【クレジット市場】電力5社の融資、起債凍結で4兆円に-原発リスク

東京電力など主要電力5社への東日 本大震災後1年間の銀行融資額が約4兆円の大台に達する見通しだ。 「原発リスク」で発行が凍結している社債の代替手段となっているため だ。各社は既発債の償還資金を銀行融資で賄うが、この状態が続けば資 金繰り悪化が信用力低下を招く悪循環につながる懸念もある。

東北電力は9月末に日本政策投資銀行から500億円の15年ローンを 年利1.4%で借り入れた。これを基準金利に対する上乗せ幅(スプレッ ド)に換算すると45.5bp(1bp=0.01%)で、6日時点で50.2bp の10年社債より低い金利で調達したことになる。半面、原発リスクを嫌 う社債市場からの調達は難しくなっている。

電力5社が2010年度に起債した総額は7650億円。今年度は関電と九 電が6月に起債を検討したが、高スプレッドを避けるため断念した。ス タンダード&プアーズの柴田宏樹上席アナリストは補償問題などが解決 しないと「来期も銀行からの借り入れが中心」になり、問題が長期化す れば格付けにネガティブな影響が出ると分析する。

ブルームバーグ・ニュースのまとめによると、震災後1年に5社が 融資で確保する金額は約3兆9950億円に達する見通しだ。すでに東電が 1兆9650億円、東北電が4800億円、中部電力が4500億円、九州電力が 1045億円、関西電力が500億円の契約を締結。九電や東北電が追加調達す るほか、関電もその方向で検討している。

原発事故で高コスト体質に

銀行が電力会社に低金利で融資している背景には、景気低迷による 歴史的なカネ余りがある。3月末現在の東電向け貸出残高はメーンバン クの三井住友銀行が9590億円、みずほコーポレート銀行が6880億円、三 菱東京UFJ銀と三菱UFJ信託銀が計6918億円。銀行は社債投資家が 敬遠したリスクを背負っていることになる。

一方、社債市場では信用リスクが顕著に反映されている。原発事故 前まで国債利回り比10bp前後だった電力各社のスプレッドは現在30- 50bp前後に跳ね上がっている。BNPパリバ証券クレジット調査部の 野川久芳氏は、無理な発行による高スプレッドの定着などを懸念して各 社は社債での調達に二の足を踏んでいるとみている。

原発事故の影響は電力会社に高コスト体質となって現れている。火 力発電用燃料費の増加などが収益を圧迫し、4-9月の純利益は関電が 前年同期比69%減の240億円、九電は160億円の赤字(前年同期は218億 円の黒字)になる見通しだ。定期点検中で停止している原発の再稼働な どが遅れれば、さらに高コスト体質になる可能性がある。

みずほ投信投資顧問の中村博債券運用部長は、「電力会社を取り巻 く環境は極めて厳しく、将来的な収益構造は明らかに変わらざるを得な い。そのときのスプレッドは今の段階で誰も答えられないと思う」と指 摘。これまでの安定した収益体質からリスクを抱える事態に至ったこと が投資家に敬遠され、起債を阻んでいるとの見方を示した。

CDS急上昇で悪循環

東電の経営状態を調べる第三者委員会の報告書によると、電力料金 の値上げがなく、定期検査などで停止した原発がすべて運転再開できな かった場合は8兆6000億円の資金不足に陥るとの試算を示した。これを 受け、社債市場では原発保有電力会社の経営に対する不安から、各社の 信用リスクが高まっている。

電力各社の社債保証コストは急上昇。ブルームバーグのデータによ ると、東京時間5日の東電の5年物CDSの気配値終値は1032bpと目 立って高い水準で推移。関電は同364bp、中部電は339bp、九電は 378bp、東北電は220.5bpと、それぞれ過去最高を更新した。信用力 の低下が社債発行再開を阻む悪循環となっている。

こうした中、今年度中に5社で満期を迎える社債は合計1兆1200億 円。1200億円分の社債が満期の東北電広報担当の中津山真澄氏は、「今 後は他電力会社の社債発行状況などを踏まえながら資金面の強化を図っ ていきたい」と社債発行に意欲を見せた。ただ、現状では発行計画を本 格的に打ち出す電力会社は見当たらない。