トリシェ総裁、講演原稿捨てアドリブで熱弁-ユーロを疑うのは間違い

【記者:Simon Kennedy】

10月10日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のトリ シェ総裁は9月23日、ワシントンのホテルで聴衆の前に立った。ス ピーチのために準備した原稿をパラパラとめくった総裁は、原稿を脇 に置いた。

トリシェ総裁がアドリブで熱弁を振るったのは、サマーズ元米財 務長官や債券ファンド大手、米パシフィック・インベストメント・マ ネジメント(PIMCO)のモハメド・エラリアン最高経営責任者 (CEO)らによる先の討論があまりにも暗い景気見通しを示したた めだ。

ブレトンウッズ委員会主催の会議でトリシェ総裁は「ユーロ圏を 見れば、全体像は考えられているものと全く異なる」と語った。

ECB総裁としての最後の日々の業務の一部として、米国のエコ ノミストや投資家の向こうを張るトリシェ総裁の姿がよく見られる。 同総裁は6月半ば以降、米国での3回の講演でユーロ圏には共通通貨 ユーロを脅かす瑕疵(かし)があるとの声に反論してきた。10月31 日で任期満了を迎える総裁は、ユーロの計画段階からこれにかかわり 共通通貨を守り育ててきた。

トリシェ総裁は、ユーロ圏の強さおよび米国との類似性がしばし ば「見落とされている」と指摘し、ユーロ圏の金融・財政政策が誤解 されているとの見解を示した。

懐疑的な見方

通貨統合に懐疑的な声はユーロが1999年に誕生する前からあっ た。米ハーバード大学のマーティン・フェルドシュタイン教授(経済 学)は1998年の論文で、多様な経済を単一の金融政策の下に置くこ とはできないと指摘していた。今年9月2日のブルームバーグテレビ ジョンのインタビューでは、ユーロは失敗であることが判明したと言 い切った。

エラリアン氏はワシントンでの会議で、危機は欧州の「コア(中 核)」に及んだとし、ユーロ圏の少なくとも1国が債務を再編するだ ろうとの見方を示した。欧州は財政統合かユーロ圏の縮小のいずれか を選ばなければならないだろうとも述べた。ユーロの成功には重大な 経済の難題を克服しなければならないと1997年に指摘していたサマ ーズ氏は、政策当局者らの「小出しの漸進主義」を批判した。

ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏もルービニ・ グローバル・エコノミクス会長のヌリエル・ルービニ氏もユーロ懐疑 派だ。

トリシェ総裁はこれら悲観論者たちの大合唱に立ち向かう。 1999年以来の市民1人当たりの域内総生産(GDP)の伸びやその 間に創出された雇用、今年の財政赤字の対GDP比予想などを挙げ、 米国に劣るところはないことを示すとともに、ユーロ圏17カ国と米 国の14の大都市圏を比較したエコノミストの研究で、ユーロ圏が多 様過ぎるとの議論に対抗した。

総裁が力説するまでもなく、ユーロ懐疑派は共通通貨を守る政治 的意思を過小評価しているかもしれない。ドイツのメルケル首相は9 日、フランスのサルコジ大統領との会談後の共同記者会見で、両国は 「全力をもって」ユーロを守ると言明した。

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