【日本株週間展望】欧州の霧深く下値不安残る、円高定着で業績懸念

10月2週(11-14日)の日本株相 場は、引き続き下値不安がくすぶる。投資家の最大関心事である欧州 財政問題は、目先不透明感が晴れそうになく、世界的な景気減速や為 替の円高定着が警戒されるところだ。外需依存度の高い企業を中心に 業績の下方修正も見込まれ、株式への資金回帰の道のりはなお険しい。

「目先の相場は上げる理由がない」と話すメッツラー・アセット・ マネジメントの小林光之社長は、これまで相当下げてきたため、短期 のリバウンドはあり得るものの、「ギリシャを中心とした欧州の債務危 機が落ち着かない限り、本格反発は見込み難い」と予想している。

10月1週の日経平均株価は、2週ぶりに反落。2日にギリシャ政 府が2011年と12年の従来の財政赤字削減目標を達成できないと発表、 さらにイタリア国債の格下げも市場心理を冷やした。欧州債務問題へ の過度の不安が和らいだ週後半に戻りを試したが、日経平均は週間で

1.1%安の8605円で終えた。

欧州中央銀行(ECB)は6日の定例理事会で、域内ソブリン債 危機で動揺する市場を支えるため、カバード債の購入と市中銀行への 期間1年以上の融資の再開を決定。イングランド銀行(英中央銀行) も同日、資産買い取りプログラムの規模拡大を決め、銀行への資金供 給強化で足並みをそろえた。

また、欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のバローゾ 委員長は、銀行の資本強化に向けた協調行動を同委が加盟国に提案し ていることを明らかにした。欧州当局による債務危機の封じ込めが前 進しているとして6日の欧米市場ではS&P500種株価指数が3日続 伸、ストックス欧州600指数も続伸し、日本株にも好影響を与えた。

LIBOR高水準、実体経済に悪影響も

しかし、欧州では銀行が他行の破綻を警戒し、銀行間市場で資金 を出すことに依然後ろ向きだ。ドル建ての3カ月物ロンドン銀行間取 引金利(LIBOR)は、7月下旬には0.25%程度で落ち着いていた が、8月以降に急上昇。10月6日時点では0.388%と、約1年2カ月 ぶりの高水準だ。カウンターパーティリスクの増大が、銀行のドル調 達コストであるLIBORの上昇に反映されている。

域内銀行が互いの資金貸し付けに慎重な状況が長引けば、実体経 済にも悪影響が及ぶ。EU統計局が5日発表した8月のユーロ圏小売 売上高指数は、前月比0.3%低下した。りそな銀行アセットマネジメ ント部の黒瀬浩一チーフ・ストラテジストは、第2のリーマン・ショ ックを回避できるかどうかの瀬戸際で、「欧州金融機関はすでに貸し渋 りに動いており、危機回避の成否は時間との勝負だ」と話す。

ゴールドマン・サックス証券は3日、欧州をはじめとするグロー バル経済の失速を受け、12年の日本経済の成長率見通しを従来のプラ ス2.6%からプラス2.2%へ下方修正。4日には、日本の企業収益予想 とTOPIXの目標水準も引き下げた。

同証ストラテジストのキャシー松井氏は、「現在のリスク・シナリ オは世界経済の景気後退局面入りであり、その場合13年3月期EPS (1株利益)は前年比19%減となり、TOPIXはバブル崩壊後の安 値を更新する可能性がある」と指摘する。TOPIXのバブル崩壊後 の終値ベースの安値は、2009年3月12日の700.93 ポイント(取引時 間中では同日の698.46)。これに対し、7日終値は741.55だった。

外国為替市場では、4日にユーロ・円相場が一時2001年6月以来 の円高・ユーロ安水準となる100円76銭を付けた。その後は円高進行 がひとまず止まっているが、7日午後は1ユーロ=102円80-90銭台 での推移と、110円-115円近辺に集中する主要輸出企業の想定レート を上回る円高水準にある。円は対ドルでも、足元で76円台と8月19 日 の戦後最高値75円95銭が視野に入っている。

円高定着は海外勢売り誘う

メッツラーの小林氏によれば、世界で分散投資する投資家にとっ ては円高が進んだことで、「ドルやユーロで換算した日本株のパフォー マンスは相対的に良好なため、日本株は換金売りの対象になりやすい」 という。実際、円高定着を背景に海外投資家の間で日本株を外す動き は続いている。東京証券取引所が6日に公表したデータによると、海 外勢は9月4週まで10週連続で売り越し、この間の売越額は1兆9000 億円を超えた。連続売り越し記録としては、約13年ぶりの長さだ。

ちばぎんアセットマネジメントの斉藤秀一運用部長は、10月下旬 からの企業の4-9月期決算発表シーズンが近づく中、「足元で下方修 正が目立つ」点に懸念を示している。直近では、コンテナ船事業で運 賃水準の修復が想定通り進まず、円高も響くとして商船三井と川崎汽 船が業績予想を大幅減額。JFEホールディングス、住友金属工業は 7-9月期に800億円前後の有価証券評価損を計上する、と発表した。

斉藤氏によると、7月辺りまでは東日本大震災で落ち込んだ企業 業績が下期からV字回復するとの見方が多かったが、欧州不安や円高 を受け「今はその期待がしぼんでしまっている」と言う。

米国で7-9月決算始まる、G20会議

第2週に注視される材料は、米国で7-9月(第3四半期)決算 の発表が始まり、アルミ生産最大手のアルコアが11日、金融大手のJ Pモルガン・チェースは13日を予定。欧州では12日に8月のユーロ 圏鉱工業生産指数、13日にイタリア国債入札、中国では14日に9月 の消費者物価の発表を控える。このほか、14-15日にパリで20カ国・ 地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。

国内では11日に9月の景気ウォッチャー調査、12日に8月の機 械受注が発表予定。また、11日にはJ.フロント リテイリングが3- 8月期、12日はファーストリテイリングが前期(11年8月期)の決算 を開示する。14日は、株価指数オプション10月限の特別清算値(S Q)算出日だ。

【市場関係者の見方】 ●SMBC日興証券・国際市場分析部の西尾浩一郎次長

決算シーズンが接近し、日経平均は8500-8700円を中心レンジに 動きづらい週になろう。輸出企業が通期の為替前提を円高方向に見直 す際、コストカットで対応できるのかどうかなど、下期の利益水準の 予想がつきにくい。市場では、会社側に先行してアナリストが業績予 想を下方修正してくるとみており、不透明感は強い。ただ、下半期の 赤字を織り込むには行き過ぎ感があり、株価純資産倍率(PBR)1 倍水準の日経平均8500円以下ではすぐに買い戻されよう。

●SBI証券投資調査部の鈴木英之部長

底値固めの展開になる。米国の景気減速は下限が見えつつある。 雇用指標は大きくは下振れておらず、住宅価格も足元で下げ止まって いる。欧州では、金融安定基金(EFSF)の機能拡充について17 カ国中、残る2カ国のマルタとスロバキアの議会承認が予定され、無 事承認されれば、いったん安心感が広がろう。ただ国内では、4-9 月決算発表に向け予想される輸出関連企業の業績下方修正を警戒して おり、まだまだ国内外で好悪材料が拮抗(きっこう)すると見る。

--取材協力:長谷川敏郎、岩本正明 Editor:Shintaro Inkyo

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