トヨタ:円高ダメージ、震災超えも-今期の利益影響額で上回る可能性

東日本大震災の影響を乗り越えて 生産正常化にこぎつけたトヨタ自動車に、円高というもう一つの壁が 立ちはだかっている。為替変動の影響は目に見えないが、現状の円高 水準が続けば、トヨタの業績への影響は東日本一帯に大きな被害をも たらした大震災を上回る可能性がある。

為替相場は4-9月平均で1ドル=79円62銭と前年同期から10 円近い円高となり、同様に1ユーロ=113円58銭と50銭近い円高。 トヨタは6月10日、円高が今期(2012年3月期)営業利益で1000億 円の減益要因とした。当時は1ドル=80円程度だったが、7月には70 円台に突入した。トヨタは8月2日、円高による今期の減益要因とし て、さらに600億円を追加して計1600億円と発表した。

トヨタは通期営業利益ベースの為替感応度について、1円で対ド ル340億円、対ユーロ60億円とみている。今期業績予想の前提為替レ ートは1ドル=80円、1ユーロ=116円。特に9月以降はユーロに対 して一段と円高が進行し、今後の為替水準によってはトヨタの今期営 業利益への円高の影響額1600億円がさらに膨らむ可能性がある。

クレディ・スイス証券の高橋一生アナリストは、今期1ドル=72 -73円程度まで円高が進行しないという前提で、トヨタの為替影響額 が「2500億-2700億円だろう」とコメントした。一方、震災影響につ いては「生産が遅れていても需要さえあればそれほど問題ないはずだ」 と述べ、業績への直接の影響は円高ほど大きくないとの見方を示した。

3月11日の大震災では部品メーカーの供給網が寸断し、トヨタは 国内外の生産拠点で操業停止や減産を実施した。震災による営業利益 への影響額は前期が1100億円だった。小嶋尚樹経理部長は8月2日の 決算会見で、今期の震災影響について、従来は45万台程度で約3600 億円としていたが、想定より回復が早まったことなどから15万台程度 で約1600億円にとどまるとの見通しを示した。

ダイハツ工業や日野自動車を含むトヨタグループの昨年の世界生 産約856万台のうち、国内生産の占める割合は約47%。国内メーカー では約7割のマツダに次いで高く、3割弱の日産自動車やホンダなど のライバルと比べて為替変動の影響がより大きい。

独立系調査会社ティー・アイ・ダヴリュ(TIW)の高田悟アナ リストは、円高のトヨタの営業利益への影響について「今の想定レー トと実際の円相場を考えると通期で3500億円ほどになってもおかし くない」と述べ、震災影響を大幅に上回る可能性があると指摘する。 会社側の想定レートについても、対ドルで「80円では続けられない。 どこかで見直す必要があるだろう」と話した。

一方、トヨタは円高に対してただ手をこまぬいているだけではな く、対策も進めている。8月に国内の主要な部品サプライヤーに対し、 納入価格の大幅な値下げを求め、一部の部品メーカーは従来の半額程 度の価格を提示されたという。

トヨタはコスト構造の改善により、円相場が1ドル=75円まで上 昇した場合でも利益を確保する態勢を整えると、新美篤志副社長の話 として米紙ウォールストリート・ジャーナル(オンライン版)の報じ た内容を広報担当の橋本史織氏が確認している。

TIWの高田氏は、円高傾向が続く中で、円高と労働コストの比 重を考えると、国内生産の効率化を進める必要があると指摘。その上 で、「トヨタは日本の生産を極端に減らすことはできないが、海外でも 生産を引き上げ、全体の生産ボリュームを上げていくのでは」とみて おり、中長期的に海外生産比率を高めていくのではないかと話した。

トヨタの最近の株価は7月8日に3480円まで上昇した後、下落傾 向となり、10月5日には2511円まで下落した。