恋人は戦国武将-ソーシャルゲームは女性支持も受けて拡大へ

「癒されたい」-東京都在住の会社 員、鈴木たか子さん(28)の1日は、携帯電話で「恋人」を見つめて 始まる。「恋人」は武将を模したソーシャルゲームのキャラクター。武 将と恋愛できる「いざ、出陣!恋戦」(ジグノシステムジャパン、東京 都千代田区)は、手放せないゲームとなっている。

鈴木さんがこのゲームで「恋愛」を楽しむのは、ほぼ毎日。仕事 では上司から厳しいことを言われることもある。帰宅後、寝る前にも 携帯を手に取る鈴木さんは、ゲームの武将の優しい言葉に気持がほぐ れる。「現実の男性はそこまで甘い言葉を掛けてくれない」。それが、 鈴木さんがゲームに夢中になる理由のようだ。

ソーシャルゲームは、専用のゲーム機やソフトを買う必要がなく、 携帯電話やスマートフォン、パソコンで手軽に始められる。交流・ゲ ームサイトを運営するディー・エヌ・エー(DeNA)とグリーが先頭 に立って市場を拡大させてきた。BNPパリバ証券の山科拓アナリス トによると、女性向けソーシャルゲームの市場規模は2010年の60億 円から15年には200億円に拡大する見込みとしており、これからは、 女性向けゲームの伸びも市場拡大を後押しする。

DeNAやグリーなどに女性向け恋愛ゲームを提供しているボル テージの東奈々子副社長は、「女性が社会進出している中、おひとりさ まなど、やはりほっとしたい、自分を受け入れてほしいというニーズ が利用者数の増加につながっている」と分析する。

グリーのマーケティング担当の木村哲哉氏は「女性向け恋愛ゲー ムというのはひとつの大きなジャンルとして確立されている」と話す。 グリーが提供するソーシャルゲームのうち、約1割が女性向け恋愛ゲ ームだという。

男性の草食化も女性をゲームに走らせる

第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは、「今まで、ゲ ームの対象は男性だったが、市場拡大に女性開拓は不可避。男性の草 食化などで現実の恋愛を経験できず、女性が恋愛ゲームにはまってい るのではないか」と指摘した。

日本オンラインゲーム協会の川口洋司事務局長によると、国内ソ ーシャルゲームの市場規模は10年の1036億円から15年には約1800 億円になると推計されるという。一方、ゲーム専門誌「ファミ通」を 発行するエンターブレインによると、家庭用ゲームソフトの市場規模 は縮小傾向が続いており、10年は3181億円と3年前に比べ12%減少。 その差は縮まりつつある。

ソーシャルゲームの特徴は、無料で始められることだ。しかし戦 闘ゲームの武器のように、ゲームの途中で必要になるアイテムを購入 する際に課金され、それがゲームメーカーの収益となる。ソーシャル ゲーム大手のDeNAやグリーも市場拡大に伴って成長が続く。

10億人宣言

グリーのユーザーは全世界で1億3000万人以上。2004年に発売さ れた任天堂の携帯ゲーム機「DS」と後継機「3DS」の発売台数約 1億5000 万台に迫るところまで来た。グリーの11年6月期の売上高 は単体で642億円と4年間で199倍に拡大した。

15日から行われた世界最大規模のゲームの見本市「東京ゲームシ ョウ2011」に最大級のブースを出展したグリーの田中良和社長は基調 講演で、「10億人が利用するサービスを作る」と宣言。ブルームバーグ の取材に、「早ければ3年で海外売上高比率最大8割を目指す」と拡大 路線を強調した。

ソーシャルゲーム市場拡大の恩恵を受けているのは両社だけでは ない。コンテンツを提供するコナミやカプコンなど大手ゲームメーカ ーも相次いでソーシャルゲームを重視し始めた。グリーにサッカーと 野球ゲームを提供するコナミのソーシャルゲームの登録者は1000万人 と堅調。同社の11年4-6月期のソーシャルゲームからの売り上げは、 前年同期と比較して3倍となった。

カプコンも4月、スマートフォン向けゲームの開発・配信を手が ける子会社ビーライン・インタラクティブ・ジャパンを設立。ゲーム の「スマーフ・ビレッジ」は、1000万件のダウンロードがあった。同 社の小田民雄CFOは15日、「ソーシャルゲーム市場は拡大しており、 重要度も増している」と述べた。

ソニー、任天堂もネットワークで対抗

ソーシャルゲームの攻勢を受ける任天堂やソニーは、無線LAN (域内通信網)であるWiFiなど、ゲーム機のネットワーク接続の 拡張によってユーザーを増やそうとしている。

任天堂は、カプコンの人気ソフト「モンスターハンター」を3D Sに12月に投入する予定だ。WiFiを通じて複数のユーザー同士で 遊べる。ソニーは携帯ゲーム機「プレイステイション ヴィータ(P S Vita)」を国内では12月17日に発売予定。WiFiの回線を使う 機種を用意している。

グリーの田中社長は「ソーシャルゲームとゲーム機用のゲームの カニバリズム(共食い)はない」と強調するものの、任天堂などの既 存大手とDeNA、グリーなどの新興勢力との勢いの違いは鮮明だ。

任天堂のDSはかつて、健康志向が高まるなかで脳をトレーニン グして活性化させるゲームソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニン グ」がゲームに関心の薄かった高年齢層を引き付け、ユーザー拡大に 貢献したことがあった。今回は、ボルテージの東副社長が指摘するよ うに、女性の社会進出や結婚年齢の上昇など社会的な変化をうまくと らえることがゲームの将来を左右する一因になる可能性もある。

取材協力: 藤村奈央子

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