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【コラム】欧州危機を正しく理解するための「ユーロ語」辞典-ワイル

欧州債務危機を理解しようとする 際、大半の米国人は失敗を犯している。ユーロが消える運命にある通 貨だということを分かっていないばかりか、ユーロ独自の言葉がある とことにも気付いていないのだ。

現代の大きな不幸の多くは、コミュニケーションの失敗に起因す る。ドイツ出身のポップ・デュオ、ミニバニリの口パク疑惑もそうだ った。そして10年前には、ギリシャ政府が負債を実際よりも少なく見 せ始めた。こういったごまかしを最初からしっかり注意して見ていれ ば、余計な痛みや苦しみを避けることができたはずだ。

平均的な米国人にとっては、欧州の指導者が訛りの強い英語を話 すことにも苦労する。さらに悪いことには、言葉が理解できたとして も、話の内容を理解するのは不可能に近い。彼らが話しているのは「ユ ーロ語」だからだ。

幸いなことに、この終わりの見えない問題にも解決策がある。以 下は、ユーロ語辞書からの抜粋だ。欧州を震撼させているこの危機の 意味を理解するためには、以下に挙げたユーロ語10語の意味を知る必 要がある。

1.財務省:政府の指導者が救済や経済的奇跡など、神の御加護を 祈願する場所。用例:ギリシャの財務省の当局者は、デフォルト(債 務不履行)の回避に向け、救済融資の次回分を受け取ることを引き続 き期待していると述べた。

2.協調した:混沌とした、焦点が定まらない、脳死の、存在がな くなるほどまひが進行すること。良くてせいぜい、どうしようもなく 間抜けな人間に似ている状態。用例:20カ国・地域(G20)財務相・ 中央銀行総裁会議は先週、「世界経済が直面する新たな課題に対し、力 強く協調し国際的に対応することを確約する」と強調した。

3.ファイアウオール: 炎の拡大を防ぐため防火素材でできた隔 壁。金融危機の封じ込めには全く役に立たない。ナパーム弾と10年債 の区別がつかないニュース記事の読者に対するあいまいな宣伝文句と して使われる。

4.感染: 金融を通じて伝染する精神状態。全てを失ってしまうと いう激しい恐怖が特徴。現在知られている治療法はファイアウオール だけで、実際に効果はない。

5.周辺国: 欧州連合(EU)に不可欠な、中核的な加盟国。関連 語:ソブリン。ドイツまたはドイツに従属すること。

6. 安定化メカニズム: ゴム製ボールがひもで付けられている木 製のラケット。会社員の間で何回失敗せずにボールをラケットで跳ね 返すことができるか競争するのに使われる。瀕死の経済に対する万能 薬として宣伝されている。

7. TORRP: 待望の欧州版の問題資産購入計画(TARP)。 略語は、イタリア(Italy)、ポルトガル(Portugal)、アイルランド (Ireland)、ギリシャ(Greece)、スペイン(Spain)からそれぞれ、 2文字目を取ったもの。

うわさによると、問題債務救済救済計画(Troubled Obligation Relief Relief Program)の略語で、救済からの救済を意味するとされ ている。米国のTARPとは異なり、欧州の銀行に渡ったTORRP の資金は決して返済されないことは保証済み。

8.制御された形でのデフォルト:ほとんどの債権者に金を返さな くても問題ないと他国の政府に伝えた上で、世界の金融システムが崩 壊するかどうかを病的な陶酔状態で観察する行為。

9.資本増強:一国の中産階級の納税者が収めた資金を、支払い不 能に陥った銀行に注入すること。実質的には、債券保有者や経営幹部 への賄賂。これにより、富裕層が決起して政府を転覆させることを防 ぐ。

10.カバード債購入プログラム:あまりにも複雑で説明不能。

TORRPと欧州安定化メカニズム(ESM)を通じ、欧州の銀 行の資本増強や域内経済の活性化を目指す計画のほかに、秩序ある制 御された形でのギリシャのデフォルトという選択肢もある。ただ、欧 州の指導者がそれを公の場で表明する用意はまだない。彼らの言って いることが全く理解できなくても、われわれが運命共同体であること を忘れないことが重要だ。 (ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラム ニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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