IMF試算:欧州の銀行、ソブリン債危機発の信用リスク31.3兆円

欧州の債務危機は域内の銀行 に対し最大で3000億ユーロ(約31兆3000億円)の信用リスク を生じさせたと、国際通貨基金(IMF)が試算した。IMFは投 資家を安心させ融資を支えるため、銀行への資本注入を呼び掛けた。

危機拡大阻止の方法をめぐる欧州の政治的対立と、合意した措 置の実行の遅れが、域内の政府がデフォルト(債務不履行)に陥る リスクへの懸念を高めているとIMFは指摘。この結果、銀行が「調 達困難」に見舞われており、銀行の保有国債で発生し得る損失につ いて投資家が懸念していると説明した。一部の銀行は流動性を欧州 中央銀行(ECB)に強く依存しているとも指摘した。

IMFは21日に公表した世界金融安定報告で、「債権者と預 金者の信頼を確実にするために、多数の銀行で資本増強が必要だ」 とした上で、「追加の資本バッファーがなければ、資金調達におけ る問題が銀行にレバレッジ低下を迫る圧力となる公算が大きく、こ れは実体経済への与信縮小につながるだろう」と分析した。

IMFは20日の世界経済見通しで世界の成長率予想を下方修 正し、債務問題の対応に失敗すれば深刻な悪影響が生じると警告し た。この日の報告では、政府による公的債務削減への「信頼できる」 取り組みに加え、銀行の資本増強が求められており、場合によって は公的資金注入を通じての増強も必要だと論じた。

米国と日本も中期財政計画の策定

ECBは英国とスイス、日本、米国の中央銀行とともに先週、 3カ月物のドル資金を無制限に供給すると発表した。ギリシャがデ フォルトに向かっているとの懸念を背景に欧州、特にフランスの銀 行の資金調達環境が悪化したことに対応した。

IMFは欧州の銀行が抱える信用リスクの試算額は必要な資 本の額とは異なるとして、必要資本額を算定するには完全なストレ ステスト(健全性審査)が必要だと説明した。分析は欧州銀行監督 機構(EBA)のストレステストで公にされたデータと国際決済銀 行(BIS)の数字に基づいているという。

IMFは米国と日本に対しても中期的な財政計画の策定を呼 び掛けた。「特に、米国が財政問題に適切な対応を取らない場合、 世界経済と金融への悪影響は数多い」と指摘した。

IMFの金融・資本担当ディレクター、ホセ・ビナルス氏は、今 年結果が公表された欧州のストレステストをIMFが批判しているわ けではないと説明した。同氏はワシントンで記者団に対し、「その後 に事態は変わった」とした上で、IMFは「欧州連合(EU)の銀行 に必要な資本の額を見積もろうとしているわけではなく、ソブリン債 リスクがかなりの規模で銀行に波及しており、それが市場の緊張をも たらしている」ことを指摘しているものだと語った。

波及する影響だけで2000億ユーロ

「監督当局が細心の注意を払って検証し、資金調達の適正な環境 を得るために銀行が必要とする資本バッファーの規模を決定しなくて はならない」と付け加えた。

IMFはまた、新興市場の銀行も世界の成長鈍化による影響を 免れることはできないと指摘。数件の衝撃を組み合わせたシナリオ では新興市場の銀行の自己資本比率が6ポイント押し下げられる と試算した。

IMFのラガルド専務理事は欧州銀行の資本増強を呼び掛け たが、ドイツやスペインの当局者はこれに反論した。ECBのトリ シェ総裁は資本を計算する手法がIMFとECBで異なると指摘 した。

IMFのアナリストらはギリシャとアイルランド、ポルトガル、 ベルギー、イタリア、スペイン債市場の信用関連の緊張が銀行に及 ぼす影響の大きさを査定。クレジット・デフォルト・スワップ(C DS)のスプレッドを利用したという。

IMFはソブリン債から銀行に「波及する影響」だけでも約 2000億ユーロに達するとし、これに銀行が保有する銀行資産の価 値下落を加えると合計で3000億ユーロに達すると計算。危機に見 舞われた国では銀行の価値も下落していると指摘した。

原題:IMF Sees 300 Billion-Euro Credit Risk to