「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

10月5日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは6、7 日の日本銀行の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」 14人に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アンケート 回答期限は4日午前8時。エコノミスト予想のまとめ記事として「日 銀は今回も追加緩和見送りか、次回実施の見方-欧州危機で緊張続く」 を同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、カッコは前回回答)、12)経済・ 物価の見通し、欧州のソブリン問題の帰すうと現在の円高が日本経済 に及ぼす影響。

13)金融政策運営の見通し=①今会合で追加緩和が行われる可能 性と具体的な措置、期待される効果、②以下の追加緩和策の可能性と 期待される効果-資産買い入れ等基金の買い入れ対象国債の残存期間 (1-2年以内)長期化、補完当座預金制度適用利率(0.1%)の引き 下げ、長期国債買い入れ額(月1.8兆円)の増額、時間軸の強化、資 産買い入れ等基金の対象資産に外債を追加、国債引き受け、③次回11 月1、2日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、10月6日の欧州中 央銀行(ECB)理事会で打ち出されると思われる追加緩和措置、④ 新政権の下で予想される金融政策運営、年内に予想される追加的な措 置。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)景気はサプライチェーンの早期復旧により生産を中心にV字回復 (=リバウンド)してきたが、今後は一服感が生じる。短観の業況判 断は12月にかけての改善傾向が示されたが、超円高の長期化リスクや 海外景気減速の影響をまだ反映していない。一方で海外需給判断や輸 出にその兆候がにじみ出ている。今冬以降の電力不足の影響も取り沙 汰され始めた。

震災復興需要の本格化が期待される半面、海外生産シフトの加速 に伴う産業空洞化が懸念される。景気は基本的には回復軌道を維持し て推移するものの、下振れリスクをはらんで実感を伴わない、ごく緩 やかなものにとどまる

欧州債務危機は「出口」が見えない。早期解消は望み薄。抜本的 な解決策は①矛盾が噴出した単一通貨ユーロから危機国を隔離する、 ②危機国が経済・財政の再建を早期に達成する、③“財政統合”を前倒し 実施してコア国が危機国の信用を補完する-の三者択一だが、どれも 現実味が乏しい。結局、危機はこれまでと同様、おおよそ3カ月ター ムで間欠泉のように噴き出しては収まり、収まったかと思うとまた噴 き出すということを繰り返してゆこう。

欧州債務危機の長期化を背景にグローバルマーケットでは安全資 産逃避や「質への逃避」のムードも常態化してゆく。相対的な安全資 産と位置付けられている円には投機資金が流入しやすく、円相場は高 止まり、もしくは一段の高値更新を迫られる。そのような超円高の長 期化は、火力代替に伴う化石燃料の輸入が急増しているわが国収支構 造にとって、交易条件の改善というメリットは小さくない。

しかし、経済構造全体は相変わらずの“自動車・電機を屋台骨とす る輸出立国”。採算レートを超える超円高は価格競争力の著しく低下さ せ、電力制約や法人税増税などとあいまって屋台骨を着実に疲弊させ る。輸出企業は海外生産シフトを加速させざるを得ない。それはやが て国内の設備投資と雇用を空洞化させ、潜在成長力を押し下げる。

13)①大幅な円高(過去最高値更新)/株安(ザラバの年初来安値更 新)が進行する場合は追加緩和を検討へ。期待されるのは主にアナウ ンスメント効果。②資産買い入れ等基金の買入対象国債の残存期間(1 -2年以内)の長期化→可能性あり。基金拡大の場合に「3年程度」 までに小幅長期化も。期待される効果は、長めの金利の限界的低下に よる企業・家計の資金調達コスト引き下げ、円高圧力のヘッジなど。

補完当座預金制度適用利率(0.1%)の引き下げ→可能性は低い。 FRBが準備預金付利金利(0.25%)の引き下げに踏み込まない限り 日銀が率先して引き下げるとは考えにくい。期待される効果は、市場 金利の限界的低下を通じた企業・家計の資金調達コスト引き下げ、円 高圧力のヘッジなど。長期国債買入額(月1.8兆円)の増額→可能性 は低い。期待される効果は、国債利回り低下を通じた企業・家計の資 金調達コスト引き下げ、円高圧力や債券需給の悪化懸念のヘッジなど。

時間軸の強化→FRBのような無条件型の時間軸の設定は可能性 が低い。ただし展望リポートで物価見通しを下方修正すれば、事実上 の時間軸延伸になる。期待される効果は、イールドカーブのブルフラ ット化を通じた企業・家計の資金調達コスト引き下げ、円高圧力のヘ ッジなど。

資産買い入れ等基金の対象資産に外債を追加→可能性は極めて低 い。外債購入に伴う円売り外貨買いは日銀法が禁じる「為替相場安定 のため」の外貨売買に該当するとみられる。期待される効果は、投機 的な円買いへのけん制など。国債引き受け→可能性は極めて低い。財 政法により国会の議決が必要。期待される効果は国債需給の安定など。

③11月の次回FOMCでは追加緩和を想定せず。本格的な景気後 退に陥るリスクが一段と高まるまで追加緩和は温存。ECBは今週の 理事会で1年物固定金利・無制限オペとカバードボンドの復活を決定。 欧州債務危機の深刻化に応じた流動性対策。一方、11月には景気失速 リスクに配慮して、50bpの利下げ(年1.50%→1.00%)に踏み切る可 能性が見込まれる。

④G7で「経済成長と財政健全化の両立」がうたわれたので、各 国とも金融緩和にしわ寄せがかかってゆく。しかし、日米の金融緩和 もすでに非伝統的な領域に深く踏み込んでおり、事実上の限界に来て いる。したがって、追加緩和は自ずと“禁じ手との臨界”を探っていか ざるを得ない。それはすなわち、財政・金融政策の一体化という領域。

「資産買入れ等の基金」は指数連動型上場投資信託(ETF)や 不動産投資信託(J-REIT)など非伝統的な資産を対象としてい るので、既にその範ちゅうに位置付けられる。したがって年内中の追 加緩和はそれの“漸進主義的な増額”というのが順当な線。一方、世界 経済が恐慌的な修羅場にでも陥らない限り、国債引き受け(禁じ手) までは想定されない。

●SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持、被災地金融機関向け資金供給の延長も 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)先月20日発表の国際通貨基金(IMF)世界経済見通しでは、12 年の先進国の下方修正幅は大きく、特にイタリア、米国が際立つ。8 月下旬時の見通し草案からわずか1カ月でユーロ圏は11年、12年と もに▲0.3%pt、米国は12年▲0.2%ptの修正は大きく、欧州危機の 深刻化を織り込み始めた。

またIMFは金融安定性報告で、EU(欧州連合)の銀行が債務 危機国の国債保有で潜在的な損失を2000億ユーロ抱えている可能性 との分析も発表、警鐘を鳴らした。

欧州の銀行問題に対処するためには、米国が3年前のリーマンシ ョック後に取り組んだ不良資産救済プログラム(TARP)のような ものを欧州でも実施すべきと筆者は考えるが、残念ながら財政問題が 重くのしかかっている現在の欧州各国にすぐに取り組む余力がなく、 当面はECB頼みにならざるを得ない。

14、15日のパリG20財務相・中央銀行総裁会議までに欧州金融安 定ファシリティ(EFSF)の機能強化に向けた動きが進ちょくする かを見極める時間帯は続く。EU各国のEFSF拡充法案の承認が整 ってからは、具体的な機能拡充の選択肢の議論を詰める作業となる。 考え得る選択肢として、①レバレッジの活用もしくは資金拡大、②欧 州安定メカニズム(ESM)発足の前倒し、③ECB購入の債券を保 証、④投資家の損失を保証等である。

現状、①はドイツが反対。これから先、スキームを決めていくプ ロセスも協議の難航が予想される。残念ながら、短くても年内は世界 的な金融と経済の負の相乗作用に苦しむことになるだろ

短観ではマインドや事業計画の数字に大きな崩れはなかったが、 9月中旬以降の欧州不安の高まりと世界経済の下振れ懸念が十分に織 り込まれていない。大企業製造業の想定為替レートは、11年度が1ド ル=81.15円(6月調査82.59円)と円高修正されたが、実勢とはかけ 離れており、今後の円高定着度合いと足元の世界経済の下振れ懸念に より、次回12月短観では、大企業製造業の輸出部分の売上高および経 常利益が下方修正される可能性は高いだろう。

13)①先月29日にドイツ議会がEFSF強化法案の可決をしたことに より、欧州不安の高まりがいったんは後退、短観もマインド、事業計 画に大きな崩れはなく、日銀が追加緩和をする緊急性はない。あると すれば10月末で受付期間が終了する被災地金融機関向けの資金供給 オペの延長、もしくは新たな検討の議長指示だろう。

②追加緩和のオプションとして、資産買い入れ等基金の買入対象 国債の長期化は3年程度なら可能性は高いと考える。10月展望リポー トでは13年度まで経済・物価見通しを発表するが、物価は+1%未満 で低迷する見通しとなると思われ、時間軸の再強化が図られることに なろう。それに合わせた、国債の長期化なら筋が通る。

次に付利の引き下げは、市場機能の低下を嫌がる日銀にとっては 優先順位が低い施策。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で事 前予想にあった施策だったが、見送られたおかげで付利の引き下げ議 論が盛り上がらずにすんだ。長期国債買い入れ額(月1.8兆円)の増 額は、日銀券ルールの上限を意識すると簡単には踏み切れない策。

隠れみの的な意味合いもある資産等買い入れ基金での国債買い入 れ増額の方が、一時的な策との説明が成り立つと思われる。対象資産 に外債追加は、為替政策の所管である財務省の承認が必要なこともあ り、日銀が積極的に取り組む手段ではない。あくまでもウルトラC策。

国債引き受けについては、白川総裁は財政規律を損ねる施策とし て繰り返し固辞しており、選択肢にはないだろう。いずれの手段でも、 追加緩和の期待される効果は、金融システム安定の維持が一番。時間 軸の再強化はFRBの2013年半ばとの比較で、金利差による円高要因 が軽減できるなら効果も出てこよう。外債については、財政規律に懸 念が生じないとのメリットもある。

③11月2日には、9月FOMC時のFRBスタッフの経済・物価 見通しの発表、バーナンキFRB議長の会見も予定されている。何で もやる姿勢を見せているバーナンキ議長の強力な味方は、イエレンと ダドリー両副議長、シカゴ連銀のエバンス総裁。反対派の3人を説得 できなくても、追加緩和策に踏み切る可能性はありそうだ。

7月の議会証言で挙げた追加緩和のオプションのうち、既にFF レートの時間軸強化(8月9日決定)と保有証券のデュレーション長 期化(9月21日にツイストオペ決定)は実施された。残るは追加的な 証券購入(QE3)と準備預金金利の引き下げとなる。QE2決定時 と比べてインフレ率の上昇が止まったとは言えないこと、FRB自身 がQE2の評価を明確に示していないこと等から、QE3の決定は難 しいように見える。

ただし、欧州不安の高まりもあって米国景気の停滞が長期化する 可能性、国際商品市況の下落でインフレ率がピークアウトする可能性 はいずれも高まっている。今後1カ月間で、その見方を後押しする弱 い数字が重なれば、早めの対応に出ると予想する。

ECBについては10月中旬までにギリシャの第1次支援第6弾 (80億ユーロの資金供与)の実行そして第2次支援、EFSFの機能 強化に向けた動き(各国の承認)が進ちょくするかを見極める時間帯 は続く。当面はEU、IMF、ECBのトロイカ体制の一角であるE CBが頼みの綱とならざるを得ない。

まずは流動性供給手段として1年物オペの再開が有力であり、目 先は時間を買う措置が必要となる。トリシェ総裁の任期も残り1カ月 弱、最後のメッセージが注目される。欧州財政問題の解決は長期戦で あり、金融問題は最終的に資本注入が必要となる中で、そのプロセス が決まるまでは非伝統的な政策を駆使しつつ、中央銀行が市場を支え なければなるまい。ドラギ次期総裁は茨の道のスタートになりそうだ。

④新政権では、日銀に対して国債の引き受けや日銀券ルールの撤 廃、インフレターゲット導入等の強硬な要請はしていない。新政権と の信頼関係に応える形で、日銀は新政権の必要に応じて協力姿勢を示 すことになるのではないか。そうは言っても、日銀ができることは限 られており、追加緩和を実施する上ではタイミングが重要。

10月下旬に第3次補正予算が提出される方向にあり、日銀は27 日発表の展望リポートで13年度CPI見通しによる時間軸の再強化、 それに合わせて資産買い入れ等基金の増額を決定すべきと筆者は考え る。ただし、次回FOMCを11月1、2日に控え、日銀が先にやって も無駄打ちになる可能性まで考えると、難しい判断となりそうだ。結 局、ここから1カ月間の米国指標と市場動向が鍵を握ると言えよう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :追加緩和か現状維持か五分五分の状況 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)輸出主導の回復再開を模索する中で下振れリスクが増大している が、日米ともに景気腰折れはないとみる。欧州情勢不安はこのまま長 期化しやすいが、必要な政策対応が徐々にとられていく公算。円高の 影響は輸出企業を中心に出ているが、国内景気を腰折れさせるほどの マグニチュードは、今のところない。

13)①今回は追加緩和(おそらく5兆円の基金増額)があってもなく ても、どちらでもおかしくない、五分五分の状況。ECBが6日の理 事会で市場の予想通り利下げに転じれば、日銀が今回追加緩和に動く ことで日欧協調の金融緩和(あるいは9月21日に米FOMCが決めた 「ツイストオペ」を含めれば日米欧協調の金融緩和)という体裁を作 り出すことができる。

一方、会合直前に市場全般の状況がある程度落ち着きを取り戻し ていれば、とりあえず現状維持とした上で、10月2回目の会合で展望 リポートでの景気シナリオ下方修正に対応する形で追加緩和を行う選 択肢もある。どちらを日銀が選ぶかは、決定会合直前の経済金融情勢 次第と言わざるを得ない。具体的な手段は基金5兆円増額が最有力。

②資産買い入れ等基金の買入対象国債の残存期間(1-2年以内) 長期化→実現の可能性が高いが、既に金利がかなり低いため、効果は 限定的。補完当座預金制度適用利率(0.1%)の引き下げ→米2年債利 回りが上昇し、円高が止まっている限り可能性は小さい。仮に実現し ても、2年債利回り低下を通じた為替相場への効果くらいしか期待で きない。

長期国債買入額(月1.8兆円)の増額→実現の可能性は小さいと みる。債券市場に短期的には好感されると予想されるが、長期的には マネタイゼーション懸念から警戒される公算が大きい。時間軸の強化 →米国のようなカレンダー型時間軸が導入される可能性は小さいとみ る。日銀は時間軸を含む自らの現在の政策運営のフレームワークに、 それなりのこだわりや自信を持っているのではないか。

また、既に実勢として市場が織り込む時間軸がかなり長くなって いるので、追加的な効果は限定的。資産買い入れ等基金の対象資産に 外債を追加、国債引受→いずれも実現の可能性はほとんどない。後者 は効果よりも弊害がはるかに大きい。

③米国は現状維持、ECBは利下げ+非標準的手法拡充(1年物 無制限供給オペとカバードボンド購入の再開)。④野田政権は日銀に対 し厳しい要求を突きつける政権ではないとみられる。政策運営への影 響は限定的。今後の政策運営はひとえに欧米情勢・為替次第。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)短観は自動車を中心に多くの企業が大震災で受けたサプライチェ ーンなどの被害を急速に克服しつつあることを示している。欧米では 財政問題や金融市場の混乱を背景に消費者マインドが慎重化している が、中国など新興国の需要は一時期よりも減速しつつあるものの、ま だまだ堅調だ。当面の最大のリスクは、欧州のソブリン問題を起点と する世界的な金融システムの混乱が発生するかいなかだろう。

中国経済は長期的にはさまざまな問題を抱えている。しかし、近 い時期に「中国国内要因発」でハードランディングが起きるかという と、その確率は今は低い。中国当局の現在の金融引き締めは、需要の 強烈な強さと過剰流動性から来る景気過熱を抑え込むことを意図した ものであり、スタグフレーションのリスクが近寄ってきているわけで はない。住宅市場では価格調整が始まっているが、今のところは当局 の管理の範囲内で起きている。また、中央政府の財政状態は日米欧に 比べ健全であるため、それら先進国よりは財政発動の余地はある。

ただし、欧州のソブリン問題を契機に金融システム危機が先進国 で起きて、その衝撃がエマージング市場にも押し寄せるというシナリ オが顕在化すると、中国でもマネーフローが急激に変わり、これまで したたかに「もぐら叩き」のように経済の歪みを制御してきた中国当 局の手法に破たんが生じる恐れはある。そのようなリスクシナリオの 場合は、一時的に円高圧力が高まりやすいため、日本の製造業にとっ ては、輸出の減少と相まって打撃となる恐れがある。

なお、現在の日本の電機・自動車などの製造業は円高に苦しんで いるが、そのベースとなる問題は、新興国メーカーの品質向上による 優位性の著しい低下にある。それは単に生産拠点を海外に移転すれば 克服できる問題ではないため、新興国メーカーと競合しない分野へ経 営資源を注力していくことが急務と思われる。また、利益率を上げ、 円高耐性を高めるためには「ブランド力」の向上も必須だ。中国での 欧州高級車販売は、市場全体の伸びを遙かに上回る驚異的な高い成長 を続けているが、消費者の間での日本車の相対的な人気は残念ながら 近年失速している。

一方、新興国新中間層向けの衣料、食品、化粧品などでの日本企 業の業績は今後も大きく伸びていくことが期待できるため、悲観に傾 き過ぎるべきではないだろう。また、円高の恩恵を受けている日本企 業も国内には多く、円高という追い風を生かした海外企業の買収も進 んでいるため、それらのメリットも先行きは徐々に顕在化してくると 思われる。

13)①10月末の展望リポート発表時に日銀は成長率とCPIの見通し を、海外要因への懸念を主因に下方修正するだろう。その際、欧米で の金融不安が一段と高まっていれば、資産買い入れ等基金の増額を中 心とする追加金融緩和策を選択するだろう。②信用緩和策が必要にな るような価格形成の混乱が金融市場で生じれば、資産買い入れ等基金 増額の意義は高まる。しかし、現在のような状況では、効果は限定的 だろう。基金における国債買い入れの残存期間長期化は、アナウンス メント効果は多少あるだろう。

日銀が本気で保有資産の長期化を図るなら、資産買い入れ等基金 による国債購入保有額よりも遙かに巨大な従来型国債買い入れオペ (いわゆる「輪番オペ」)によるポートフォリオの長期化を狙う手もあ る(それは日銀券ルールの範囲内で行うことができる)。ただし、現在 のFRBと同様に、日銀が資産の長期化を図っても経済への刺激効果 は現実に限られるが、為替市場に対するアナウンスメント効果は多少 あるだろう。

FRBは超過準備への付利の引き下げをこれまでのところ見送り 続けている。効果と弊害の比較考慮を行った場合、後者が上回ってい るという判断のようだ。日銀も同様の判断を示しているため、FRB が(政策手詰まりにより)それを行わない限りは、日銀も付利の引き 下げには着手ないと考えられる。

現行の日銀時間軸は、8月にFRBが強化したものよりも遙かに 強力と日銀は考えているため、現時点はその変更の確率は低い。外債 購入に関しては、政府・与党が日銀が昨年度も大きかった為替差損を さらに増大させ得ることを許容できるようにならないと、導入できな いだろう。

③FRBはツイストではない国債大規模購入策(いわゆる“QE 3”)は共和党・ティーパーティの反発が弱まらないと導入は政治的 にやりにくい。現在検討中のコミュニケーション戦略の見直し(時間 軸政策を含む)は年内に発表されるだろう。ECBは流動性支援策の 復活・拡大は近い時期にあり得る。政策金利の利下げは、ユーロ圏の インフレ率低下が見えてからだろう。

④日銀国債引き受けの流れが永田町で強まることがないか、日銀 は警戒を続けている。野田政権の下ではそれが現実化する可能性は小 さいが、与党で議論が高まる場合は、日銀は基金の拡大や買い入れ国 債の長期化などで圧力を弱めようとするだろう。また、円売り介入を 政府が必要とする相場局面になるケースも、日銀は追加緩和の準備を 進めるだろう。ギリシャ問題が最悪ケースを回避して、世界経済のセ ンチメントが好転することがなければ、日銀は年内に追加緩和策を選 択するだろう。

●JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :世界経済、為替次第では2011年10-12月にも 3)利上げ時期 :2014年以降 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)ギリシャ経済および財政について、新たな債務再編なしには一段 の悪循環に陥る可能性が高いことが明らかになった。ギリシャ債務の 元利払いの追加的減免という債務再編第2弾は強制力を伴うことにな り、そうなると「ギリシャのデフォルト」ということになる。問題は これをいかに秩序だったものとし、危機の連鎖を防ぐか、ということ に尽きる。

もっとも、そのために必要な金額は数兆ユーロとも言われ、EF SFにレバレッジを掛ける案が浮上しているが、合意への道は遠い。 結局、ギリシャの構造改革、支援国の協調とも危機感がさらに高まら ないと実現しそうにもないので、当面株価の下落、信用市場の収縮は 続く見込みだ。こうした状況下、欧州の実体経済は第4四半期以降、 マイナス成長(景気後退)に陥ると予測する。

「マイルドな景気後退」を予測するが、これは債務再編第2弾と EFSFの拡充が来年第1四半期には実現する、との前提に基づく。 この前提が崩れるとより厳しい景気後退となる可能性もある。特に欧 州の金融システム不安がさらに悪化すると、瞬時に米国、アジアの市 場にも飛び火するので要注意だ。「ギリシャのデフォルトが秩序立って 行われるか」、また「欧州内での危機の連鎖を防止できるか」が鍵だ。

円高の影響については、「歴史的な円高」と言われるが、円の実質 実効レートは中長期的な均衡レートと考えられる購買力平価から5% 程度の円高に過ぎない。それにもこだわらず輸出企業から「円高によ る収益悪化」の声が強まるのは、日本政府の政策ミス(FTA・TP P締結の遅れなど)から、韓国・台湾勢の追い上げが実質実効レート が示す以上に日本企業にとって脅威となっているからであろう。

もっとも、日本企業の経営合理化努力により、ある程度の円高を 吸収することは可能だ。短観では下期81円/ドルを前提としても、一 定の収益が得られることが示された。しかし、世界景気が減速して輸 出数量が下振れすると、こうした収益計画は下方修正される可能性が 高い。今後、対ドルレートより対ユーロレートでの円高が懸念される。

また、日本企業は円高の長期化を前提に、今後海外戦略を積極化 しよう。これまでため込んだ円キャッシュの価値が増大するので、海 外ビジネス強化には絶好のチャンスだ。実際、対外直接投資は震災直 後から増大している。製造業の海外生産比率の上昇による国内雇用機 会の喪失は、規制緩和を通じるサービス業の拡大で吸収すべきだ。

13)①今会合は現状維持を予測。②実施される追加緩和策の可能性: 時間軸の強化>基金の国債購入額増額>基金の購入対象国債の年限長 期化>超過準備付利水準の引下げ>基金の対象資産拡大(ただし外債 の優先順位は低い)>(基金以外での)国債購入増額(月1.8兆円)、効 果はいずれも限定的。

③ECB:利下げ(50Bp)、カバードボンド購入、1年物の資金供 給、FOMC:現状維持(ただし、金融市場が一段と不安定化すると、 超過準備付利水準の引下げもありうべし)。④新政権は日銀の政策に理 解を示しているが、今後、円高と世界景気の下振れが同時に起きると、 日銀に何らかの対応策を迫ることになろう。

②に示した政策はいずれも効果に限界がある、あるいは副作用が 大き過ぎる(国債引受)といった問題点がある。今後、危機管理策と して考えられるのは、基金を日銀のバランスシートの外に出し、特別 目的会社化し、政府(財務省)の出資ないし保証を得た上で、日銀が 資産購入資金を貸し出すというスキームだ。

このメリットは、基金の拡大が容易、基金のリスク管理が容易、 透明性が拡大、金融政策と財政政策の役割を明確化する-などだ。将 来的には、この特別目的会社が民間から資金を調達して外貨資産を購 入することも可能だ。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(2013年7月以降) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)まず、ソブリンリスクは予断を許さない。生産統計も年度後半に 鈍化していく可能性がある。短観は改善しても、円高進行もあり、空 洞化リスクが高まる。

13)①円高が進まないと現状維持、②資産買い入れ等基金の金額を5 -10兆円増額、③現状維持、④野田政権では円高を注視しつつ、場合 によって為替介入。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)夏場にかけて新興国、先進国はともに景気減速が鮮明化している。 背景には、春先までのコモディティ価格の高騰が先進国の内需を抑制 していることや、新興国が供給制約に直面しインフレ加速と景気減速 が乗じていることがある。南欧のソブリン問題による金融市場の混乱 も世界経済の減速に拍車をかけているが、ソブリン問題の再燃そのも のはユーロ圏の成長ペースの鈍化が大きく影響している。

日本では、東日本大震災直後の大幅な落ち込みからの経済の持ち 直しが続いていたため、世界の景気循環とかい離した動きが続いてい た。さらに円高の進展によって、欧米で見られたコモディティ価格高 騰による実質購買力への悪影響がかなり相殺されていた。震災前の水 準に経済活動がほぼ回復したことから、今後は海外経済の動向次第の 動きになると思われる。

もともと「経済の老化」によって日本の内需は基本的に横ばいで ある。政府・日銀を含め多くのエコノミストが想定していた「震災に よるサプライチェーン問題などの供給制約が解消すれば、日本経済は 輸出主導の回復軌道に復帰する」というシナリオは、早晩修正を迫ら れると考える。海外経済が減速するため、4Q以降の日本経済の成長 率は再び滞ると見られる。復興需要がある程度期待できるため、マイ ナス成長は回避すると予想しているが、多くの人が考えるほど12年は 高い成長にはならない。

なお、仮に全ての原子炉が停止した場合でも、電力不足による供 給制約が短期的にはほとんど生じない。念のために言っておくと、こ れは全ての原発を停止しても日本経済に悪影響が及ばないと言うこと ではない。海外経済の減速によって輸出の回復が滞るため、当初想定 されたほど総需要が伸びず、電力不足問題が顕在化しないということ である。

あらためて今後10年間の日本のトレンド成長率を推計した。まず、 1人当たりのトレンド成長率は1%程度である。バランスシート問題 やソブリン問題に直面する米欧に比べると倍近い伸びである。ただし、 日本の生産年齢人口は今後10年間で年率0.9%程度のペースで縮小す る。つまり、経済全体のトレンド成長率は0.1%(=1.0%-0.9%) にとどまる。

13)①なし、②海外経済の動向次第では資産買い入れ等基金の拡大は あり得る。しかし効果は小さい。マネタイゼーションとみなされる政 策は副作用が大きいため、実施されないのではないか(実施すべきで はない)。財政政策や金融政策で可能なことはそれほど多くはない。成 長率を高めるにはトレンド成長率の低下をもたらした要因を取り除く 構造政策が必要なのであり、それは財政・金融政策では代替できない。

歴史の教訓は過度な財政・金融政策を採用することが経済・物価 の大混乱をもたらすということだ。いかにマクロ経済学が発達したと はいえ、「マクロ経済の仕組み」に関するわれわれの理解や知識は依然 として限られているのであり、政策を決定する際には、少なくとも社 会やマクロ経済に悪影響を与えないという、慎重な姿勢が必要である。

裁量的なマクロ政策が万能と考えることの危険性、あるいは進歩 主義的な介入主義への過度な信頼に対する反省が2000年代の世界的 な金融危機から得られた教訓だったはずである。残念ながら先進各国 では、短期的な痛みを伴う構造政策の選択が政治的により難しくなっ ており、裁量的なマクロ政策に問題がシワ寄せされている。

この結果、財政・金融政策の限界に挑戦するかのような政策が各 国で取られている。大規模なブーム・アンド・バースト(金融的不均 衡の拡大とその調整)を再び世界経済が経験することになるのではな いか大変心配だ。

③次回FOMCでの政策変更は予想されない(効果は期待できないが、 年内にLSAP、いわゆるQE3の再開の可能性がある)。ECBも年 内に合計で50BPの利下げの可能性がある。

④日銀の金融政策の反応関数の最も高い説明力を持つ変数は円ド ルレートである。米連邦準備制度理事会(FRB)が追加緩和に動く 際、円高・ドル安が進行する可能性があるため、その際、資産買い入 れ基金の拡大などに追加緩和が行われる可能性がある。ただし、円高 阻止にはそれほど大きなインパクトはないと思われる。

ゼロ金利制約に直面している日本では円高圧力を金融緩和によっ て吸収することが困難になっており、米国の金融緩和効果によってデ フレ圧力を被っている。この問題が日本経済にとって、致命的な問題 だと判断するのであれば(筆者自身は現在の円高が致命的だとは考え ていないが)、ドルペッグを選択することも一案かもしれない。

最適通貨圏の議論で考えると、日本は長い間、ゼロ金利制約に直 面しており、独立した金融政策を失うことのデメリットは、それほど 大きくないようにも見える。一方で、通貨安定の確保は、円高が生じ ると蜂の巣を突っついたような大騒ぎ社会に起こることを考えると、 相当に大きいのかもしれない。

ただし、最近のコモディティ価格上昇の悪影響が円高によってか なり相殺されているという円高のプラス面も忘れてはならない。また、 実行されるのがスムージングオペにとどまり、ドルペッグなどがあま り議論されていないところを見ると、多くの人は実は現在の円高は致 命的だと考えていないのかもしれない。

●モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年10-12月以降(2013年7-9月以降) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)短観における大企業・製造業の業況判断は企業の楽観性を示した。 しかし、足元の世界経済・国際金融情勢に鑑みて企業の判断は楽観的 過ぎる可能性がある。実際、需給・在庫判断に着目すると需給判断は 国内外で対照的な動きとなっており、海外需給の悪化が目につく。在 庫過剰感も強まる形となっている。

また、設備投資計画は非製造業の下方修正により全体でも下方修 正され、過去の景気後退期に似た修正パターンとなった。企業は円高 や中長期的な電力不足への懸念から、国内での設備投資を減らし、海 外に振り向けている可能性がある。先行きは欧州ソブリン問題をめぐ る不確実性の高まりから金融市場は引き続き不安定な地合いとなり、 為替市場では消去法的な円買いが続こう。

欧州問題については、国債の無リスク資産としての特性に疑義が 生じたことで、問題はますます長期化しそうな様相である。国の信用 をバックとした金融機関の自己資本の頑健性に疑問が生じるようにな ったことで、果たして金融機関の資本基盤強化が最終的な解決策とな るかどうか怪しくなってきた。

さらに究極の解決策とみられる財政統合は短くても数年タームの 時間軸を要するため、短期的な処方せんは見当たらない。その場しの ぎの政策で当局は時間を稼ごうが、市場マインドの悪化は続き、実体 経済に影響が及ぶ公算は大きい。

円高について、企業は過去の円高の教訓から海外生産比率を引き 上げ、かつてよりは円高に打たれ強い体質となっているものの、短期 間の急激な円高への対応には限界があることから、やはり円高は企業 マインドの悪化を通じて設備投資等の企業行動に影響を及ぼす可能性 が高い。

13)①今会合での可能性は小。②資産買い入れ等基金の買入対象国債 の残存期間(1-2年以内)長期化→円相場次第で年内実施の公算、 中期ゾーンのカーブに働きかける効果を期待。補完当座預金制度適用 利率(0.1%)の引き下げ→米連銀が実施なら日銀も対抗上実施の可能 性。ただし効果は極めて限定的。長期国債買入額(月1.8兆円)の増 額→可能性は小。資産買入れ基金の増額の優先順位が高いであろう。

時間軸の強化→米連銀が実施の場合、日銀も対抗上、実施の可能 性。長めの金利に働きかける効果大。資産買い入れ等基金の対象資産 に外債を追加→為替市場介入と経済効果は似ている。市場介入を財務 省の外為特会でやるか日銀の自己勘定でやるかの違い。結局、財務省 は為替介入の権限縮小につながるので消極的となり、実現の可能性小。 国債引受→可能性小。

③FOMC:超過準備に対する付利率の引き下げ。ECB:利下 げ、1年物資金供給オペの導入、カバードボンド購入再開。④野田内 閣の喫緊の課題である第3次補正予算は増税や政府資産売却で野党と 調整が必要になるため、当面成立のめどは立たず、その分金融政策に 負荷が掛かる公算大。

日銀は資産買い入れ基金の拡大を軸に金融緩和を進めよう。米連 銀が上記緩和を実施の場合、日銀も対抗上緩和に追い込まれる可能性 が高いが、超過準備に対する付利率引き下げの効果は乏しく、むしろ 短期金融市場の流動性低下につながる可能性が高い。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :資産買入等基金の対象国債の残存期間1-5年に 2)利下げ時期 :可能性あるが時期の特定困難 3)利上げ時期 :2013年10-12月以降(2013年7-9月以降) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)生産は震災の悪影響で落ち込んだ部分を取り戻した。しかし、短 観などを見ると復興需要を含めて全般的な回復への期待が弱いことが うかがわれる。特に外需は米国の景気後退懸念、欧州の債務・財政問 題の継続、円高など不安材料が多い。今年度のプラス成長は難しい可 能性がある。

欧州問題は最終的に高度な政治判断によって、独仏などの国々の 支援が拡大する形で収束に向かうと見ている。しかし当面、自国民の 抵抗が強いなど、必要十分な支援を決断するには至らず、結局、現在 のような状態が続かざるを得ない。

13)①「資産買い入れの対象になる長期国債の残存年限を現状の1- 2年から1-5年に長期化する」を本命に金融緩和を決定と予想する。 効果としては多少2年金利の引き下げに寄与、一時的には円反落を促 す。②資産買い入れ等基金の買入対象国債の残存期間の長期化→①の 通り、『補完当座預金制度適用利率(0.1%)の引き下げ→円が1ドル= 70円に接近するような円高になれば、がい然性は50%以上になると見 る。やはり、一時的には円反落に働く。

長期国債買入額(月1.8兆円)の増額→がい然性は20%以下。一 定に長期金利を押し下げる効果は認める。時間軸の強化→がい然性は 低くない。イールドカーブなどへの影響は「時間軸」の内容次第だが、 大きいとは言えない。資産買い入れ等基金の対象資産に外債を追加→ 可能性はある。一時的に円反落を促す。国債引受→考えられない。長 期金利が上昇し、逆効果。

③FOMC、ECB理事会ともに次回はなし。④①と②の通り。 新政権の下でも、一定の政治的な円高是正圧力がかかろう。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし(同) 3)利上げ時期 :2014年以降(2015年以降) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)日本企業は新興市場国向け直接投資などから得られる配当金受け 取りの拡大、国内リストラ加速によるコスト削減を背景に利益率を維 持しており、業況は安定。したがって今後のリスクは新興市場国経済 の急減速による企業マインドの悪化。インフレの高止まりが新興市場 国経済のダウンサイドリスク要因となっており、新興市場国のインフ レ圧力が低減するかどうかを注意深く見守る必要。新興市場国景気が 大きく減速した場合、12年の日本経済はゼロ成長に。

欧州問題に対する見解は以下の通り。第1に、ギリシャ問題の収 束には、G20諸国が、ギリシャの管理デフォルト(債務リストラ)・ プランおよび7月下旬に合意した第2パッケージの見直しに合意する ことが必要だ。逆に言えば、その合意が行われさえすれば、ギリシャ 問題は収束する。そして当局の発言を総合的に判断する限り、見通し は暗くない。

なお、EFSFの機能拡充(EFSFを経由した銀行部門への公 的資本注入が可能に)はユーロ圏全参加国によって承認される見込み であり、かつギリシャ債務リストラに伴う欧州銀行の資本不足額は 300億ユーロ未満と少額にとどまる可能性が高い。第2に、ギリシャ 以外の諸国のcontagionが深刻化し、ギリシャ以外のソブリンについ ても債務リストラが必要になった場合、BaselⅢ対応も加味した欧州銀 行の所要資本増強額は4000億ユーロにも及ぶ可能性がある(弊社推 計)。現行EFSFの規模では対応できず、規模拡大が不可避になる。

しかし、規模拡大の議論にはEFSF債消化、財源手当ての問題 が付随するため、ハードルが高く、中期的課題にしかなり得ない。ま とめれば、①ギリシャ問題の収束は視野に入りつつあるが、②欧州全 体で見たソブリン問題の収束はまだ見えていない、ということになる。 問題は、リスク資産市場の潮目の変化は“欧州全体で見たソブリン問 題の収束”を必要とするのかどうか、という点である。

13)①今会合で追加緩和が行われる可能性は低い。②資産買い入れ等 基金の買入対象国債の残存期間(1-2年以内)長期化→可能性は低 い。補完当座預金制度適用利率(0.1%)の引き下げ→可能性あり。次々 回以降の会合で行われる可能性も。3-5円程度の円安をもたらす可 能性。長期国債買入額(月1.8兆円)の増額→可能性は低い。時間軸 の強化→可能性は低い。

資産買い入れ等基金の対象資産に外債を追加→可能性あり。5- 10円の円安効果。国債引受→可能性は低い。③次回FOMC、ECB 理事会で打ち出されると思われる追加緩和措置→FOMCは現状維持、 ECBはカバードボンド・オペ再開、④新政権の下で予想される金融 政策運営、年内に予想される追加的な措置としては、補完当座預金制 度適用利率(0.1%)の引き下げ、資産買い入れ等基金の対象資産に外 債を追加の可能性が高いと判断される。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年7-9月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.25%

12)米国経済は再び調整局面に入る可能性が高まっている。新築住宅 販売の伸びは低く、労働市場の改善も進んでいない。不動産バブル崩 壊に伴うストック調整にはまだ時間を要するとみる。21日に発表した ツイストオペはイールドカーブのフラットニング圧力を高め、長期金 利の低下要因にはなるだろが、それ自体が実体経済にどれだけのカン フル剤となるか疑問だ。今後の経済動向次第ではQE3の実施期待が 高まることが考えられる。

欧州ではギリシャのデフォルトが不可避な状況にある。どこかの 時点では、ギリシャの秩序だったデフォルトに向けて、欧州域内の金 融システムの保全策などを準備する必要があろう。ギリシャのデフォ ルトが現実味を帯びてくると、問題はそれがスペインとイタリアに波 及する可能性があることだ。波及の可能性が高まると、欧州域内の金 融機関の資本の既存が顕在化するはずだ。

大手金融機関も資本増強策が必要になるだろう。資本市場がその 負担に耐えられない場合には、国が公的資金を注入することになる。 その可能性は高いとみる。足元のソブリンリスク解決のために必要な 政策は、取りあえずドイツなどがソブリンリスク対象国の救済に必要 な仕組みを構築することだ。しかし、今のところ主要国の見解にはば らつきが見える。そうした状況をみると、欧州ソブリンリスクは改善 への道筋をたどっているとは考えにくい。

展開次第では“第2のリーマンショック”をもたらすことにもな りかねない。ユーロ圏のソブリンリスク問題を過小評価することは適 切ではない。足元でユーロ圏のインフレ率が上昇していることも、E CBの金融政策を制約することになるだろう。

新興国のインフレ率は高止まりし、景気減速の可能性は高まって いる。商品先物価格は銅、ゴムなど大きく下落しているものが多い。 こうした価格調整は景気減速懸念から影響を受けていると考えられる。 先進国での緩和的な金融政策の影響もあり、新興国の物価上昇圧力は 今後も上昇する可能性が高いだろう。

そうした中、わが国の景気は緩やかに回復している。国内の需要 は引き続き弱く、デフレ脱却は容易ではないが震災後の復興需要、生 産活動の回復が進展している。一方、足元の円高はわが国の製造業に とって大きなリスクファクターだ。それはアジア諸国向け輸出の伸び 悩みなどに表れている。

当面、欧米経済の低迷や新興国の景気減速懸念、さらにユーロ圏 のソブリンリスクなどの要因を反映して円高傾向が続くと見られ、輸 出の伸び悩みが、わが国経済の足を引っ張る可能性もあるとみられる。

13)①世界の経済・金融情勢が急変しない限り、今会合で追加緩和が 行わる可能性は低いと見る。②資産買い入れ基金に関して、買入対象 国債の残存期間(1-2年以内)の長期化の議論がなされる可能性は あるだろう。

ただ、わが国の長期金利は1%近傍で推移している。欧州のソブ リンリスクに端を発した“質への逃避”の動きの影響は限定的になっ ている。日銀が保有する債券のデュレーションの長期化は、短期的に カーブをフラット化させる要因にはなるだろうが、それが直ぐに金融 市場の安定や景気刺激につながるとは考えづらい。

ただ、日銀内部には追加的に市中金利を下方にシフトさせたいと いう考えはあるだろう。いずれかの段階で、補完当座預金制度適用利 率(0.1%)の引き下げ、長期国債買入額(月1.8兆円)の増額が検討 される可能性はあるだろう。しかし、それらの政策も、直接的に金融 市場野動向や実体経済に影響を与えるとは考えにくい。

時間軸の強化については、米国が明確な時間軸を採用したことに 影響を受けやすい。これもカーブのフラット化要因となるだろう。資 産買い入れ等基金の対象資産に外債を追加、国債引受については、現 時点では可能性が低いだろう。外債を買い入れることについて、既に 日銀は保証付短期外債を買い入れ対象資産としている。

外債の買入れを追加するよりは、むしろ国内のリスク資産の買い 入れを拡大して市場機能の支援を行うことを考えるだろう。国債引き 受けについては、かねてから日銀が反対している通り、財政ファイナ ンス領域に踏み込むことになる。そのため日銀の反対の姿勢は強く、 実施される可能性は低いとみる。

③次回のFOMCでバーナンキ議長はこれまで同様、景気に対す る慎重な見方と時間軸に関する言及を行うことになるだろう。ユーロ 圏の問題が急拡大するようなことがなければ、ツイストオペ実施後の 会合であるだけに、目新しい追加緩和の発表はないだろう。

ECBはトリシェ総裁最後の理事会となる。特に9月のユーロ圏 CPIが3%に達したことに対して、警戒感が強く示されることにな るだろう。これまでのインフレファイターとしてのECBの政策スタ ンスを考慮すると、市場が期待する利下げが実施される可能性は低下 したとみる。

④新政権下では日銀に対して景気支援へのより強いコミットメン トが求められるだろう。日銀としては、政策の効果はともかくとして、 時間軸の強化などを通して市場金利の水準を促す姿勢を示すことにな るとみる。

一方、当面、円高圧力は今後も続くだろう。輸出企業への影響を 勘案して、今後、円高対策の視点も含めて資産買い入れ等の基金の増 額が決定される可能性がある。わが国は復興需要を成長源泉として潜 在成長率の引き上げ、デフレ脱却、そして財政再建への健全な議論が 進んでいくことを考えるべきだ。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :10月27日会合 3)利上げ時期 :2013年10-12月にレンジ誘導停止し0.05%へ(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.05%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.05%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.05%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.05%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.05%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.05%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.05%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.05%

12)短観は強弱まちまちで、日銀はこれを即時の追加緩和実施の理由 とはし難いだろう。製造業で景況感回復が持続していることと対照的 に、非製造業では停滞が見られる。加えて設備投資計画でも非製造業 が足を引っ張り下方修正。今後サプライチェーン復旧の生産押上げが 一巡してくる中で、海外景気減速の悪影響が出てくることが懸念され るが、短観でまだその点が十分に反映されていないと思われる。

米中は製造業指数が底堅く、既に循環が底入れしている可能性も ある。少なくともリセッションに向かっているような悲壮感はない。 現在の景気悲観論はひとえに欧州債務危機とそれによる信用収縮への 懸念に根ざしていると思われる。早ければ10月末と見られるギリシャ 第2次支援の詳細決定で、「第2リーマンショック」の発生は当面回避 され、リスク回避の流れが弱まろう。欧州銀行への資本注入があれば、 リスクテークを強めるきっかけとなろうが、当面は見込み薄。

円高にもかかわらず短観では(円高により影響を受けるであろう) 製造業でDIが改善を続け、設備投資も上方修正されていた。海外投 資の増加など中長期的な影響は大きいと思うが、足元の円高が景気の 腰を折るとの見方は妥当でない。一方、非製造業が弱いのは、復興予 算が組まれても実施に移されておらず、経済に恩恵が行き渡っていな いためと見られ、その方が景気の先行きに重大な影響をもたらす。

13)今会合では政策据え置きを予想。いずれにしろ緩和する場合は効 果を高めるため、政策を小出しにするのではなく、まとめて打ち出し てくるだろう。よって資産買い入れ等基金の増額・年限延長に加え、 利下げの可能性も十分あると見ている。白川総裁は8月会合での緩和 後に「不確定要因を前広に取り込んだ」と述べており、先手を打ったこ とを強調している。

だがこの時点で、FRBが9月会合の緩和策に続き、さらに「次 の一手」を検討することは想定していなかっただろう。11月1、2日 の FOMCで追加緩和策を決定(時間軸の強化。利下げの可能性もあ る)する可能性も高い。日銀は8月にFRBに先んじて追加緩和を実 施、政府の為替介入も相まって円高圧力を一部抑えることに成功した。

次回緩和のタイミングは市場のリスク回避姿勢に影響を受けると 思われるので不確実な部分は大きいが、幸か不幸か日銀は10月中 (10/27)、次回FOMC前にもう一度政策会合が予定されている。現 在の市場のリスク回避姿勢には各国単独の金融緩和では影響力が小さ い。ECBが利下げする覚悟を決めるならば、日銀、FRBは既に追 加緩和バイアスであるため、G3で協調緩和を実施することも視野に 入ろう。今週の会合ではないと思う。次のG20(10/14・15)後だろう。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年10-12月(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)短観は①震災からの正常化に伴い企業の業況判断が大きく改善し たこと、②ただ、業種別にみると既に需要(特に海外需要)の弱さに 直面する業種が出始めていること、③企業の先行きの業況に対する見 方も一定の底堅さを維持していること、④設備投資も当面底堅く推移 する可能性が高いこと-を示した。

6月調査以降、欧州ソブリン債務危機の深刻化に伴う金融市場の 動揺や欧米景気の下振れリスクの高まりといった新たな展開があった が、企業部門を全体としてみる限り、それらが企業の業況と先行き見 通し、あるいは設備投資計画に明確な影響を与えるには至っていない。 企業部門は今のところ底堅い。

ただ、ギリシャは日本の年度内にも債務リストラに追い込まれる と予想している。その際、他の周辺国への波及を食い止めるセーフテ ィーネットが不十分であれば、欧州でインターバンク市場の緊張が一 段と高まるだけでなく、リスク回避の強まりから世界的に資金調達環 境が悪化することが予想される。

そうした中、グローバル企業が人員採用や在庫・設備投資を凍結 する事態を迎えれば、その余波は日本にも及ぶ可能性が高い。リーマ ンショック後のような極端な状況は避けられるにしても、日本経済に もはっきりとした影響が及ぶだろう。日本の輸出・鉱工業生産は12 年前半、緩やかながら減少することが見込まれる。また、そうした中、 来年春以降、コアCPIの前年割れが定着しよう。

この間の円高ドル安のインパクトはやや過大評価されている印象 を受ける。日本の製造業は円の対ドルでの上昇の悪影響を抑えるため、 ドルの受取・支払をバランスさせるなど、さまざまな対応策をとって きた。ただ、円の対ユーロでの上昇についてはこうした対応が難しく、 企業収益にかなりの悪影響を及ぼす可能性が高い。

13①追加緩和の可能性は低い。その背景としては、第1に、白川総裁 が先週、8月4日の資産買入等基金の増額について、「さまざまな不確 定要因を相当程度前広に取り込み、思い切った金融緩和を行ったもの です」と指摘したことがあげられる。ソブリン債務危機の深刻化に伴 う金融市場の動揺や、欧米景気の下振れリスクの高まりといった8月 4日以降の情勢変化に対しても、既往の緩和措置で対応することが可 能という判断をにじませたものと考えられる。

第2に、中間決算期末を通過する中、円ドル相場は比較的安定し ている。②今後、追加緩和が実施される場合、資産買い入れ等基金の 買入対象国債の年限長期化(例えば5年まで)が中心的な選択肢にな るとみている。より長い金利を押し下げるための措置と位置づけられ ようが、既に中期ゾーンの金利が極めて低い水準であることを踏まえ れば、基本的に、象徴的な措置の域を出ないだろう。

準備預金に対する付利金利の引き下げは緩和効果が限定的である 一方、市場機能を低下させるという副作用を有するため、実施される 可能性が低いだろう。長期国債買い入れの増額はこれまで長期資金の 供給円滑化という文脈の中で行われてきており、銀行間市場が正常に 機能している状況下では実施される可能性が低いだろう。

③FOMC会合は現状維持を見込む。ECB定例理事会は、1)12 カ月物の長期資金供給オペ(LTRO)の導入、2)カバードボンドの 購入再開-を予想。ただ、インフレ率が目標圏を上回る中、今回は利 下げは見送られよう。

④今後の金融政策運営の最大の鍵は欧州情勢が握る。上述の通り、 欧州で無秩序な形で債務リストラが実施され、国際金融市場の緊張が さらに高まる事態となれば、その余波は、主に輸出への下押し圧力を 通じて、日本経済にもはっきりと及ぶことになろう。その場合、追加 緩和、具体的には資産買い入れ等基金の増額と買入対象国債の年限長 期化の可能性が高まろうが、タイミングは年明けを想定している。た だ、円高ドル安が再び進行すれば、年明けを待たずに追加緩和が行わ れることも十分に想定される。

●バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)短観では輸出売上の下方修正など世界経済鈍化の影響が確認され ており、それが設備投資計画に影響した面もありそうだ。為替想定も まだ81円台であり、下期は投資に慎重なムードが現在以上に強まる可 能性もある。欧州債務問題は市場センチメントを冷やし、株価下落を 通じて金融面から世界経済の実体面にもじわじわと影響を及ぼし始め ている。

ただし、中国の引き締め継続や日米の在庫増加傾向など、純粋に 循環的な要因でも世界経済はスローダウンしており、仮に今月中旬の G20で欧州問題のある程度の前進が確認されたとしても、ファンダメ ンタルズ面での自律反転が直ぐに見られてくるわけではないだろう。 むしろ、来年1-3月まではトレンドとして世界経済の実体面が軟化 してゆくことが想定される。ただし、直近のCPIを見ても、そうい った景気面で弱い基調が見られる一方で、物価に関しては下振れ感が むしろ若干後退しつつある。

13)①追加緩和の可能性はゼロではないが低い。あるとすれば資産買 い入れ基金の国債購入年限の長期化か、②実質的な市場価格への影響 が大きいのは「国債引受」、「利下げ」、「外債購入」、「長期国債買い入 れ増額」の順で、買い入れ期間長期化、時間軸の強化はほとんどアナ ウンスメント効果にとどまる。③ECBは25bpの利下げの可能性があ る。

④新政権が過度に金融政策に圧力を加える構図はあまり想定され ない。年内の追加措置は今回の会合以降、為替が円高傾向を強めてき たタイミングで資産買入国債の年限長期化等の措置が採られる可能性 がある。