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不遇な企業を買収した御曹司、インド初の世界的カルトブランド目指す

この20年間というもの、韓国のス ポーツ型多目的車(SUV)メーカー3位、双竜自動車にとっては、 全てが裏目、裏目に出てきた。会社のオーナーが4回も代わり、破産 の憂き目に会い、2009年には韓国の現代史に残る激烈なストライキを 経験した。

労働者はそのストで3カ月近くにわたり工場を占拠。鉄パイプや 火炎瓶を使って労働者は催涙ガスや放水銃を持った警官隊に立ち向か った。

こんな惨状にあえて踏み込んだのがインド一の富豪一族の御曹司、 アナンド・マヒンドラ氏だ。ブルームバーグ・マーケッツ誌9月号が 伝えた。マヒンドラ氏が副会長兼マネジングディレクターを務めるマ ヒンドラ・アンド・マヒンドラ(M&M)は10年11月、双竜の株式 70%を3億7800万ドル(現在のレートで約295億円)で買収した。同 社は銀行、金融、情報技術、不動産、リゾートなどの分野に110の子 会社を抱える複合企業マヒンドラ・グループの中核企業。

マヒンドラ氏にとって双竜買収は、自らの企業を世界的に有名な SUVメーカーに脱皮させる取り組みの一環。不運続きの双竜だが、 M&Mが人材と製品に投資することで同社を再建できるとマヒンドラ 氏は確信している。同氏はこう言い切る。「われわれと双竜との関係は 転換点にあり、マヒンドラ・グループの将来の成功に大きく寄与する ことになると思う」。

国境を越えて

M&Mによると、過去6年にトラクターメーカー3社に出資した 同社は10年3月通期に売上高で米ディーアを抜いて世界最大のトラク ターメーカーに浮上した。

マヒンドラ氏は消費者の魂をつかんで熱狂的ファンにしてしまう 「インド初の世界的カルトブランドになりたい」と話す。

同社による一連の買収は、インドの経済力の増大を鮮明にするも のだ。インド企業は世界中で企業買収を追求しており、ブルームバー グの集計データによれば、06年初め以降今年6月末までのインド企業 による国際的買収は1056件、総額940億ドルに達した。大型M&Aと してはタタ・スチールが07年に128億ドルを投じた英コーラス・グル ープの買収などがある。これに対し、1990-2000年までのインド企業 による国境を越えたM&Aは合計で5億9040万ドルにすぎなかった。

野望

「インド企業は国際進出の機会を捉え、リストラを進める海外企 業から資産を取得することができた」と指摘するのは、野村ホールデ ィングスのニキル・ナス氏(香港在勤)だ。日本以外のアジアのM& A責任者を務めるナス氏は「M&Mを含めてインド企業数社が今後10 年で真の国際企業に躍進するだろう。双竜の買収はそうした野望の表 れだ」という。

インドで最も貪欲な企業がムンバイに本拠を置くM&Mだ。「マヒ ンドラ」のブランドを中心にトラクターを35カ国で販売し、SUV生 産でもインド最大手の同社は06年初めから今年6月末までに28件、 総額12億ドルの買収を実施。うち11件はインド国外での取引で、合 計は7億5220万ドル。同社のこれまで最大の取引が双竜買収だ。

M&Mは投資家の間で人気が高い。同社はボンベイ証券取引所の センセックス30種指数構成銘柄の時価総額ランキングでは15位で、 02年初め以降に株価は33倍になった。ボンベイ証取のデータによれば、 マヒンドラ氏と夫人で高級ライフスタイル月刊誌の編集長兼発行人で あるアヌラダさんは、M&M株を0.07%保有。ブルームバーグ・デー タによれば、アヌラダさんはコタック・マヒンドラ銀行の株式1.97% も所有する。夫妻が保有する両社の株式は7月27日時点で約1億6000 万ドル相当。

M&Mは1956年に株式公開した。同社が中核を成すマヒンドラ・ グループの傘下企業の時価総額合計は6月末時点で約176億ドル。同 グループは100カ国以上に計11万9900人の従業員を抱える。

マヒンドラ氏(56)は、インドの富豪出身の第2、第3世代の経 営者としては外向き志向の新しいタイプだと言うのは、ロンドン・ビ ジネス・スクールのニルマルヤ・クマー教授。「グローバル展開や近代 化、専門化を進めながら最先端の経営を目指すインドのファミリービ ジネスの台頭を象徴する人物だ」と評した。

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