ウォール街の道徳欠如と指導者不在の政治に憤慨-マイケル・ルイス氏

マイケル・ルイス氏の新著 「Boomerang: Travels in the New Third World」(仮訳「ブーメラン -新第三世界の旅」)は、銃や金地金を買っている米テキサス州のヘッ ジファンドマネジャー、カイル・バス氏の逸話から始まる。バス氏は 欧州各国の政府が苦境を乗り切ることができないと予想している人物 だ。

ルイス氏は昨年出版した「世紀の空売り」でサブプライム(信用 力の低い個人向け)住宅ローン市場の崩壊について探究した。これに 続く「ブーメラン」はアイスランドやギリシャ、アイルランド、ドイ ツの危機的な状況に関する記事をまとめた著書だ。

著書「マネー・ボール-奇跡のチームをつくった男」や「ブライ ンド・サイド-アメフトがもたらした奇蹟」が映画化されたことで、 ルイス氏は大きな成功を収めた。短期間ながら米ウォール街での職歴 についてつづった「ライアーズ・ポーカー」を原作にした映画はつい に撮影が始まる見込みだ。著作を基にしたテレビ番組の制作交渉も数 件進んでいるという。

ルイス氏はニューヨークにあるブルームバーグ本社でインタビュ ーに答えた。

――仕事が波に乗っているようだ。手にした収入の使い道は? 「私は常に慎重だ。だから時代のバロメーターではない。約40-50% を株式市場に投資している。リセッション(景気後退)にも耐え得る 大型株で高配当の大企業ばかりだ」

ドッグフード

――バス氏のように銃や金地金は買っていないのですか? 「私とバス氏との違いは、極限状態で私はドッグフード(餌食)にな ってしまうと思っている点だ。彼は自分の金地金を守れると考えてい る」

――今はどこに投資するのが賢明か? 「市場の行方を予想するのは不可能だが、賢明な人々がどうしている かという質問なら、しばらくの間リスクは極力避け、債務を完全にな くしている」 「彼らはわれわれが非常に危険な時代を生きていることを説得力をも って示している」

――「ウォール街を占拠せよ」を合言葉にしたデモへの感想は? 「彼らが憤慨するのは当然だ。ただ、何らかの影響を及ぼそうとする のなら何を望んでいるのか明確にしなければならない。特定の要求が あれば、非常に興味深い動きになり始めるだろう」

大はさらに大に

――株価暴落以降、ウォール街は変わったか? 「変化は漸進的なものだ。私なら金融業界を徹底的に改革して銀行を 国有化していただろう。オバマ政権がそうしなかったのは、私には理 解できない非常にそれ相当の理由があったからだと思う」

――サマーズ元財務長官やガイトナー財務長官も同じ状況だったの か? 「彼らには彼らなりの理由があった。ただ、変化の幾つかは憂慮すべ きものだ。大手金融機関の規模はさらに拡大し、恩恵が小さくなるべ き時にシティグループやゴールドマン・サックス、モルガン・スタン レーであるというその存在によって、むしろさらに大きな恩恵を受け ている」 「報酬は変化している。制限付き株式での支給が増えている。短期よ り長期的な方向に関心を向かわせようとしている」

――これまでであなたが目にした最悪の出来事は? 「金融危機後に大企業が金融業界の改革法案に干渉したそのやり方は 本当に頭に来る」 「これらの企業が議論に参加する余地などないと私は思うが、自分た ち以外の人々に不利なように法案を操作した」 「金融業界が再び道徳を取り戻すことはなさそうだ」

リスク

――インセンティブは変化したのだろうか? 「報酬の面では改善しているが、預金は政府によって保証されること が明確になっており、依然としてヘッジファンドのような活動を行う こともできる。そういう意味では悪化している」 「リスクに関する市場のチェック機能が十分ではない。ボルカールー ルが3年後に実際に適用されているか骨抜きにされているか分からな い。骨抜きにされるような気がする」

――オバマ米大統領やメルケル独首相は、ルーズベルトやチャーチル、 ヒトラー、スターリンのような人物が20世紀の歴史を支配したように は権勢を振るっていない。今世界を牛耳っているのは金融業者なの か? 「誰も世界を統括していない。恐ろしいことだ。権威は地に落ちてお り、危機の際に誰も責任を負わないと思うと非常に気が滅入る」

寄生生物

――あなたは、米国人がお金でいっぱいの暗い部屋にいた時に、その お金をできるだけ多くつかもうとしたと形容していた。 「公務員組合とウォール街のバンカーの共通のテーマは、短期的な事 柄に重点を置き過ぎ、長期的な事柄に対しては妙に無分別になること だ」 「それは持続不可能な行為であり、寄生生物はどこでも宿主を殺して しまう」

(ルンドボーグ氏はブルームバーグ・ニュースの芸術・娯楽分野 の編集者です。記事中の見解は同氏自身のものです。この記事は長編 インタビューの抜粋です)。ルイス氏新著の北米での購入はここをクリ ック。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE