 本的な姿勢だと指摘。基軸通貨が米国の通貨でもあるため、米金融政策 が為替・商品相場などを左右する結果、他国経済は「被害者」にされて いるとの認識だと説明した。

しかし、中国は人民元をドルと並ぶ世界の基軸通貨に育てる長期的 目標を持ちつつも、当面の問題には「徹底した現実主義」で臨んでいる と指摘。ドル基軸体制が「恐らく数十年間」続くと予測し、輸出競争力 の維持などの国益追求に利用すると分析した。このため、元売り介入に 伴う外貨準備の増加も甘受し「米国がどれだけ批判しても、人民元を政 府の管理下に置く方針は変えない」との見解を示した。

米上院は11日、元の過小評価を容認する中国への制裁を狙った法 案を可決した。中国は同法案を批判し、9月の貿易黒字が5月以来の低 水準になったと発表。税関当局は13日、元相場の上昇加速が輸出競争 力の低下を招いていると主張した。

緩慢な元高・ドル安

中国は2005年7月、人民元相場の対ドル連動(ペッグ)制を廃止 し、緩やかな元高の容認に転じた。今週11日には一時1ドル=

6.3375元と、公定・市場レートを一本化した1993年末以来の高値を 記録。ただ、対ドルでの上昇率は約6年3カ月で23%程度にとどまり、 金融危機による景気低迷と雇用悪化に苦しむオバマ米大統領やガイトナ ー米財務長官、米議員らを苛立たせている。

行天氏は、米国が1971年に金とドルの兌換を停止した「ニクソ ン・ショック」や、日米英独仏が米財政・経常赤字の是正を目指してド ル安・円高を演出した85年の「プラザ合意」、過度なドル安への歯止 めを狙った87年の「ルーブル合意」など、円相場が長期的に上昇する 中で国際通貨体制の改革・安定化に従事した経験を持つ。08年11月 の金融サミット(首脳会議)の際は麻生太郎首相の特使を務めた。

20カ国・地域(G20)は14、15日にパリで財務相・中央銀行総 裁会議を開く。今年の議長国フランスは、人民元を国際通貨基金(IM F)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に組み入れるべきとの考え だ。SDRはドルとユーロ、ポンド、円の4通貨で構成されている。

しかし、行天氏はG20で国際通貨体制は「主要なテーマにする必 要はないし、そうならない」と述べた。金融市場が緊張に見舞われる場 面ほどドル需要が高まるなど、現状は「金融危機だが、ドル危機ではな い」と指摘。米国はなお「最も総合的な国力」を持っており、ドルに替 わる基軸通貨は「全く存在しない」と強調した。

日本政府の為替政策については、円相場の「安定性と予見可能性を 国際的な話し合いを通じて出来るだけ高める」ことが重要だと語った。