世界経済が支払う民主主義の代価-政治機能不全で不確実性の時代に

【記者:Rich Miller and Simon Kennedy】

9月6日(ブルームバーグ):世界経済は今、「民主主義」の代価を 支払っているかのようだ。

米欧の景気回復が失速する中で、各国の政策担当者らは、有権者 が選んだ政府が内包するイデオロギー的性格や政治工作が生みだす行 き詰まりに直面している。米国では民主、共和両党が財政赤字抑制や 雇用促進策をめぐって対立し、単一通貨ユーロの将来を守る最善の手 段を探ろうとしているユーロ圏諸国の当局者らも意見の相違を乗り越 えられないでいる。

JPモルガン・チェースのエコノミスト、ブルース・カスマン氏 はこうした状況を「対応能力の危機」と呼ぶ。投資家らは各国政府が リセッション(景気後退)の再発を防止できるほど十分迅速に行動で きるかどうか、その能力に疑念を抱いている。JPモルガンやシティ グループ、UBS、ソシエテ・ジェネラルは最近、世界経済の見通し を下方修正する理由として、いずれも「政治の機能不全」に言及した。

ソシエテのエコノミスト、ミカラ・マーカッセン氏は「市場の視 点と政治の視点との間にギャップが存在する。市場はそれを好まない。 過去20年で政治的な不確実性が最も高まった時期の一つに数えられ るのではないか」と話す。同氏は先月、2012年の世界経済の予想成長 率を4.6%から3.9%に引き下げた。

試金石

政治の指導力を占う試金石となる予定が今週相次ぐ。オバマ大統 領は8日に上下両院合同会議で、新たな雇用促進策に関する演説を行 い、9、10両日には先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が 仏マルセイユで予定されている。金融危機による経済の動揺がまだ収 まっておらず、各国の政策担当者らが一丸となって国際銀行システム を支えて景気下降に歯止めをかけるために努力した08年後半から09 年にかけての状況と比べ、現在の事情が大きく異なることを「政治の 優柔不断」は物語っている。

ヤルデニ・リサーチのエドワード・ヤルデニ社長は、投資家が当 局者に大きな信頼を寄せていないことを金塊相場の急騰が示している と指摘。金相場は年初来で30%余り既に高騰しているが、少なくとも 1オンス=2500ドルまで続伸すると予想する。

ヤルデニ氏は「投資家が政府に対する信頼を失い、政府が制御不 能だと懸念するような場合、金塊が最後の投資手段となる。各国政府 が一丸となって協力し、正しい方向に進んでいるとはいえず、したが って金相場はさらに上昇する」との見方を示している。

応急処置

シティグループの国際政治担当シニアアナリスト、ティナ・フォ ーダム氏(ロンドン在勤)は、主要国は今後2年以内に大統領選や総 選挙を控えており、政治家が予算削減など痛みを伴う政策を先送りす る恐れがあるとの懸念を示す。来春のフランス大統領選に続き、米国 でも11月に大統領選が行われる。ドイツと日本、イタリアも13年に は総選挙が実施される見通しだ。

フォーダ氏は「成熟した民主主義国は、より深刻な経済問題に対 処するために応急処置的な政策を用いざるを得ない。主要7カ国(G 7)の政治家は、リスクを抑制するために予防的措置に取り組む意思 に極めて乏しく、今後も長期間にわたってそのような状態が続くだろ う」と予想している。