金塊の保管スペースを確保せよ-価格高騰と需要急増で金庫新設相次ぐ

シンガポール・チャンギ国際空 港の滑走路脇にある面積3万平方キロメートルのセキュリティー施設、 フリーポート。その奥深くにスイス・プレシャス・メタルズの金塊保 管金庫はある。7トンの鉄扉を構え、飛行機の墜落事故や地震が起き ても耐えられる設計だ。

スイスのジュネーブに本拠を置く同社がこの施設をオープンして 以来、需要は5倍増となり保管スペースはほぼ一杯になっている。同 社は施設の拡張を計画するとともに、需要急増に対応するためジャ ン・フランソワ・ペイジス最高経営責任者(CEO)を先月シンガポ ールに転勤させた。投資家は金庫に預け入れる現物資産に対し、最大 1%に相当する年間保管料を支払うこともいとわない。

ペイジスCEOは「債務危機とそれによる金融機関の支払い能力 への影響を懸念して、欧州の顧客は金現物やその他の貴金属といった 有形資産への逃避を強めている」と指摘。需要の急増については、 「現在の金融、政治の世界的混乱と完全に連動している」と説明した。

一方、バークレイズ・キャピタルは新しい金庫を建設中だ。警備 輸送会社のブリンクスとドイツ銀行も施設を拡大する可能性があるほ か、パース造幣局は2003年以来初となる増設を検討している。11 年に及ぶ金相場の上昇局面で価格が7倍に跳ね上がった後も、需要は 伸び続けるとの各社の見通しを示唆している。

金連動型ETF(上場投資信託)商品への投資が膨らみ、03年 以降その金購入量は2198トンと、4カ国の政府保有量を除いて最大 となっている。

年内に2000ドル超えの予想

金先物価格は9月6日に1オンス=1921.15ドルと最高値を更 新した。株安や経済活動の縮小、各国中銀・政府の景気刺激で世界の 金融システムに2兆ドル超の流動性が投入されたことなどを背景に、 金の価格は07年末の2倍を超えた。

ブルームバーグ・ニュースがロンドン地金市場協会(LBMA) のモントリオール会合で16人を対象にまとめた調査によれば、金価 格は年内に2000ドルを超えるという予想平均が出た。さらに、来年 には最高2268ドルに達するとの見方が示された。

保管各社もこれに対応している。ウエスタン・オーストラリア州 政府が保有する創業112年のパース造幣局は、来年中に新たな金庫 を建設する可能性がある。会計担当者のナイジェル・モファット氏が 明らかにした。パース造幣局は金貨から400オンス(12.5キロ) の金の延べ棒まで、幅広く販売している。

投資家は預けて安心

金塊輸送で英国最大手のブリンクスは、今年ロンドンに金庫を新 設したが、さらなる保管スペース拡大を検討している。バークレイズ はロンドン市内で金庫の建設を進めており、来年にも開設の予定だ。 同社が先週の発表で明らかにした。

ドイツ銀行は既存施設の拡大のほか、新設によって需要に対応す ることを検討中だ。同行のディレクター、マシュー・キーン氏が今月 表明した。

JPモルガン・チェースは昨年、シンガポールのフリーポートで 金庫管理を始めたほか、ニューヨークの金融街にも金庫を開設した。

創業50年になる貴金属小売りのゴールドライン・インターナシ ョナル(カリフォルニア州サンタモニカ)のスコット・カーター最高 経営責任者(CEO)は、「現在の金の価格を考慮すれば、所有者に は保管金庫や銀行の貸金庫に預ける方が安心感も得られるので薦めら れる」と語った。