影響力増すダリオ氏のヘッジファンド、リターン25%-分散投資で

米ブリッジウォーター・アソシエ ーツの創業者、レイ・ダリオ氏は、ゴルフキャディーをしていた12歳 の時に取引を始めた。それ以降、目の当たりにしてきた投資ブームをす らすらと言うことができる。1970年代のニフティ・フィフティ銘柄 (機関投資家に人気のある50銘柄)への投資ブームや80年の金バブ ル、そして資産配分を株式60%、債券40%とする投資についてもだ。

「投資ブームは集団思考が働く時に起こる」とダリオ氏(62)は言 う。これまでコンセンサスに反する投資手法で運用資産総額1220億ド ル(約9兆4400億円)という世界最大のマクロヘッジファンド運用会 社を築き上げた。独特の職場文化と、多くの市場にリスクを分散させる 調査主導の投資プロセスを創出した。ブルームバーグ・マーケッツ誌が 世界の金融業界で最も影響力のある50人に関する10月の特別号で報 じている。

ダリオ氏は「利益を上げるのはゼロサムゲームだ。従って、成功す るにはあえて大多数の人々とは違った見方をしなければならない。そし て、その見方が正しくなければならない」と語る。ゼロサムゲームとは 各プレーヤーに配分される利得の和が常にゼロとなるゲームを言う。

2008年に始まった過去数十年で最悪の金融危機のさなかとその後 もダリオ氏のこの考え方は正しく、業界のリーダーとしての評判は確固 たるものとなっていった。ブルームバーグ・マーケッツ誌が2月に発表 した大口ファンドの年間ランキングの上位100位以内に旗艦ファンド 「ピュア・アルファII」を含むブリッジウォーターの3本のヘッジフ ァンドが入っている。3位となった同ファンドの10年10月までの10 カ月間のリターン(投資収益率)はプラス38%だった。

ダリオ氏の影響力は業界を超えて広がっている。同氏や同僚らは中 央銀行の当局者や年金基金、政府系ファンド(SWF)を対象に定期的 にブリッジウォーターの見通しについて説明会を開いている。同社のニ ュースレター「ブリッジウォーター・デイリー・オブザベーションズ」 はマクロ経済の調査担当者にとって先進的な分析を行うための必読書に なっている。

経済力の移行

07年8月、信用市場が逼迫(ひっぱく)する中、ブリッジウォー ターのニュースレターは「ヘッジファンド全般は、伝統的な市場のパフ ォーマンスの不振からの防御手段となるような分散投資をあまり提供で きない可能性が高い」と警鐘を鳴らした。

その翌年、業界の運用成績の平均はマイナス19%に落ち込んだ。

ヘッジファンドに投資するストラテジック・インベストメント・グ ループ(バージニア州)の創業者で社長のヒルダ・オチョアブリレンブ ルク氏は「それまで考えていたのとは異なる洞察を見いだすことができ る」と語る。

牧歌的な雰囲気が漂うコネティカット州ウェストポートにある本社 で、ブリッジウォーターは多大な資源を調査に投入している。多くの中 規模投資銀行を上回る1200人の従業員は、マクロ経済トレンドに基づ く投資の情報源となるデータの収集や分析を手掛けている。6月には西 欧州や米国、アフリカ、中国など世界の国内総生産(GDP)の比率を 16世紀にさかのぼって調査し、経済力の長期的な移行について分析し た。

リターン44.8%

テキサス州教職員退職年金基金のブリット・ハリス最高投資責任者 (CIO)は「レイほど市場に基づいた真実を精力的に追求する人物は いない」と話す。

米リーマン・ブラザーズ・ホールディングス破綻の1年以上前の 07年7月、ブリッジウォーターのニュースレターは、金融システムの 中で「脆弱(ぜいじゃく)さがまん延している」と指摘。クレジット・ デリバティブの想定元本が06年後半だけで50%増加し29兆ドルに達 したと報告している。このため、ピュア・アルファIIは米長期国債や 金のポジションを積み上げた。投資家らによると、08年のリターンは プラス9.4%だった。

10年初めまでは、米国と欧州の経済成長が停滞するとの見通しに 反し、ピュア・アルファIIは通常より広範囲にわたって分散投資し た。先進国の通貨や株式のほか新興国の債券や通貨、商品に投資し利益 を上げた。投資家らによると同ファンドの昨年のリターンはプラス 44.8%。今年は市場が混乱する中、1-8月にプラス25.3%の運用成績 を挙げている。1991年12月1日の運用開始以降のリターンは年15%と なっている。

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