【クレジット市場】外銀の日銀口座残高6年ぶり高水準、付利で運用

外国銀行が日本銀行の当座預金口座 に預け入れている資金が約6年ぶりの高水準に膨らんでいる。世界的 な景気減速や欧州債務危機への警戒感から、海外投資家は相対的に安 全とされる円資産投資を積極化しており、日銀当座預金は安全・確実 に年0.1%の利息が稼げる運用先としての需要が高まっている。

外国銀行在日支店を含む指定金融機関は、受け入れている預金等 の一定比率を準備預金として日銀に預け入れるよう義務付けられてい る。日銀が公表した7月の業態別当座預金残高によると、外銀が所要 準備額以上に積み上げた超過準備の平均残高は前月比1兆9500億円 増の6兆1380億円と、2005年10月以来の高水準だった。これに対し、 邦銀(都市銀行、地方銀行、第二地銀、信託銀行)は同2兆1920億円 減の4兆6390億円で、5カ月ぶりに外銀が邦銀を上回った。

量的緩和下の当座預金は無利子だったが、日銀は補完当座預金制 度の導入に伴い、08年11月から超過準備に対して利息を支払ってい る。当時の金融緩和策として資金供給を積極的に増やすのに伴い、市 場金利が過度に低下するのを防ぐのが狙いだった。

東短リサーチの寺田寿明研究員は、外銀の日銀当座預金残高の増 加について「外銀の東京支店が円を調達して日銀口座に置くことは考 えづらく、ドルを円に交換した円転資金か、円買いを進めた海外投資 家の資金ではないか」と指摘した上で、現在の短期金融市場では0.1% を上回る利回りを確保するのは難しいとの見方を示す。

円は対主要16通貨で上昇

為替市場で過去3カ月間に、円は主要16通貨すべてに対して上昇 している。政府・日銀が8月に過去7年間で最大規模となる4兆5129 億円の為替介入を実施したのにもかかわらず、円相場は同月19日、一 時1ドル=75円95銭まで急騰し、3月17日に付けた戦後最高値(76 円25銭)を更新。足元では77円台前半で推移している。

日銀は6、7日に開催した金融政策決定会合で現行の金融政策の 維持を決定した。しかし、スイスの中央銀行が6日、フラン高を阻止 するため、対ユーロ相場に上限を設定することを発表。米連邦準備制 度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、今月の公開市場委員会(F OMC)を20、21日の2日間に延長して、景気刺激に向けた政策対応 について十分な議論を行う考えを表明しており、FOMCの結果や為 替相場の動向次第では、日銀への追加緩和圧力が強まる可能性がある。

市場が予想する追加緩和の選択肢には、資産買い入れ等基金を含 めて買い入れる国債の年限長期化のほか、事実上の下限金利である当 座預金に対する付利金利の引き下げも含まれており、日銀口座に滞留 する外銀資金の動向にも影響を及ぼしそうだ。

UBS証券の伊藤篤シニア債券ストラテジストは「年限長期化の 場合、10年以上の長いゾーンが買われて利回り曲線は平たん化する」 とみる一方、「付利引き下げの場合、2年以下の短いゾーンの金利が低 下し、ゼロに近づき、利回り曲線は傾斜化する」と予想する。

また、みずほ証券の三浦哲也チーフマーケットアナリストは「付 利の引き下げは追加緩和の選択肢として入ると思う。日米の金利差を 拡大させることができれば、為替の円高対策の一助になる」とみる。

ドル建て資産の魅力減退

日本と米国の2年債利回り格差は今月1日、3ベーシスポイント (bp、1bp=0.01%)と1992年以来の水準まで縮小し、ドル建て資 産の魅力は減退している。日銀の白川方明総裁は8月4日の会見で、 金利差と為替相場の関係について「市場のアナリストのコメントをみ てみると、2年物の日米の金利差に着目した分析が多いように思う」 と指摘した。

長期金利の指標とされる新発10年債利回りは6日、節目の1%を 割り込み、一時0.985%まで低下し、8日午前は1.02%程度。ブルー ムバーグ調査によると、主要32カ国の債券市場で、スイスに次いで2 番目の低水準となっている。

欧州債務懸念

米景気減速や欧州債務危機への懸念を背景に、世界的に国債の保 証コストは上昇傾向にある。クレジット・デフォルト・スワップ(C DS)市場では、ドイツ国債と日本国債の5年物CDSの格差が今年 最高水準をつけた3月16日の72.5bpから今月6日には29bpに縮小し た。さらにフランス国債は、日本国債を72bp上回り、05年以来の水 準に拡大している。

SMBC日興証券の野地慎シニア債券為替ストラテジストは、米 国債格下げに加え、欧州債務問題を背景にしたドイツ、フランスのC DS上昇などを理由に、国内投資家による対外証券投資のインセンテ ィブが低下していると指摘。「海外の経済成長見通しが弱含んでいるの が、対外証券投資の伸び鈍化の最大要因だと思う。国内投資家からみ れば、まだ日本の方が良いということで、円高が進む」と述べた。

ブルームバーグEFFAS指数によると、過去3カ月間の日本国 債のリターンは1%と、先進26カ国債券市場の中で、下から2番目の 低水準となっている。もっともドルベースでは、日本国債のリターン は4.2%。円高の効果により上から5番目の高水準となった。

FRBは20、21日にFOMCを開く。今月2日に発表された8月 の米雇用統計では、非農業部門就業者数が前月比横ばいと市場予想の 6万8000人増を大きく下回り、昨年10月から始まった増加トレンド に終止符が打たれるなど、米景気減速を示す指標が相次いでいる。

JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは「9月 のFOMCでは追加緩和を行うとの見方が強まっている。ツイストオ ペ(長めの債券を購入し、短期債を売却し、バランスシートを拡大さ せず、保有債券の期間を長期化させる)を実施するとの見方が大勢だ」 と語る。