9月8日の海外株式・債券・為替・商品市場

欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は次 の通り。

◎NY外為:ユーロ大幅安-ECB総裁が景気下振れリスクに言及

ニューヨーク外国為替市場では、ユーロがドルに対し1カ月で最大 の下げとなった。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁がユーロ圏経 済に対する下振れリスクが強まったとの認識を示し、利上げ見通しが後 退したことが背景。

また米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の講演で、 追加の刺激策に関する具体的な示唆がなかったことに反応してドルが 上昇し、株価は下落した。ユーロはスイス・フランを除くすべての主 要通貨に対して値下がり。トリシェ総裁がインフレリスクはもはや上 向きでないとの見解を明らかにしたことに反応した。フランは大幅安。 スイス国立銀行(SNB、中央銀行)がフラン押し下げの方針を貫く との観測が広がった。

ゲイン・キャピタル・グループのシニア為替ストラテジスト、エ リック・ビロリア氏(ニューヨーク在勤)は「トリシェ総裁はECB の引き締めサイクルを終わらせた。これはかなり重要な意味を持つ」 と指摘。また、「一部の市場参加者はバーナンキ議長の講演がもっとハ ト派寄りのトーンで、いつくかの手段の実行をより確信させるような 発言を期待していた。そうした発言があればリスク通貨にはプラス、 ドルにはマイナスという形になっていた」と述べた。

ニューヨーク時間午後5時現在、ユーロは対ドルで前日比

1.5%安の1ユーロ=1.3882ドル。下落率は8月4日以来最大。対 円では1.2%下げて107円59銭。ドルは円に対し0.3%上昇し、1 ドル=77円51銭。

主要6通貨に対するドル指数は1.1%上昇し76.272。株式市場 ではS&P500種株価指数が1.1%安。

「下方向リスク」

トリシェ総裁は政策決定後の記者会見で、ユーロ圏経済は「特 段に高い不確実性と、従来より強い下方向リスク」に直面している と述べた。ECBはこの日公表した最新の見通しで、今年と来年の成 長率予想を下方修正した。トリシェ総裁は、インフレリスクは「概ね 均衡している」と述べた。8月の会見では「上方向」としていた。

同総裁は、ECBがインフレ率について今年は平均2.5-2.7%、 来年は同1.2-2.2%と予想していると述べた。

シティグループのG10(主要10カ国)通貨戦略責任者を務める スティーブン・イングランダー氏は「トリシェ総裁は非常に慎重に差 し迫った事態ではないことを示唆していたが、市場は今後の利下げの 可能性のサインととらえた」と指摘。ユーロには「まだ下げる余地が ある」と続けた。

ECB利上げ観測

クレディ・スイス・グループのスワップに基づく指数によると、 トレーダーらはECBが向こう12カ月間で政策金利を30ベーシスポ イント(bp、1bp=0.01%)引き下げると見込んでいる。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のG10戦略グローバ ル責任者、レナ・コミレバ氏は「ユーロ圏の景気および金融安定の面 でのリスクの方向性は、ECBが政策緩和を余儀なくされるのが単な る時間の問題であることを意味している。緩和策は向こう数カ月にわ たるバランスシートの拡大と中銀預金金利の引き下げとなりそうだ」 と指摘。「投資家はユーロを売る理由を探していた。きょうECBの政 策方向性のUターンは、売りに動く投資家を勢い付かせるには十分だ った」と続けた。

ドルは対円で前日の下げから反発。ニュージーランド・ドルを除 くすべての主要通貨に対して値上がりした。バーナンキFRB議長が この日の講演で、議会による財政引き締めが脆弱(ぜいじゃく)な景 気回復の妨げになる可能性があるとの認識を示したことも手掛かり。

議長は、「より短期間で顕著な財政再建を実施すれば、経済成長お よび雇用への向かい風を強める可能性がある」と指摘した。

◎米国株:下落、具体性欠いたバーナンキFRB議長の講演で失望売り

米株式相場は下落。バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長 が講演で米景気浮揚策の詳細に触れなかったことへの失望から、売りが かさんだ。

S&P500種株価指数の産業別10指数で金融株と資本財株は 特に下げた。米銀JPモルガン・チェースや航空機メーカーのボー イング、化学のデュポンを中心に景気敏感株が下落した。ディスカ ウント店のダラー・ゼネラルは5.7%安。株主が2500万株を売却 すると発表したことが嫌気された。

S&P500種株価指数は前営業日比1.1%安の1185.90。産 業別10指数はいずれも下落した。ダウ工業株30種平均は119.05 ドル(1%)安の11295.81ドル。この日の米国株はバーナンキ議 長の講演後に下げ幅を拡大した。同議長は8月26日のジャクソンホ ール講演での要点を繰り返すにとどまり、FRBが最善と考える景 気浮揚策を示唆するに至らなかった。

USAAインベストメントの株式投資バイスプレジデント、 ワシフ・ラティフ氏は、「FRBの具体的な政策が分かるような信 頼できる発言が期待されていた」と述べ、「何ら具体性はなかった。 不透明感が払しょくされるまで、相場は一進一退を続ける。今の病 的に抑圧的なマーケットは続くだろう」と続けた。

前日の相場の上げ幅は8月23日以来で最大だった。オバマ米 大統領の提案する景気・雇用法案が経済成長を押し上げるとの観測 が買い材料だった。大統領は8日夜、上下両院合同会議で演説する。

バーナンキ議長の講演

バーナンキ議長は、議会とオバマ大統領は連邦政府の財政を 長期的に「持続可能な軌道」に乗せる必要があるとしつつ、政策決 定者は「景気回復の脆弱さを無視すべきではない」と警告した。

同議長は、今月開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で 景気浮揚に向け利用可能な手段について議論し、必要に応じて実行 する用意があると述べた。

景気敏感株で構成されるモルガン・スタンレー・シクリカル 指数は2.2%下げた。景気動向の目安とされるダウ運輸株平均は

1.3%安。24銘柄で構成されるKBW銀行指数は2.7%下げた。

JPモルガンは3.8%安。ボーイングとデュポンはそれぞれ

3.2%と2.2%値下がりした。

ヤフーは上昇

一方、オンライン検索のヤフーは6.1%上昇した。米サー ド・ポイントは同社株5.2%を購入した上、ヤフー取締役会の辞任を 求めた。その理由として、打診された買収案を拒否するという間違い を犯し、適任ではない人材を最高経営責任者(CEO)に起用したこ とを挙げた。

ヤフーのロイ・ボストック会長は6日、電話一本でキャロ ル・バーツCEOを解雇した。バーツ氏は、売り上げ拡大と株価上 昇を伴う同社の再活性化を期待されてヤフーに起用された。ヤフー は2008年、米マイクロソフトから買収案を提示されたが、これを 拒否している。

◎米国債:利回りが過去最低に接近、FRB議長発言で追加緩和観測

米国債相場は上昇。10年債利回りは過去最低付近に低下した。バ ーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、20-21日開催の米 連邦公開市場委員会(FOMC)で景気浮揚に向け利用可能な手段につ いて議論し、必要に応じて実行する用意があると述べたことが手掛か り。

2年債と10年債の利回り格差(スプレッド)は過去約1年で最 小に近い。FRBが短期債の保有を減らし、期間が長めの国債を購入 するとの観測が広がった。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が 景気の「下振れリスク」は増していると発言。これを材料に、米国債 相場は堅調を維持した。オバマ米大統領の雇用創出計画の発表を控え ていることも背景にある。

MFグローバルの債券部門シニアバイスプレジデント、リチャー ド・ブライアント氏は「FRBの動きやFRBが米国債に引き続き関 わっていくという見通しだけに意識が集中している」と指摘し、「資 産購入へ向けた筋書きが出来上がりつつある。米国債は引き続き強力 に下支えされている」と語った。

ブルームバーグ・ボンド・トレーダーによると、ニューヨーク時 間午後4時1分現在、10年債利回りは前日比6ベーシスポイント (bp、1bp=0.01%)低下の1.98%。同年債(表面利率

2.125%、2021年8月償還)価格は18/32上昇の101 9/32。 10年債利回りは6日に一時1.9066%まで下げ、過去最低を記録し た。

イールドカーブ

30年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01ポイ ント)下げて3.31%。2年債利回りはほぼ変わらずの0.19%となっ ている。2年債と30年債の利回り格差はこの日3.12ポイント。6 日には一時3.08ポイントに縮小し、終値ベースでは10年8月以降 で最小となった。

バーナンキFRB議長は8日、ミネアポリスで講演。「政策当局者 らには物価の安定を保ちつつ、より力強い景気回復を後押しするため に、持てる手段を適切に利用する用意がある」と語った。

米国みずほ証券のチーフエコノミスト、スティーブン・リチュー ト氏は、「雇用市場は改善のメドがまったく立たない」と指摘。「プレ ッシャーから利回りが下がる可能性がある」とし、10年債利回りは

1.5%まで下がる可能性もあると述べた。

米労働省がこの日発表した先週の新規失業保険申請件数は、市場 予想に反して41万4000件と、前週の41万2000件から増加した。

ドイツ10年債利回りは過去最低

ドイツ10年債利回りはこの日、1.823%まで下げ過去最低を記 録した。トリシェECB総裁はフランクフルトの記者会見で、欧州経 済は「非常に高い不確実性とより大きな下振れリスク」に直面してい ると述べた。ECBは政策金利を1.5%に据え置いた。ブルームバー グ・ニュースが実施したエコノミスト調査でも、57人全員が据え置 きを予想していた。

ジェフリーズの米ドルデリバティブ(金融派生商品)取引責任者、 クリスチャン・クーパー氏(ニューヨーク在勤)は「小休止や散発的 な動きはあるだろうが、欧州の長期的な構造上の不確実性や米国の財 政・金融政策から判断する限り、利回りが再び上昇するのは難しいだ ろう」とした上で、「10年債は非常に底堅い。押し目では買いを入 れる投資家が大勢出てくるだろう」と述べた。

◎NY金:反発、逃避需要強まる-失業保険申請件数の予想外の増加で

ニューヨーク金先物相場は3営業日ぶりに上昇。米新規失業保険 申請件数が市場予想に反して増加したことを手掛かりに、逃避資産と しての金買いが膨らんだ。

米労働省が発表した先週の新規失業保険申請件数(季節調整済み) は、前週から2000件増加して41万4000件。ブルームバーグ・ ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値は40万5000件だ った。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、今月開 かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で景気浮揚に向け利用可能な 手段について議論し、必要に応じて実行する用意があると述べた。

MFグローバルのシニア市場ストラテジスト、アダム・クロフェ ンシュタイン氏は電話インタビューで、「状況はあまり明るいように は見えず、市場は引き続き経済情勢に対して弱気だ」と指摘。「雇用 が創出されることを示す何らかの答えが必要だ」と述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の金先物 12月限は前日比39.90ドル(2.2%)高の1オンス=1857.50 ドル。年初来では31%の値上がり。

◎NY原油:反落、90ドル台維持できず-景気見通しを懸念

ニューヨーク原油先物相場は下落。世界の経済回復が足踏みして いるとの懸念を背景に、バレル当たり90ドル台を維持できなかった ことから売りが出た。

米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は景気見通し に対するリスクが大きくなってきたと述べた。S&P500種株価指 数は前日に2週間ぶりの大幅高となったものの、この日は値下がりし た。この日の原油相場は方向感のない展開となった。熱帯性暴風雨の 影響で供給に混乱が生じるとの懸念から一時は1バレル=90.23ド ルまで上昇したが、88.59ドルまで下落する場面もあった。

アダム・メッシュ・トレーディング・グループ(ニューヨーク) のチーフストラテジスト、トッド・ホーウィッツ氏は「原油は極め て変動の激しい商品だ」と指摘。「終値ベースで90ドルを下回る限 り、私はショート(売り持ち)にするつもりだ。原油はS&P500種 に追随しているかのようだ」と述べた。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物10月限は前 日比29セント(0.32%)安の1バレル=89.05ドルで終了。年 初からは2.6%の下落。

◎欧州株:続伸、石油株が高い-前日の3週ぶり大幅高の流れ継続

8日の欧州株式市場では、指標のストックス欧州600指数が続伸。 石油株と小売り銘柄に買いが入った。前日は3週間ぶり大幅高となっ ていた。

フランスの石油会社トタルや英石油・ガス探査会社タローオイル が高い。ベルギーの銀行、KBCグループは5.9%上昇。同行のポー ランド部門の買収をスペインのサンタンデール銀行が模索していると の報道がきっかけ。英小売りのホーム・リテール・グループは2%高。 同社はアーゴス部門の売上高減少が鈍化したと発表した。

ストックス欧州600指数は前日比0.7%高の230.47で終了。 日中は上げ下げを繰り返し、方向感が定まらなかった。欧州債務危機 を受け、今年2月に付けた年初来高値から21%下げており、指数構 成銘柄の株価収益率(PER、予想収益ベース)は9.6倍と、2009 年3月以来の低水準に近い。ブルームバーグの集計データが示した。

この日の西欧市場では、ギリシャを除く17カ国で主要株価指数 が上昇。同日開催された欧州中央銀行(ECB)の定例政策委員会で は、政策金利が市場予想通りに1.5%で据え置かれた。ただトリシェ 総裁は記者会見で、ユーロ圏経済は「特段に高い不確実性と、従来よ り強い下方向リスク」に直面していると述べ、同中銀は今年と来年の 域内成長率見通しを下方修正した。

トタルは2.5%高の33.66ユーロで終了。タローオイルは

4.8%上げて1227ペンス。KBCグループは17.53ユーロで取引 を終えた。ホーム・リテールは117.8ペンス。

◎欧州債:独10年債利回り、過去最低を更新-イタリア国債は下落

8日の欧州債市場ではドイツ10年債利回りが過去最低を記録し た。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が景気への「下方向リス ク」が高まったと述べ、インフレリスクは和らいだとの認識を示した ことが背景にある。

イタリア国債は下落。同国上院は前日、540億ユーロ規模に修 正した財政緊縮策を承認した。一方、フランス国債は堅調だった。

ECBは政策金利を1.5%に据え置いた。トリシェ総裁は政策 発表後の記者会見で、ユーロ圏経済は「特段に高い不確実性」に直面 していると述べた。

ロイズ・バンク・コーポレート・マーケッツの債券ストラテジス ト、エリック・ワンド氏は「トリシェ総裁はリスクが『高まった』と の発言、ECBスタッフは2012年見通しを引き下げた」と指摘。 「債券市場に資金が流入した。こうした発言は最高格付けを持つ中核 国の中・長期債への支援要因となる」と続けた。

ロンドン時間午後4時13分現在、独10年債利回りは前日比2 ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の1.89%。トリ シェ総裁の発言を受けて、過去最低となる1.823%まで下げる場面 もあった。同国債(表面利率2.25%、2021年9月償還)価格は

0.185上げ103.275。独2年債利回りは3bp下げ0.46%。6日 には0.417%まで低下し、過去最低を付けた。

トリシェ総裁によれば、ECBは今年の成長率を1.4-1.8%と 予想し、従来の1.5-2.3%予想から引き下げた。来年については

0.4-2.2%を見込んでいる。従来は0.6-2.8%だった。インフレ 見通しは据え置かれた。

仏10年債利回りは前日比8bp低下の2.59%、ベルギー10年 債利回りは11bp下げ3.93%となった。

イタリア国債は3日ぶりに下落。2年債利回りは3bp上昇し

3.90%、10年債利回りは2bp上げ5.28%。トリシェ総裁は修正 後のイタリア財政緊縮策について「極めて重要だ」と語った。

◎英国債:10年債下落、2年債は上昇-中銀は金融スタンスを維持

8日の英国債相場はまちまち。10年債利回りは前日比2ベーシス ポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.36%。先月18日には 過去最低となる2.237%まで低下した。一方、2年債利回りは2bp 下げ0.56%となった。

イングランド銀行(英中央銀行)のキング総裁ら9人で構成する 金融政策委員会(MPC)はこの日、資産買い取りプログラムの規模 を2000億ポンドで据え置くとともに、政策金利を過去最低の

0.5%に維持することを決めた。エコノミストを対象にした調査でも 資産買い取り枠の維持と金利据え置きが見込まれていた。

ブルームバーグと欧州証券アナリスト協会連合会(EFFAS) がまとめた指数によると、英国債の月初来のリターン(投資収益率) はプラス2%。これに対しドイツ国債は1.8%、米国債は0.8%と なっている。

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