真のシャンパン通なら高級品よりこの1本-出色のノン・ビンテージ

幾つものグラスに注がれたシャン パンが優しい泡を立てている。シャンパンに愛着を持つ4人のテイス ターは、1番のグラスに満足げな笑みを浮かべた。ただ、6番につい てはちょっとした論争が起きた。ジョシュ・グリーンさんは「クリー ムブリュレのように人を引き付ける味わいがある」として星3つを与 えたが、ラジ・バイジャさんは「果実の甘みを強調し過ぎたピンクレ モネードのようだ」と手厳しい評価で星はゼロ。シナモンと花のほの かな香りと表現したロビン・ケリー・オコナーさんと、クリーミーな 味わいを感じた私は共に星2つを与えた。

7月下旬の午後のニューヨーク。私たち4人は「ブルームバー グ・マーケッツ」が今回初めて開いたテイスティング会に臨んでいる。 外の気温はセ氏38度だが、フランスのシャンパーニュ地方の小規模な メゾン(生産者)が造るシャンパン15品をテイスティングするここ会 員制ペンクラブ内の一室は、エアコンが効いていて快適だ。開始から 数時間後に私は全員のスコアを集計した。2つのシャンパンは明らか に群を抜き、最高のバリューを感じたものが3位だ。ブルームバーグ・ マーケッツ誌11月号が伝えた。

小規模メゾンが自家農園で育てたブドウから造られるシャンパン は「ファーマー・フィズ」と呼ばれる。一流フレンチレストラン「ダ ニエル」の主任ソムリエで、シャンパンを熟知するバイジャさん(31) は「どれ一つとして同じものはない。本当に幅広い生産者のスタイル が表現されている」と話す。ダニエルでは毎週、ディナー時にグラス 約350杯分のシャンパンが出る。

際立つ個性

競売会社クリスティーズ(ニューヨーク)で米州のワイン責任者 を務めるオコナーさんは「全く型にはまっていない。スタイルが明快 で、駄作がない」と評価する。

ワインの専門家ではないグリーンさん(41)は「有名ブランドの 大手より質感や奥行き、ミネラル感がある」と表現した。ラバン・キ ャピタル・マネジメントの創業者である彼は1990年代半ばにワインの 楽しみ方を覚えた。ロンドンのメリルリンチでユーロ債トレーダーを していた当時、顧客とのランチはいつも決まってシャンパンから始ま った。

年間数百万のボトルを生産するモエ・エ・シャンドンのような大 手有名メーカーに比べ、シャンパーニュ地方に数千あるメゾンの規模 は小さく、生産が1万本を超えることはほとんどない。この地方の300 余りの村の土壌は驚くほど多様性に富んでいる上、ここで生産される シャンパンは1つの村または隣接する幾つかの村で育成されたブドウ だけを使うため、個性が一段と際立つのだ。ブレンドされてもこの個 性が薄まることはない。一方、自家農園をあまり持たない大手ブラン ドは、百を超す農園から買い付けたブドウをブレンドして独自のスタ イルに仕立てる。

きめ細かな泡立ち

規模が最も小さいメゾンでさえも、ノン・ビンテージのブリュか らロゼ、高級なキュベまで数種類のボトルをそろえている。価格の上 限を75ドル(約5700円)としたため、私たちがテイスティングした シャンパンのほとんどは下層ランクかつベーシックで、ノン・ビンテ ージのブリュだ。幸いにも現在出回るボトルのほとんどは、当たり年 だった2008年産のブドウの割合が大きい。

テイスティングには細身で優雅なグラスよりも、大きくてチュー リップの形をしたボルドースタイルのグラスを選んだ。この方がはっ きりと香りが伝わってくるからだ。まず初めにグラスの泡立ちを観察 する。きめ細やかで数が多く、余韻が長続きするものが理想だ。私た ちはそれぞれの印象を確かめ合うため、「さわやかなレモンメレンゲ」 とか「焼きたてのシナモンロール」、「焦げたキャラメル」、「グレ ーズドハム」などとその特徴を表現した。

トレンドは超辛口

強い酸味とのバランスを考えてシャンパンにはよく砂糖が加えら れるが、小規模メゾンの最新のトレンドは超辛口で添加物ゼロのタイ プだ。味のキレとシャープさが強過ぎると感じる人がいるかもしれな い。

私たちが高く評価したシャンパンは他にはない特徴がある。人気 急上昇のセドリック・ブシャールは、これまでの常識では考えられな い単一ブドウ畑、単一品種、単一ビンテージのシャンパンを10年前に 造り始めた。私たちがテイスティングした一品は、コート・デバール 地区の小さな畑で育った08年産のピノ・ノワールだけを使っている。 もちろん添加物は入ってない。

ヴィルマール・エ・シエは数世代にわたる家族経営のメゾンだ。 モンターニュ・ドランス地区で隣接する2つの村の自家農園で育てた ブドウから芳醇で濃厚なシャルドネ中心のキュベをこの20年造り続け、 カルトの地位を得た。3種のビンテージがブレンドされたグラン・セ リエ・ブリュ・プルミエ・クリュは約20%がピノ・ノアールで、大き なオーク樽で熟成された。

抜群の相性

テイスティングでは幾つか喜べない驚きもあった。05年物オブ リ・ル・ノンブル・ドール・サブレ・ブラン・ド・ブラン(72ドル) は濡れた犬のような香りで、コルク栓の臭いがはっきり残っていた。 シャルドネだけを使うラルマンディ・ベルニエ・テール・ド・ヴェル テュはいつも大好きなシャンパンだが、私たちがテイスティングした ボトルは気が抜けていて、高熱の倉庫内に放置されていたかのような 味だった。

グリーンさんは、顧客とのランチやディナーは今でもシャンパン から始めるが、ドン・ペリニヨンのような高価で派手なものは避けて いる。「今の顧客は価値と味にこだわっている。金をかけたいとは思 っていないので、こうしたメゾンのシャンパンはまさにうってつけだ」 とほほ笑んだ。

(マッコイ氏はブルームバーグ・ニュース向けに食や酒などにつ いて執筆しています。この記事の内容は同氏自身の見解です)

---テイスティングの評価(価格)

星3つ:Cedric Bouchard Inflorescence Blanc de Noirs Val Vilaine Brut($55) Vilmart & Cie. Grand Cellier Brut Premier Cru ($72)

星2つ半: Laherte Freres Brut Tradition ($39) Jose Dhondt Blanc de Blancs Brut ($52) Egly-Ouriet Brut Tradition Grand Cru ($68)

星2つ: Agrapart & Fils Les 7 Crus Brut Blanc de Blancs ($39) Margaine Cuvee Traditionelle Brut Premier Cru ($43) Camille Saves Brut Carte Blanche ($50) Pierre Gimonnet & Fils Selection Belles Annees Brut Premier Cru Blanc de Blancs ($39) Tarlant Zero Brut Nature ($45)

星1つ半: Chartogne-Taillet Sainte-Anne Brut ($40) H. Billiot Fils Brut Reserve Grand Cru ($59) Larmandier-Bernier Terre de Vertus Premier Cru ($60)

星1つ: Thierry Massin Selection Brut ($47) ---

参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 関根裕之 Hiroyuki Sekine +81-3-3201-7850 hsekine@bloomberg.net Editor:Masami Kakuta、Yoshito Okubo 記事に関する記者への問い合わせ先: Columnist Elin McCoy is based in New York. elinmccoy@gmail.com

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