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【日本株週間展望】米債務問題大詰めで不安定、解決後は戻り歩調も

8月1週(1-5日)の日本株相 場は、引き続き米国の債務上限引き上げ問題が重しとなりそうだ。2日 が期限とされる米議会の合意はいまだ得られず、予断を許さない。週前 半は米国動向とそれに伴う為替相場などに左右される不安定な展開が見 込まれ、結論が出れば、後半は戻り歩調となる可能性がある。

7月第4週(25-29日)日経平均株価は、前週末比3%安の9833 円と反落。米債務問題に対する楽観ムードが後退し、投資家がリスク回 避に動き、世界の株式市場は軒並み下げた。債務上限の引き上げができ なければ、政府の借り入れ期限は8月2日に失効するため、デフォルト (債務不履行)不安が高まっている。

投資家のリスク許容度を表すとされるシカゴ・オプション取引所 (CBOE)のボラティリティ指数(VIX)は28日現在23.74と、 3月18日以来の高水準。同指数は、数値が高いほど先行きに不安を持 つ投資家心理を表す。

大和証券投資信託委託の長野吉納シニア・ストラテジストは、「議 会が合意できず、連邦機関の窓口閉鎖やデフォルトとなれば株価はさら に下がるが、上下院が妥協点を見出すなどの努力をし、そこまで極端な 事態にはならないだろう」と予想。最悪シナリオが回避されれば、相場 は「第4週に下げた分を取り戻すのではないか」とみている。

法定上限が14兆3000億ドルとなっている米連邦債務の引き上げ問 題は、米財務省が設定した議会と政府の合意期限である8月2日が迫っ ても、出口が見えていない。米議会が上限引き上げで合意できなかった 場合に備え、財務省は国債保有者への利払いを優先する方針だ。財務省 によると、8月4日に約900億ドル(約7兆円)の国債が償還期限を迎 え、15日には300億ドル超の利払いがある。

米国格下げや景気のリスク

マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストは、「90%の確率 で直前での上限引き上げ合意が成されるとみているが、間に合わないシ ナリオも念頭に置かざるを得ず、期限を前に市場が混乱するリスクがあ る」と言う。その場合、一段のドル安が円高、さらに日本株安につなが る可能性を指摘した。

大和投信の長野氏が懸念するのは、米議会と政府が合意しても、 「それは何がしかの緊縮財政を意味する」点だ。米のGDP(国内総生 産)規模で毎年1-2%の緊縮財政になるとみられ、「景気への影響が 意識される。株価は短期的に戻っても、上値追いは難しい」と読む。

格下げ懸念も続く。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・ サービスは13日、米国債の格付け「Aaa」を引き下げ方向で見直す と発表している。財政支出の抑制と格下げが同国景気を押し下げれば、 世界経済への影響は不可避だ。

相次ぐ米統計を注視

大手金融機関が加盟する米金融サービスフォーラムがまとめた28 日付の共同書簡で、ゴールドマン・サックス・グループのロイド・ブラ ンクファイン会長兼最高経営責任者(CEO)らは、米国がデフォルト や格下げとなれば、「すべての借り入れ金利が上昇し、ドルの価値が損 なわれ、株式や債券市場が荒れる」との見解を示唆。すでに厳しい局面 にある米経済は、さらに劇的に悪化すると懸念している。

8月1週は、米国で経済指標の発表が相次ぐため、投資家の目は足 元の景気動向に向きやすい。週末5日の7月の雇用統計発表を前に、3 日にADP雇用統計が発表の予定。1日には7月のISM製造業景況指 数、3日にISM非製造業景況指数もある。ブルームバーグ調査では、 ISM製造業景況指数は55.0と前回の55.3から低下が見込まれ、非製 造業指数は54.0へと0.7ポイント上昇が予想されている。

下げ小さい日本株、企業業績支え

世界の主要な株式相場が米国問題で下げる中、日本株の下げは相対 的に小さい。ブルームバーグ・データによれば、8月3週末値と28 日 終値を比較した騰落率は、日経平均がマイナス2.3%と、米S&P500 種株価指数の3.3%安や仏CAC40指数の3.4%安、MSCIワールド 指数の2.7%安よりも小幅だ。理由として、SMBC日興証券・国際市 場分析部の圷正嗣氏は「企業業績が震災後の落ち込みから下期に向けて 大幅に回復するとの期待感が強い」点を挙げる。

みずほ証券の決算集計によると、東証1部上場企業(除く金融)の 2012年3月期経常利益予想は28日現在、前期比2.4%増と6月末時点 の事前予想0.3%減を上回る。集計社数は1193社中230社。震災を受 け、業績や経済に与える影響が懸念されてきたが、「復旧・復興が軌道 に乗れば、回復局面は相当なモメンタムになる」とクレディ・スイス証 券の市川眞一チーフ・マーケット・ストラテジスト。市川氏は、サプラ イチェーンの復旧により、秋以降は生産拡大が見込まれるとした上で、 復旧と復興のカギは電力の安定供給だとした。

好業績に水差す円高

そうした好調な企業業績に対し、円高が水を差しつつある点には注 意が必要だ。ドル・円相場は29日に1ドル=77円台半ばと、戦後最高 値を付けた東日本大震災直後の3月17日以来、約4カ月ぶりの円高水 準となった。日本銀行の企業短期観測調査(短観)によると、大企業・ 製造業の今年度想定為替レートは82円59銭。足元はこれより5円程度 円高で、輸出企業の採算悪化につながる。SMBC日興証の圷氏も、 「現在の円高水準が長期にわたって定着した場合、下期業績回復シナリ オに陰りが生じる」とみている。

国内では主要企業の4-6月期決算発表が続く。1日はホンダや帝 人、東京エレクトロン、2日はトヨタ自動車や旭化成、三井物産、住友 商事、3日は国際石油開発帝石、4日はリコーや東レ、三井化学、5日 は三菱重工業やオリンパス、JXホールディングスが公表予定だ。

【市場関係者の見方】 ●松井証券の土信田雅之シニアマーケットアナリスト

日経平均9700-1万円のレンジで、下振れ懸念を抱えながらのもみ 合いを予想。4-6月決算では震災後の企業努力の成果が確認され、株 価を下支えしている。ただ、米債務上限問題が期限までに決着しないリ スクがあり、為替の円高を通じて利益確定売りは出やすい。やや弱含み が予想されている米ISMは、供給問題の影響一巡でポジティブサプラ イズの可能性もある。

●オフィスセントポーリアの馬渕治好代表

米政府債務上限引き上げ問題をめぐる与野党協議が非常に不透明で、 日本株相場も神経質な展開となろう。上限が小幅に複数回引き上げられ ながら交渉を続けるというのが現実的なシナリオだと思うが、米国債の 格付けが1、2ノッチ下がり、短期的に長期金利が上昇し、日本株も売 られる可能性がある。日本株にとって最もネガティブなシナリオは、共 和党の一部の主張が通り、上限がまったく引き上げられず、15日の利 払いもできなくなって、ドルが暴落することだ

●立花証券の平野憲一執行役員は

欧米債務懸念がくすぶるなか、日経平均で下値めどとして意識されて いた25日と200日の両移動平均線を下回り、短期調整局面が続く。下 値めどは75日移動平均線の9708円。もっとも、日本固有の要因で下げ ることはない。4-6月決算発表が進むなか、東証1部の3月期決算企 業の今期経常利益計画は前期比で増益に転じた。下期からの回復が顕著 で、来期増益率は今期予想比30%程度に加速するとみられ、ファンダ メンタルズ面の変化率を考慮すれば日本株の優位は揺るがないからだ。

--取材協力:河野敏、長谷川敏郎、鷺池秀樹 Editors: Shintaro Inkyo、Makiko Asai

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