豪首相の炭素税構想、排出権取引のカンフル剤か-「愚か」との声も

オーストラリアのギラード首相は、 地球温暖化対策として二酸化炭素(CO2)を排出する企業に負担を 求める「炭素価格制度」、いわゆる炭素税を導入する意向だ。欧米が 国連主導の排出権取引で足踏みする中、排出権の取引活発化につなが る構想を打ち出した。

ギラード政権は国内の工場や発電所などに対しCO2の排出を減 らすか海外の排出権取引市場への参加を義務付ける方針で、ブルーム バーグ・ニュー・エネルギー・ファイナンスによれば、豪企業は 2015年から年平均で6600万トンの排出権を購入する必要が出る見 込み。これが排出権の価格を29%押し上げる可能性がある。

ギラード首相は豪企業に排出権取引を求めることで、労働党主導 の連立政権に参加している緑の党からの支持を得たい考えだ。欧州連 合(EU)は一部の排出権利用を制限する方針を示し、米国では昨年、 連邦レベルでキャップ・アンド・トレード方式での排出権取引制度の 導入する法案が廃案となった。

米銀バンク・オブ・アメリカのCO2排出権市場担当グローバル 責任者、アビド・カルマリ氏(ロンドン在勤)は2日の電話インタビ ューで、「豪州の構想が法制化されれば、国連の排出権市場にとって 待望のカンフル剤となるだろう」と指摘した。

排出権はここ2年間で大きく値下がりしている。ロンドンの先物 取引所ICEフューチャーズ・ヨーロッパで取引されている国連が認 めたクレジットである認証排出削減量(CER)12月限は8月5日 に2009年2月以来の安値となる1トン=7.40ユーロまで下落。C ERは、1997年の京都議定書で決まったクリーン開発メカニズム (CDM)の下での温室効果ガス削減量に基づき発行される。

賛否

世界最大の燃料炭輸出会社、スイスのエクストラータのミック・ デービス最高経営責任者(CEO)は8月2日のアナリストとの電話 会議で、ギラード首相の構想を「愚かだ」と断じた。同社は豪州とそ の周辺地域で1万8986人の従業員・契約業者を抱えているが、構想 が実現すればインドネシアなどの規制の緩い国に売り上げを奪われる 恐れがあるという。

豪州の計画は欧州で05年に始まったキャップ・アンド・トレー ド方式のプログラムを手本としている。欧州委員会のバローゾ委員長 は今月6日のシドニーでの講演で、豪州の取り組みを「環境面でも経 済的にも重要なステップだ」と評価した。

たがそれでも英銀バークレイズのアナリスト、トレバー・シコル スキ氏(ロンドン在勤)は8月24日のリポートで、EUによる国連 認証のクレジットの利用が大きく減るとの見通しを示した。規制当局 は1月にクレジットの利用を抑制する方針を決めている。クレジット の取得があまりにも容易だということに加え、中国やインドといった 急成長を続ける国々の負担を高める必要があるとの主張だ。

CDMでは、先進国が途上国向けのクリーンエネルギー技術など を支援することで、途上国での温室効果ガスの排出削減量を先進国の 削減量として組み入れることが認められている。

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