弾むゴム相場、空前のタイヤ需要で-中国けん引、日本車生産も回復

タイヤの年間販売が過去最高を更新 する見通しとなっている。世界一の新車市場となった中国などの需要に 加え、東日本大震災から立ち上がった日本の自動車生産が回復している のが背景だ。これに伴い主原料である天然ゴム価格が再び上昇すると市 場関係者はみている。

今年上期に中国で売れた自動車台数は、世界2強の米ゼネラル・モ ーターズ(GM)と独フォルクスワーゲン(VW)が世界全体に向けて 出荷した台数の合計を上回った。震災で生産調整を余儀なくされていた トヨタ自動車や日産自動車は、10月末までにフル生産に戻る。

野村証券の桾本将隆アナリストの予想によると、2011年の世界自動 車販売は7696万台と、過去最高だった10年の7259万台を上回る見込 みで、12年8310万台、13年8955万台と拡大が続く。

これに伴いタイヤ需要が増加、主原料のゴム相場も上昇しそうだ。 シティグループ証券株式調査部の吉田有史ディレクターによると、今年 のタイヤ需要は6.5%増える見込みで、その後も12年は5.7%増、13年 は4.6%増とみている。タイヤは7割が交換用で、3割が新車向けとい う。

ブルームバーグ・ニュースがトレーダーやアナリストら15人を対 象に調査した予想中央値によると、シンガポール商品取引所(SICO M)の天然ゴム先物相場は、年末までに1キロ当たり5ドルに上昇する 見込み。今年は2月に過去最高の6.49ドルを付けたあと反落、7月以 降は4ドル台で推移している。

タイヤ値上げ

タイヤ最大手のブリヂストンや日本ミシュランタイヤは、トラッ ク・バス用新品タイヤの国内出荷価格を9月から平均10%引き上げた。 値上げは両社とも今年2度目。ブリヂストンは北米でもファイアストン との共同ブランドのトラック・バス用ラジアルタイヤ(市販用)などを 11月から最大8%値上げする。

ブリヂストン広報担当の富澤薫氏はブルームバーグ・ニュースの電 話取材に、天然ゴムや合成ゴムなど原材料価格が高値で推移していると 指摘、「ものすごく影響があり、実際これをカバー仕切れていない」と 説明した。

ブリヂストンの荒川詔四社長は5日の記者会見で、トラック・バス 用タイヤの11年の売り上げが前年比10-20%程度増加するとの見通し を示した。同席した江藤彰洋執行役員は「365日24時間フル稼働してお り、生産能力を急に増やすことはできない」と説明、需要増に対応して 「100%供給するのは厳しくなっていく」と話した。

ブルームバーグ・ニュースがアナリスト13人を対象に集計したブ リヂストンの11年12月期通期の純利益予想平均値は前期比19%増の約 1175億円。同社の株価は過去1年間に7.3%上昇している。

需給ひっ迫

シティグループ証券は、タイヤの主原料である天然ゴムの12年の 消費量に対する在庫率は12%と08年以来の水準まで低下するとみてい る。吉田氏は「過去にこれほどまでひっ迫したということはなかった」 と指摘。「リーマンショックがあってタイヤメーカーが一時的に生産能 力増強を止めたため、生産が遅れている」と言う。

国内資産運用会社、アストマックスの江守哲チーフ・ファンドマネ ジャーは、欧州債危機の懸念から経済見通しに悲観的な見方がある ものの、天然ゴム相場の年末までの動きは「基本的には強い。需給は順 調だ」と指摘。「中国の自動車販売台数は鈍化しているが、一応伸びて いる。自動車そのもの以上にタイヤ需要の方が強い」とみる。

国際ゴム研究会(IRSG)によると、天然ゴムの世界消費の約6 割はタイヤ向け。シティグループ証券の予想では、天然ゴムは12年の 世界の消費量が前年比5.3%増の1158万トンと3年連続で増加する一方、 生産量は5.4%増の1159万トンになる見込みで、在庫率の低下を止める には十分ではないとみている。

欧州債務危機

一方で、野村証券金融経済研究所の山岡久紘アナリストは、天然ゴ ムの供給が膨らむ可能性も指摘する。主産国のタイやインドネシアでは 4-6年前に植樹したゴムの木が成長し、供給量は来年には増加すると いう。

山岡氏によると、最大の輸出国であるタイの天然ゴムのプランテー ション面積は、05年に5%、06年に5.5%、07年に7.1%と、それぞれ 増加しており、価格は「需給がひっ迫してどんどん上がるとはみていな い」いう。

また欧州債務危機などの影響が深刻化した場合、経済成長がさらに 減速する懸念もある。中国人民銀行(中央銀行)は昨年10月以降、5 回の利上げを実施し、預金準備率も記録的な水準に引き上げている。中 国汽車工業協会(CAAM)は7月、中国の11年の自動車販売台数見 込みを昨年比5%程度の増加と、従来の10-15%増から下方修正した。

合成ゴム

とはいえ、タイヤのもう一つの主原料である合成ゴムの価格も14 年ぶりの高値に達し、天然ゴム相場の押し上げ要因になっている。合成 ゴム売上高で国内首位のJSRは原料価格の上昇を受けて8月に製品 価格の5-15%程度の引き上げを発表した。値上げは今年に入ってから 3度目となる。

天然ゴムの最大生産国のタイでは、天候要因で出荷時期にも影響が 出ている。同国南部のタラン県で天然ゴムを生産するウィワット・アナ ンタラット氏は、ブルームバーグ・ニュースの電話取材に対して、「先 月から降り始めた雨でタッピング(樹液の採取)は遅れており、病害も発 生している」と述べた。

アナンタラット氏は、天然ゴム相場について「1キロ100バーツ (3.3ドル)以上の値段であれば十二分にありがたい」といい、「タッピ ングで得た現金で2階建ての家を建てたし、プランテーションも大きく した」と語った。