新興国通貨はさらに下落する可能性-欧州債務危機が成長の足かせに

少なくとも2008年以降で最大の 下落を見せた新興国通貨は、さらに下げる可能性がある。新興国経 済はかつての世界の景気減速には抵抗力を示したが、今回の欧州債 務危機で打撃を受けている。

国際決済銀行(BIS)の今年3月までのデータによると、欧 州の途上国への貸し出しは3兆4000億ドル(約260兆円)と、米国 と日本による貸し出し合計の3倍近くに上る。このため、途上国は 08年の世界信用危機よりも今回の欧州債務危機の影響をうけやす いと、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)はみている。

国際通貨基金(IMF)は先月、欧州危機の深刻化で流動性が 停滞し、世界経済がリセッション(景気後退)に陥る恐れがあると して、新興国の成長率見通しを引き下げた。ブルームバーグのデー タによると、オプションのトレーダーはブラジル・レアルや南アフ リカ・ランドなどの通貨に対し、一段と弱気になっている。

RBCキャピタル・マーケッツの新興市場調査グローバル責任 者、ニック・シャミー氏(トロント在勤)は9月27日、「問題は西 欧や米国に集中しているため、これらの国の資産価格が最初に動い たが、今は新興国にも影響が広がっている」と指摘。「経済見通しの 点で、欧州と米国で長期的に状況が沈静化しない限り、新興国資産 への売り圧力は続くだろう」と述べた。

資金流出

EPFRグローバルデータのデータに基づいたINGグループ の9月29日のリポートによると、9月28日までの週の新興国の債 券ファンドからの資金流出は32億ドルと、05年以降で最大となっ た。これは全資産の2.3%を占める。

ブラジル・レアルやハンガリー・フォリント、ポーランド・ズ ロティなどの途上国の通貨は先月、平均12%以上下落した。ブルー ムバーグとJPモルガン・チェースのデータによると、中南米6カ 国の為替指数は11%安と、過去2年間の上昇が帳消しになった。ア ジアの主要通貨は4.2%下落し、1997年のアジア金融危機以来最大 の下げを記録した。

UBSの新興市場債券通貨戦略のグローバル責任者、バーヌ・ バウェジャ氏(ロンドン在勤)は9月27日の電話インタビューで「売 りはさらに続く」と述べ、「先進国が悪い状態にある時、デカップリ ング(非連動)は起こらない」との見方を示した。

ブラジルやトルコの中央銀行は利上げせず、輸出減速の中で成 長を下支えするため政策金利を引き下げた。これにより両国の通貨 の投資魅力は低下。チリやメキシコなどの政策当局者も、世界経済 がさらに減速すれば追随する用意があると示唆している。